プロローグ
ハッと目が覚めた。
何か違和感のようなものを覚えた。
寝惚け眼を擦りながら、薄暗い静寂の場に目をやった。
鉄格子の扉。ただ白く塗られただけのコンクリートの壁。
自宅——ではない。
見慣れない世界がそこにあった——。
そう悟ると同時に、瞬時に地獄のような絵図が洪水の如く押し寄せてきた。
目を瞑る。身体の全ての力が吸い取られたように、ガクッと脱力した。
こんな環境下で眠れている自分の図太い神経に驚きを隠せない。
——この先どうなっていくのか。
事実を事実として受け入れたくない。
ただ受け入れざるを得ないのもまた事実。どん底に叩き落とされ、行く先のことを思うだけで、不安と恐怖で胸が押し潰されそうになる。
逃げ場のない檻に閉じ込められた動物。その感情までも、理解する日がくるとは夢にも思わなかった。
五畳ほどの、閉塞感漂う殺風景な部屋——部屋と呼んでもいいものなのか。その空間には便所が一体となり設置されている。
ただ、それだけしかここにはない——。
人間のほぼ必要最低限の生活をこの空間で補わなければならない。
尿意を催したところで、もぬけの殻のような身体に気力を投入して立ち上がり、重い足取りでゆっくりと進む。パーテーションで区切られた便所内には、年代を感じさせる和式用便器にトイレットペーパーが直に、無造作に置かれている。
清潔、という言葉は、ここには存在しない。
苦痛を与えるためにわざと劣悪な環境を生み出しているのか、とさえ思えてならない。
用を足し、ペラッペラの薄汚い布団に腰を下ろす。
朝まで、あとどれほどあるのか。
眠気など、遥か彼方へといってしまった。
これぞ夢であってくれたら——と切に願う。
目を瞑り両手で顔を覆い、懇願する。
だが——
どれほど祈り続けても、指の隙間から覗く景色はびくともせず、闇を映し出している。
いっそ、跡形もなく消えて死んでしまったほうが、楽ではないのか••••••。
閉じた瞼の奥から、熱を帯びた雫が頬を伝って、とめどなく流れ落ちていった••••••。
主文、被告人を懲役二年四月に処する——




