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Round2

「おれも買おうかな」

 疲れの滲み出た黄色い目が暗い宙域を見つめている。

 その宙域ではレース前の返し船が終わり、それぞれがスタート位置に戻っていくところだった。暗い宙域に小型艇のバックファイヤーが散っていく。

 わたしは金貸しの言葉が意味するところを考えようとして、やめた。それは文脈を読むとかじゃない、妄想だからだ。

「やめておけ、金貸しに金を貸してくれる奴はいねぇだろ」

 そして買ってもいない投票券を想像する。

 このレースは買うなら1号流しだ。ライダーもエンジンも間違いない。最内を回りながら後方を牽制しつつ微差を逃げ切る展開になる。きっと。




「それもそうだな」

 しばらく間を置いて答えた金貸しは、続けてまるで近所にでも行くような調子で「なぁ、一緒に地球に行かねぇか?」と言った。

 驚いて金貸しを見ると、その目はこちらを見ず前に広がる宙域に向けられていたままだった。

 呆気に取られてその横顔を見つめる。

「何言ってんだ?おまえ……」

 レース宙域の薄明かりが金貸しの顔を照らしている。その光が射す方に向けられた顔には、明るい未来なぞ無さそうだった。



「おれも穴党だからさ、そろそろ買うかと思ってな」

 なおも暗い宙域に向けられた目は、もしかしたら遠い地球を見ているのかも知れない。

 そしてそのままの姿勢で金貸しは再び

「おれもね、買おうかなって」

 と言った。まるで自分に言うみたいに。

「それが何であたしと地球なんだよ」

 手の中にあるコーヒーが詰まっていた缶を弄びながら訊く。地球の片鱗が手の中にある。こいつがくれたやつだ。



 しばらくの沈黙があってから、金貸しが言った。

「何でだろな。月一で会うようになって長いから、かな」

 金貸しがその日初めてわたしを見た。くしゃりとした笑顔の皺の影は淋しそうな色をしている。

 いや、それは疲れとか諦観とかかも知れないし、もしかしたら全部がわたしの妄想かも知れない。



 地球、か。

 地球の青い空ってのを眺めてみたい気もする。知らない奴と行くよりは、こいつと一緒の方がいくぶんマシかも知れない。

 ……こいつと旅?

 金貸しとその客であるわたしが並んで景色を見たり、向かい合って食事するのを想像するとおかしくなって笑った。


「どうだ?」

 金貸しがいつになく真剣な声で言った。

 わたしが立ち上がりながら「そうだな、考えておくよ」と言うと、金貸しはいつもの声で「そうか」とだけ言った。

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