010-新たなる空白の地へ
かくしてドクターアークは飛び立った。
触媒や素材、食材、酒、そして水といった消耗品を仕入れ、魔石を購入して動力を確保し。
推進補助パドルが壊れていたので、ついでに直した。
三日も無駄にしてしまったが、俺の魔力は万全に回復した。
「久々に地図に載ってる場所の蘇生かい」
「まあ、そうだな」
「ハルシバルでしたよね、あそこのパン、美味しいんですよ」
全速力で飛ばして、俺たちが向かうのは。
昔の地図に載っている、王国東部の大穀倉地帯である。
現在、蘇生された地域で人類が悩むのは、深刻な食糧不足である。
事実、食糧が前回購入時より遥かに高かった。
余所者価格というのもあるんだろうがな。
それにしても、分かりやすい程に足りていない。
「しっかし、分厚い雲だねえ」
「海も風もないというのに、どうして雲があるんでしょうか?」
雲の中を飛ぶドクターアーク。
ジルクが、当然の疑問を口にする。
海すら枯れ果てて、巨大な平地になったのにだ。
雲は依然として存在し続けている。
「ジルク、機関に問題は?」
「ありません.....というか、魔力推進機関はナーシャさんが見てますよ」
「ああ、そうだったな.....」
弓使いのナーシャ、手先が器用なのを活かし、基本的に魔力推進機関と、双魔力干渉浮遊場の整備をしてくれている。
基本的にこの船は飛び続けるしかないからな。
どんな弓も扱えるあの超絶技巧を前にして、細かな異状も見逃すはずはない。
俺が思案していると、不機嫌そうなベスに指摘された。
「ってかよぉ、あんたは医者だろ。あんまり口出しすると反感を買うぜ」
「悪いな」
医者ですらないのだが、黙っておくか。
俺はブリッジを抜け、サンルームへ出た。
雲の中を飛び続けるドクターアークにおいて、外は見えないが....
そこで俺が来るのを待っていたかのように座っていた剣士、アルトラインが顔を上げて俺の方を向いた。
「よう、医者。......暇なんだな?」
「ああ、そうだ」
「カードはやるか?」
「やらない。.....昔話に付き合ってくれるか」
「いいぜ」
俺は、サンルームの椅子へと座った。
彼と出会った時の話をするために。
雲海を突き抜けた先、灰色の大地の先に。
山脈の様なクレーターが存在していた。
地脈接触点だ。
「大きい.....ですね」
「やはり、それなりに巨大な地脈だな。ここを蘇生すれば、周辺にも影響を与えるだろう」
ドクターアークを滞空させ、俺とミカはクレーターの中央へと降り立った。
俺はその中央に立ち。
〈医師の杖〉を地面へと突き刺して、叫んだ。
「〈世界蘇生術式〉――――」
そして、眩い光が視界の全てを埋め尽くした。
光の中で、俺はミカの叫び声を聞いたような気がしたが。
意識は空白へと消えて行った。
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