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我的愛人  作者:
22/32

何日君再来 第4話

 仕事があるといって父は翌日早々に自宅のある奉天へと帰っていった。うるさいお目付け役がいなくなって少しほっとしたけれど、まだまだ続く長い夏休みを私は持て余していた。

 義理の姉妹と珍しく勉強をしていた、うだるような暑い午後。まとわりつく倦怠を断ち切るかのように私宛に一本の電話があった。

「7時に迎えに行くから」

 あまりにも強引な誘いの主はあの人だった。


 車窓を流れてゆくきらびやかな街のネオンを、私は迎えの車の中でコチコチになって見送っていた。

「家の人には何て言ってきたの?」

 腕を組んで隣に座る彼女は相変わらず余裕の優しい眼差しを私に向ける。

「東興楼に出かけてきますと……お兄ちゃんの名前を言ったら是非ご一緒しなさいとお義母様が……」

 清朝王女直々のお誘いにさすがに義母である第二夫人も行くなとは言えなかったのだろう。若い娘が出かけるには時間が時間だったけれどすんなりと外出を許可してくれた。


「そう、それは良かった」

 初対面の時とは違って今日は少しくだけたスーツを着ていた。女の私から見てもその男装ぶりには相変わらず惚れ惚れしてしまう。血の成せるわざなのか、優しい笑顔の中にも鋭利な刃物のような冷徹な気品が備わっていた。

「ヨコチャンはもっと僕に甘えていいんだよ。何と言っても僕の妹なんだから」

 あまりにも私が緊張しすぎているのが可笑しいのか、呆れたように笑っていた。運転手の操る車が静かに東興楼に入ってゆく。エスコートされて車を降りると、私はおとぎの国へと再度足を踏み入れた。


 店内は父と訪れた時と同じように客で溢れ、中でも特に目を引いたのがホール中央の円卓。15・6人ほどの若くて綺麗な女の人の集団が陣取って高らかな嬌声を上げていた。

「皆気のおけない奴ばかりだから」

 そう言うと彼女はその円卓に座り、その右隣に私を座らせた。するとその瞬間さらに甲高い声が上がった。私はやっと理解した。この人達は皆あの人の取り巻き達なのだ。主役の登場に歓喜の声を上げている。私は何だかとても場違いな感じがしたけれど、かといって逃げだすわけにはいかず仕方なく席に着くしかなかった。


「ああら何だか一匹薄汚い泥棒猫がいるわ」

 憎しみのこもる凄んだ声がいきなり私の耳と自尊心を突き刺した。私の事を言っているのだと瞬時に悟って、恐る恐るその声の主の方を見た。主役を挟んで左隣り。未だ嘗てお目にかかったことのないような美少女が物凄い形相で私の事を睨みつけていた。

「小姐、よしなさいよ」

 隣に座っている少女が必死に諫めようとしている。

「いやよ! 璧輝様に迎えに来てもらっていたのは私だったのに!このいやらしい泥棒猫!」

 冷たい飛沫が顔にかかったと同時に店内の空気が一瞬にして凍りついた。


いろいろな人物の書き分けが難しいです(泣)

お読みくださり、ありがとうございました。

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