表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役義兄との子、育てます  作者: kae「王子が空気読まなすぎる」2巻発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

5話 休憩室

 あれからどれほどの時間が経っただろう。

 お兄様が飲み終えたお酒の瓶は、すでに片手では数えきれないほどになっている。

「お願い! もう止めて」

「いや、まだ大丈夫だ。私はお酒に強いから……」


 それは知っているけれど、いくらなんでも飲みぎだ。お兄様が死んでしまう。

 ――もういい。正体がバレて、家に迷惑をかけてしまうかもしれないけど――お兄様が死んでしまうよりいい!!

 そう決意して、バタフィック侯爵を睨みつけた。

 侯爵はその私の顔を見て、ニヤリと笑った。


「ふっ。いいだろう、君たちの勝ちだ。小鳥も追い詰めすぎるとなにをしでかすか分からないからな」

 その通りだ。例えなにがどうなろうとも、刺し違えてでもお兄様を助ける。

そんな私の覚悟を、まるで読まれたみたいだった。

「休憩室で休んできなさい。君たちみたいなのは、もう二度とこのパーティーにはくるなよ。興ざめだ」



*****



「ごめんなさい……ごめんなさい、おに……あ……名前……」

「……ウィルだ」

「ウィル……」

 本来なら別の目的で用意されているだろう『休憩室』で、私たちは本当に休憩していた。

 先ほどまでしっかりしているように見えたお兄様は、バタフィック侯爵の使用人がいなくなると同時に、休憩室にあるベッドに倒れこんでしまった。

 一刻も早くこんな会場から去りたいけれど、お兄様がこんな状態では難しい。

 部屋の鍵は掛けたけれど、主催者のバタフィック侯爵の関係者にはいつでも開けられてしまうだろう。

 なんとか一人掛けのソファーを移動してドアの前に置いて、誰かが入ってこないようにする。

 だけど私が押して移動できるようなものが、バリケードになるとも思えない。

 重厚なベッドを扉の前に置けば大丈夫だろうけれど、私の力では移動できない。

「そんなに慌てるな。……あの侯爵が見逃すと判断したからには見逃してくれるんだろう。そういう見極めで上に昇り詰めた人だ」

「で、でも……」

「だから君は安心して帰れ。……俺は少し休んでいく」

 それだけ言うと、お兄様は目をつぶって動かなくなった。

 今までかなりの無理をしていたのだろう。


 ――助けてくれた。私のこと、ヴィヴィアンだって分かってなかったみたいだけど。だけど。

 知らない女性を身体を張ってまで助けたのだと思うと複雑な心境だけれど、やっぱり嬉しい。

 ――お兄様、大好き。

 やっぱり優しい。子供の頃から全然変わってない。こんなに優しい人他にいない。

 ゲームの悪役の時のお兄様だって、本当はとっても優しかった――。


 愛しさが次から次へと溢れ出てしまう。


 寝ているお兄様に近づく。

「ん……」

 薄く開いた唇から、目が離せない。

 ――お願い。目が覚めないで――。


 ごめんなさい、お兄様。一生に一度の思い出に。


 前世から恋焦がれているその唇に、自分の唇をそっと近づけた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