7話 ショック
シークレットパーティーの次の日の朝、お兄様はまた遅れて朝食の場に現れた。
――あれから先に帰ってきてしまったけど、無事に戻られたのね。よかった。
あのまま朝までずっと一緒にいたかったけれど、そうしたら正体がバレてしまう。
不安だったけれど、私は先に家に帰ったのだ。
お兄様は早朝まだ暗いうちに、家まできちんと帰ってきてくれた。
夢みたい。
こんなに逞しくて美しい人と、私は昨日……。
いつも素敵だけど、今朝は特別お兄様が輝いて見える。
気だるげに目を伏せるその銀色のまつ毛の一本一本まで、キラキラしている。
ため息がでそうだ。
「……ヴィヴィアン」
「は、はい!?」
ボーっとお兄様を眺めていたら、急に名前を呼ばれて驚いてしまう。
いつもは私から突っかかってばかりいるので、お兄様のほうから話しけられたのは久しぶりかもしれない。
「その……怒っているか?」
「な、なににですか!?」
お兄様に対して怒るようなことに、心当たりがない。
逆に昨夜は助けてもらったくらいだし。――まあお兄様は私だと知らなかっただろうけれど。
そんなにいつも怒ってばかりだと思われているのかしら。
「俺が結局シークレットパーティーに行って、朝帰りをしてしまったことを……」
「ああ、なるほど。いいえ、全然怒っておりませんわ」
確かに普段の私だったら、お兄様が遊びに行って朝帰りなんてした日には文句を言っていただろう(本当に嫌な妹ね……)。
でも昨夜お兄様が早く帰れなくなってしまったのは、私を助けてくれたおかげだと知っているので怒るわけがない。
「そうか……俺がどこでなにをしていても、気にしてもくれないか……」
「ああ! そ、そうよ、そうだわ。怪しげなシークレットパーティーに行って朝帰りなんて、困ってしまいます! お兄様にはウォリアーズ伯爵家の者として恥ずかしくない行動をとっていただかなくては!」
しまった。私は昨日パーティーに行っていないことになっているのだから、怒らないのは不自然だ。
慌てて怒っているふりをする。
「どちらの女性と遊ばれていたのかは知りませんが、もしも子どもでもできたら……」
「安心しろ。酔いつぶれて寝ていただけだ」
「え……」
お兄様のその言葉に、ショックを受ける。
嘘……をついている様子もない。
それにお兄様は誠実な方だ。もしも行きずりの女性と関係を持ったとしても、なかったことになどしないだろう。
昨夜のこと、覚えていないんだ。……あれだけ酔っていたから、仕方のないことかもしれないけれど。
一生忘れない思い出だと思っているのは、私だけだったみたいだ。
「それに子どもなど一生持つつもりはない。絶対にだ」
「そう……なのです……か」
私がお兄様と結婚できる日など絶対にこないのだから、お兄様が子どもを望まれていなくてもなんの関係もない。
だけどなんだか、お兄様のその言葉に、私はとても落ち込んでしまったのだった。




