第二話 夜桜舞う街
あれから3日間ひたすら山道を駆け抜ける。
行き先は妖刀 夜桜を所持している志波竝のもとへとひたすらに険しい道を進んでいく。
麓へと近づく度、晃作が駄々をこね始めた。
「俺...もう歩きたくねぇよ。おぶってくれよ〜剣」
「まだ、歩けるだろう?麓まで後少しだ。」
山道を進み続けるとやっと麓への看板が見えてきた。
麓につき、近場の団子屋で一服がてらお茶をいただいていると団子屋のおばあちゃんが話しかけてきた。
おばあちゃんの情報によるとこの山の向こう側に見える大きな要塞の中に女物の羽織を着た男がいるという。
その男は普段、酒屋で宴を開いていると追加の情報を手にすることができた。
おばあちゃんにありがとうと言い、くだり坂を下っていった。
夜桜城下町... 居酒屋 喜助
二人の男が面と向かって話をしている。
「お頭、どうやらこの街には例の妖刀狩りが向かってきてるようです! 名は確か...獅子王とかいうやつです。」
「おぉ、そうか!ありがとよ。ところでよ、火事場工房 侍鉄の所で騒ぎがあったらしいが大丈夫か?」
「どうやら、佐助と太郎が喧嘩になったらしく近くにいた四嶋さんたちが止めてくれたらしいです。」
「そうか、ならそろそろ俺も戻るとするよ。女将さん、お勘定。」
店を後にし、男はこうつぶやいた。
「久しぶりに暴れるとしますか。夜桜!」
夜桜町 城壁前...
「うわ~、クソほどデケェ〜!
万里の長城に匹敵するくらいの高さじゃねぇか?」
途中で門番に止められそうになりながらなんとか、門を通ることができた。
門を通り抜けるとそこには周り一面に桜が舞っている。
そして、街のあちらこちらに桜の文様が見られた。
街の中を巡っていると桜を模した食べ物が売っていた。
しばらく探索していると急に鐘が鳴る音が聞こえる。
すると、街の人々が集まりワイワイと騒ぎ始めた。
前の方へ行き、見るとそこには女物の羽織を着た男がそこに立っていた。
その男は街の人々に手を振りながら笑顔で歩く。
視線がこっちに向いた途端、近づいてきてこういった。
「お前さんが噂の妖刀狩りかい?」
距離を取り刀に手を添え抜刀の構えを取ろうとしたとき、男は一言つぶやいた。
「あぁ、すまんすまん。こっちはやり合う気なんてないのさ。」
「あんたが志波竝か?」
「そうさ。僕が志波竝 桜華さ。君は?」
「獅子王剣。」
「そうか!なら剣って呼ばせてもらうよ。剣、お前はその力でどんなことを叶えたい?」
「何がだよ?」
「決まってるだろう?妖刀を持つ者として叶えたい願いはないのか?」
「ないね!」
「そうか。なら一つ教えといてやるよ。お前はオレには勝てない。」
凄まじい程の圧を感じる。
今までとは違う何か...
他の奴よりも妖刀を使いこなしてやがる。
「仕方ない。やるか...舞い散れ!!夜桜」
刀が重く感じる。
そして、血の気が引くほどの圧を感じる。
なんだこの感覚は...
まるで野生の虎と対峙しているような威圧。
手が震えるまるで子犬が大型犬に怯えるように凄まじい異彩を放つ。
妖刀を持つ手に視線を向けるとそこには刀身がない刀が目立つ。
「刀身がない!どういうことだ?」
志波竝はこう答えた。
「夜桜の能力は自身の刃を1.5cmほどに細かくすること、すなわち桜の花びら自身が刃と化す。」
それが妖刀夜桜の能力。
散った花びらが中を舞い続ける限り、剣に襲いかかる。
交わしながら妖刀迦楼羅に妖力を込め続ける。
それを継続的に交わしながら5回行った。
迦楼羅を鞘に納め、志波竝の元へ走り出す。
それを阻むように夜桜の無数の刃が襲いかかる。
それを切り返しながら進んでいき、刀を鞘から抜刀する瞬間に無数の刃が剣を斬りつけた。
それを掻い潜りながら歩みを留めずに進んでいく。
志波竝の間合いに差し掛かったタイミングで刀に炎を纏った。
「炎釈 集熱」
志波竝の着物の袖に火が移る。
火が移る瞬間にその着物を瞬時に脱ぎ捨てる。
「あぶねぇ〜あぶねぇ〜。やるじゃねぇか!でも惜しかったな。あと一手うたれたらやられてたぜ。」
そこには無数の傷を受けて立っていた剣がいた。
身体中が痛む。刀を握っている感覚もなくなりかけている。
意識も朦朧とするかなまだ、刀を強く握る。
「もう終わりか?剣。」
「まだ、終わってねぇよ。」
そうは言ったものの、もう立っているだけ奇跡っていうレベルだ。
何処からともなく、妖力を感じる。
それは以前戦った妖刀の妖刀。
「満ちろ!紅影。」
「晃作!?」
その少年は、茶色の髪色をした。
弱虫な少年だった。
数時間前...
