覚悟の章
駆け出しの筆跡です。
都内の集合住宅に彼は住んでいた。
竹内正志は大学生だった。
暇を持て余した日々にあきれはて、最近は政治に興味と関心を持っていた。
右往左往するコメンテーターの意見。
利益と煽動の言葉が付きまとうマスコミ。
彼が「情報」という言葉に価値を感じなくなってきたのは最近の事だった。
歴史を辿ればマホメットやジャンヌ・ダルク等々、皆選ばれた人間は神託を受けて生を送っている。
日常に飽き飽きしていた竹内は、何か新しいもの、新しい世界を探し求めていた。
そうして彼は人知れず夜な夜なカルトについて貪るのだった。
自分は皆と違うという感覚に囚われて生きてきた。
何か特別な存在だと誇るわけでもないが、何かがずれていると感じて生きてきた。
だからこそ竹内はカルトにより深く没頭した。
ネット上に掲載されたこの世界の摩訶不思議を彼は毎晩毎晩楽しんでいた。
そんな竹内の心身に変化は訪れ始める。
ある晩竹内は寝る前に日記を書くという事を始めた。
その日記はとても日記とはいえないような代物であった。
というのは、まず彼は就寝前に座禅を組んで目をつむり、ガクリとうなだれて瞑想をする。
そしてその結果得られたイメージを文章にして書き表わすという、なんとも不思議な日記だった。
タイトルに「預言」と名付けられたその日記は、大学ノート程の大きさをしている。
預言の練習を日夜繰り返す竹内。
たまに書いたとおりのような一日を送ったような気がして竹内はだんだんと彼の身の回りに変化が訪れたような気分になっていた。
ある日、彼は言い当てる練習を始め出した。
大学へ行く電車内で降りる人と乗ってくる人の数を直感的に言い当てる練習を始めたのだった。
最初はまったく見当違いな数字を思い浮かべていたものの、
徐々にその数が実際の乗車、降車する人間の数に符合するようになってくる。
彼は自分はやはり何かを持っているという感覚に陥った。
やがてそれが習慣になってくると、日々書き連ねていた「預言」のノートもいっぱいになってきた。
テレビに見向きもしなくなって十日、就寝前。
彼は頼るべきは情報ではなくこの眼に見て確かめたものと直感のみだと悟るに至った、とある晩のことだった。
彼はいつもの瞑想中に一つのイメージを感じた。
どことなくさびしげな雰囲気。
さびれた悲しげな印象。
何もなく恐ろしく涼しげな感覚。
非人為的な自然を感じた。
次の瞬間、竹内は、眼を見開いた。
彼はすぐさまに預言を記した。
「廃墟へ、赴け」




