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悪役義兄との子、育てます  作者: kae「王子が空気読まなすぎる」2巻発売中


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9話 セリニエール伯爵邸

 久しぶりに訪れたセリニエール伯爵邸は、相変わらずの豪華さだった。

 王都から馬車で、4時間ほどで着くそのお屋敷には、広大な敷地に絢爛豪華な花々が咲き乱れていた。

 このお屋敷には今、国中から数多くの貴族たちが、夫人のお祝いのために集まっている。

「ウォリアーズ家のウィルフレッド様とヴィヴィアン様でございますね! 本日はお越しいただきありがとうございます。代理の件はうかがっております。お部屋へご案内いたします!」

 出迎えてくれたのは、いつもの執事とは違う、ずいぶんと若い男性使用人だった。

 私たちと同じくらいの年代か、もっと下かもしれない。

 元気いっぱい、やる気いっぱいという感じの好青年で、見ていて気持ちがいい。

「ああ、お願いする。……ところでいつもの執事はどうした?」

「大変失礼いたしました。実は父のエドガーはパーティーの準備で、過労で一度倒れてしまいまして。今は回復しているのですが……見習いである私、アロイスが父から仕事を習いながら、半分ほど仕事を引き受けさせていただいております。慣れずにご迷惑をお掛けすることもあるかもしれませんが、精いっぱい務めさせていただきます」

「そういうことか。分かった」

「父とは違って気が回らない点もあるかもしれません。なんでもおっしゃってください」

「そうさせていただく。頼んだぞアロイス」

「はい!」


 社交界でも人気のセリニエール夫人の誕生日パーティーともなれば、相当大きな規模なので、準備も大変なのだろう。

 招待客一人一人に合わせて部屋の準備に、食事やおもてなしの手配。他の使用人たちへの指導……。

 跡を継ぐ息子さんがいて手伝ってもらえるのなら、心強いだろう。

 アロイスの案内で、今日泊めていただく部屋へと案内してもらう。

 誕生祝に合わせて国中から集まってきている貴族の中には、何泊もしていく人もいるようだけれど、私たちは今夜のパーティーに参加して、一泊だけして明日には帰る予定だ。

「こちらになります」

「まあ素敵!」

 案内されたゲストルームは、ピンクの絨毯が敷き詰められた可愛らしい部屋だった。

 絨毯はピンクだけれどカーテンは落ち着いたクリーム色で、クッションは純白なので、部屋全体としては落ち着いていて品が良い。

 女性客向けらしい可愛い部屋なので、きっと私の部屋なのだろう。それにしてはずいぶん大きな部屋で、恐縮してしまう。

「セリニエール夫人のセンスは相変わらず素晴らしいですね」

 屋敷の装飾は女主人のセンスで決まる。客に合わせたさすがの選択だ。

「ありがとうございます! 後ほどお茶をお持ちいたしますね。それではごゆっくり、お寛ぎください」

「ちょっと待て!」

 ニコニコと立ち去っていこうとするアロイスを、慌てた声のお兄様が止める。

「この部屋はヴィヴィアン用だろう? 私の部屋はどこだ」

 そうそう。お兄様の部屋も案内してもらわないと。

 アロイスは好青年だけど、ちょっとうっかりさんなのかもしれない。

「え、こちらですが?」

「……ヴィヴィアンの部屋は?」

「ですから、こちらがお二人のお部屋となっております」

「一緒の部屋なの!? お兄様と私が!?」

「はい、そうですが?」

 そうですが? と、なにがまずいか全く分かっていない様子のアロイス君。うっかりさんどころの話ではない。

 兄妹とはいえ、血がつながっていない18歳の女性と25歳の男性を、同じ部屋にしたらまずいとは思わないの!?

「アロイス。……父上と母上の代わりに、俺とヴィヴィアンが来ることは、知っていたな?」

「はい! あらかじめお手紙でお知らせいただきましたので」

「そうか……」


 私たちが血がつながっていないことは、社交界で知らない人はいないだろう。

 今更話題に上がるわけではないけれど、お兄様がウォリアーズ家に引き取られた時はそれなりに噂になったそうだし。

 だから代理で私たちが行くという手紙を出せば、それだけで当然に別室を用意してもらえると思っていた。

 そうであるはずだった。通常であれば。

 だけどこの見習い執事さんは、私たちが血がつながっていないことを、ご存じないみたいだ。

 この若さだったら仕方がないのかもしれない。

「そうか。悪いがアロイス、もう一部屋用意してくれ」

「ええええ!? 申し訳ございません。今夜ばかりはパーティー当日ですので、お客様が多くて、部屋が満室になっております。ご家族は一部屋でお願いしておりまして……大変申し訳ございませんが」

 違うのよアロイス君! 一人一部屋広々と使いたいなとか、そういう我儘を言っているんじゃないのーー!!

「……部屋じゃなくてもいい。寝られればどこでも、使用人部屋で雑魚寝でもいいから……」

「お待ちくださいお兄様!」

 更に言いつのっているお兄様を、止める。

 これは確かにアロイス君のミスかもしれないけれど、招待客の情報を伝えきれていない執事のエドガーさんのミスでもある。

 そして使用人のミスは、その屋敷の主人であるセリニエール伯爵ご夫妻のもの。

 夫人の60歳のお誕生日というおめでたい日に、水を差してしまう!

「だ、大丈夫です。素敵なお部屋だわ。広さも十分! でもね。エドガーさんに、私たち二人を同じ部屋に案内したということを、伝えておいていただけるかしら。周りに人がいない時にね!」

「???」

 なんで? とキョトン顔をするアロイス君。

「いいから、お願いね! 絶対にエドガーさんに伝えてちょうだい!」

「はあ……分かりました」

 しぶしぶといったように頷くアロイス。

 きっと私たちを我儘な貴族だと思っているんだろう。

 お客相手にそんな顔を見せるなんて――まだまだ修行が足りないわよ!





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