俺は昔から必要とされたことがなかった。
物心ついた頃から、親の顔も知らない。
身内って言う人ももう既にこの世にはいなかった。
金平糖やそういった高級なものはもちろん、すき焼き(牛鍋)とかも食べたこともない。
いつも、主人が残した残飯を食べて生を繋いでた。
でも、そんな日常もある人との出会いが俺を救ってくれた。
「なんだ、坊主。こんな所で死んだ魚のような目して何を見てんだ?」
顔を上げるとそこには笠をかぶり、年を取った男が立っていた。
その男は晃作の頭をポンとしながらつぶやいた。
「来るか?俺と一緒に。もちろん、後のことは任せろ。」
そう言いながら、おっちゃんは表面が凸凹した和菓子をくれた。
「そう言えば、坊主。名は?」
「蕗谷 晃作。おじさんは?」
「 俺は如月 善悪っていうんだ。よろしくな!晃作。」
それからおっちゃんと暮らす日々は、なんだかんだ良かった。
今となっても思い出す。あの言葉を...
「晃作。お前はなんのために刀を握りたい?愛するもののためか?それとも金のためか?理由なんてどれでもいい。ただしこれだけは肝に銘じておけ。お前が必要としているやつのためにその刃を振りかざせ。そしたらいつか、その刃はきっとお前を必要とするやつのところからお前に返ってくる。」
今がその時なんだ。おっちゃん。
妖刀紅影の刀を手に持ちながら、刀に問いかける。
「なぁ、紅影。お前の力を貸してくれるか?」
妖刀はこう答えた。
「待っていたよ!君をずっと〜!」
妖刀と契りを交わしたものに出る妖刀の印がある。
その印は妖刀独特の雰囲気を醸し出している。
「満ちろ!紅影。」
複数の残影が影から現れる。
迫っていく晃作に夜桜の無数の刃が攻撃を始めたと思いきや、夜桜の花びらが動きを止めた。
「影で花びらの動きを止めたのか?」
「あぁ、そうさ。」
紅影の本当の能力はあらゆる物体の影を操ることができる。
無数の残影が志波竝を襲いかかったとき、志波竝がつぶやいた。
「やめだ〜やめ。ふぅ〜意外とやるじゃないか?特に晃作ってやつ」
妖刀を鞘に納め、そう呟いた。
夜桜城 客間...
入るとそこにはお茶とカステラが用意されていた。
「まぁ、どうだ。一杯飲んでけ。(強制)」
「お前たち、次はどうするか決めたか?」
「次か...」
「なら、とりあえず俺の連れに剣術を教えている奴がいる。そいつの所で鍛えてもらえ。」
「え?...」
「そいつの名は鹿洲っていうやつさ。あいつは妖刀を持っていないけど剣術だけで妖刀と同等に張り合えるやつさ。文はこっちで送っておくから〜!」
「まだ、一言も行くとは言ってないが〜」
華身一刀流剣道場
「はぁ~、めんどくせぇ〜なんで俺がよくわからんガキに教えないといけないんだ?」
「そう言わずに、教えてやってくれよ!光寿。」
「てか、なんでおめぇ〜勝手に家に上がるんだよ。」
「まぁ、気にすんなって。」
「気にするわ〜。」
「あいつらはきっと強くなるさ。俺らよりもな。」
「まだ、思い出すのか?あのことを...」
「あぁ、嫌でもな。」
桜の花びらが舞う季節が今年も来たようだ。
さてさて、次回いよいよ登場!
妖刀を持たずに妖刀と張り合える男。
そして、その男の元で晃作と剣はどのようにして鍛えられるのか?
いや、どうでもいいだろそれ。
次回「妖刀を持たない男。その名は鹿洲 光寿。」




