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悪役義兄との子、育てます  作者: kae
第3章 事務官長

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4話 事務官長

 その日の朝出勤したら、上司であるセレファス様が、呆れたような疲れているような、なんとも表現しがたい複雑そうな顔をして、机に頬杖をついていた。

 こういう表情を苦虫を嚙み潰したような、というのかしら。

 普段お仕事が忙しくても、疲れていそうでも、凛々しい表情を崩さずにいる彼にしてはとても珍しい。


「おはよーセレ」

「やあ、おはようエヴァ。今日のお洋服はお気に入りのやつだね」

 それでもエヴァに優しいセレファス様は、エヴァの姿を見た途端、姿勢を正して笑顔になる。

「おはようございます、エヴァちゃん。今日はなにをして遊びましょう」

「おはよう、ノラ。わたしおやつたべたい!」

「おやつは、おやつの時間になってからいただきましょうね」



 ノラさんがエヴァを、お隣の部屋へと連れていくのを、セレファス様と二人で、手を振って見送った。

「セレファス様、今日は体調がお悪いんですか?」

「いいや。なぜ?」

「先ほどお疲れのご様子でしたので」

「いや、体調が悪いわけではない。……少し疲れることはあったかな」

「まあ、なんでしょう?」

 セレファス様が朝から疲れるほどのお仕事なんて、なにがあったんだろうかと、心配になる。

 まさかなにか緊急事態でもあったのだろうか。例えば魔獣が王都に入り込んだとか……?


「今日から魔術師塔の長が変わったんだ」

「長、というと魔術師長のグローリー様が変わられたんですか」

「いいや、魔術師長は変わらない。変わったのは事務官長。王宮から派遣されている事務方のトップだよ」

「はあ」

 王宮から派遣されてくる、事務方のトップ。

 正直言って、そんな人いたのねという感想しかないので、セレファス様がなぜそのことで疲れるのかが分からない。

「先ほどまで、そいつがこの部屋に居座っていてな。やっと出て行ったところだ」

「なぜそんな……」

 一体その人物はなぜ、この部屋に居座って……と聞こうとしたその時だった。


「来たのかヴィヴィアン! 待っていたぞ」

「お兄様!?」

 ドアを開けて入ってきたのは、長年の想い人。

 つい最近5年ぶりの再会をしたばかりの、お兄様が入ってきたのだった。

「お兄様が、なぜここに!?」

「偶然だな。突然ここの事務方をするようにと、辞令があったんだ」

「嘘つけ」


 お兄様の言葉に、すかさずセレファス様が突っ込みをいれている。

 私もさすがにこんな偶然はありえないと思うものの、偶然の再開から3日目で転職してくるなんて、やろうと思ってもできることではない気もする。


「そういうことだから、これからよろしく頼む、ヴィヴィアン」

「は、はい。お兄様」


 驚いたものの、実は嬉しくて顔がにやけそうになるのを、気が付かれていないか心配だった。




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