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悪役義兄との子、育てます  作者: kae「王子が空気読まなすぎる」2巻発売中


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3話 シークレットパーティー

「こんにちは。お一人ですか」

「……二人に見えるか?」

「あ、そうですよね、すみません。私、初めてこのパーティーに来たので、とても緊張してしまって」


 先ほどから寄ってくる女たちに辟易としていたが、冷たく断っているうちにやっと途切れたと思ったら、またこれだ。

 今度はずいぶん若そうな女が話しかけてきた。

 なんだか先ほどまでの女たちとは雰囲気の違う、純朴そうな女ではあるが。

「今日はどうしてこちらにいらしたんですか?」

「……」

 どうしてもこうしても、こんなパーティーに来るような者たちの目的はただ一つ。

 一晩の火遊びの相手を見つけに来ているだけだろう。聞いてどうする。

 この女は、自分は違うとでも言いたいのだろうか? 

 確かに場に慣れない様子で、戸惑っているようではあるが――。

 いや、純朴なふりをする手管かもしれない。そう考えて警戒心は解かない。

 こんなパーティーに参加していると知られたら、これまで以上にヴィヴィアンに嫌われてしまうではないか。

 その上知らない女と話し込んでしまったら、誤解が誤解ではなくなってしまう。

 しかもパーシバルに誘われているところを聞かれていたのだから、胡麻化すことは難しい。

 かくなる上は、少しでも早く帰らなければならない。

 パーシバルは先ほど、恋人らしき女性を見つけたらしく、確認してくると行ってしまった。

 ――俺はもう帰ってもいいだろうか。

「あ、あのっ」

「ああ、すまない。友人に付き添いを頼まれて来ただけだ」

「そうなのですね」


 考えに耽っていたら、女性のことを無視してしまっていたようだ。

 それなのに女性は気分を害した様子もなく、ニコニコと笑いかけてくる。

 いつもだったら話しかけられても無視するだけなのに、なんだかこの女――女性に対しては調子が狂ってしまう。

 年恰好がヴィヴィアンと一緒くらいだからだろうか。

 ――まあ髪の色も違うし、声色も全然違う。なによりあの世界一可愛らしく清廉なヴィーが、こんないかがわしいパーティーに来ているわけがないのだが。


「君はなぜここに?」

 話を膨らませる気などなかったけれど、単純にその点が気になったので、ついつい質問をしてしまった。

「……好きな人が、このパーティーへ行くと聞いたので」

「そんな男、止めておけ」

「そんなに簡単に止められたら、苦労はしません。嫌われているって分かっていても、ずーーーーーっと好きなんです」


 --なんということだろう。この純朴そうな女性は、こんないかがわしいパーティーに参加するような男を慕って、決死の覚悟で潜入してきたという。

 ヴィヴィアンとそれほど変わらない年齢のようだというのに!!

 どんな男なんだ、その男。

 二、三発殴って、目を覚まさせてやりたい。


「悪いことは言わない。その男を諦めろとまでは言わないが……こんなパーティーは一刻も早く抜け出したほうがいいぞ」

「えーっと、その人が帰ったら、私も帰ることにします」

「……はあ。悪いが俺は、面倒を見れないぞ」

「はい!」


 仮面に覆われていない口元から、その女性がニコニコと笑っているのが伝わってくる。

 子供の頃、まだ俺に笑いかけてくれていた頃のヴィーの笑顔に似ている気がした。

 こんな女性をパーティー会場に一人で置いていったら、悪い男に騙されてしまうだろう。

 罪悪感がないわけではないが、俺が大事にしたいのは世界でただ一人、愛しいヴィヴィアンだけだ。

 今頃心配を掛けているかも……いや、それはないか。俺は彼女に嫌われているから。

 しかし帰りが遅くなれば、どこかの令嬢と遊んできたと誤解される。

 それだけは避けるために、一刻も早く帰らなければならない。

 どこの誰とも知らない令嬢のために、こんなパーティーに居続けるわけにはいかないのだ。

「それじゃあ、俺は帰らせてもらう。身分の高い者もお忍びでくるから、怪しい薬なんかは無効化する結界は張られているが……人から勧められた食事や飲み物には口を付けるなよ。強い酒で女性の判断力を鈍らそうとする奴もいる。気を付けろ」

「は、はい! ありがとうございます。私ももう、すぐに帰りますから」

 その女性はとても嬉しそうに、また笑った。

 こんな子に好いてもらっているどこの誰かも分からない男を、心から羨ましいと思った。


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