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悪役義兄との子、育てます  作者: kae
第2章 天才魔術師様と虹色の瞳の女の子

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7話 当たり前の生活

「血のつながらない兄……か」

 あの銀髪の男には見覚えがある。優秀だと評判な宰相補佐だったか。

 最近第二王子の側近に誘われたというのに、断ったとかなんとかいう噂を聞いたことがある。

 きっとあいつが、以前この花畑にヴィヴィアンを連れてきたという奴なんだろう。


 ヴィヴィアンの中に想う相手がいることには、ずっと前から気が付いていた。

 誰がどう見ても、あいつだろう。

 そしてあの男がヴィヴィアンを見る目も、世界で一番大切な、愛する者を見つめる目だった。


 この5年間、ヴィヴィアンとエヴァンジェリンのそばにいたのは僕だった。

 ヴィヴィアンと一緒に仕事をするのは楽しかったし、エヴァンジェリンが無事に生まれた時は、心の底から嬉しかった。

 二人に会えるから、毎日職場へ行くのが楽しみになった。

 出会う前のボロボロになりながら、ただ働くだけだった日々と今とではなにもかも違う。

 ヴィヴィアンと雑談しながら働く日々が大切だった。エヴァンジェリンが日々成長していく姿が、僕がこの国を守る理由になった。


 他愛もない話しをしているだけで幸せ。もっといっぱい遊んでやりたい。一緒に夕飯を食べたい。

 綺麗な花畑に連れていって喜んだ顔が見たい。


 恋愛感情なんて抱いたことがない?

 じゃあこれはなんなんだ。


 穏やかすぎて、それが当たり前の生活になっていて気が付かなかった。

 どうしてもっと早く気が付かなかったんだろう。

 あの日、合理的だから結婚しようなどと言わず、二人が大切だから守りたいんだと。だから家族になりたいんだと言えていれば、ヴィヴィアンの返事は違ったんだろうか。

 そんなことを考えてしまう。


 人生で初めて人を好きになったことに、気が付いたのは失恋した後だったなんて。

「あー……話には聞いたことあったけど。結構辛いものだなぁ」

 目から涙まで溢れてくる。

 いい年した大人が、泣くのか。すごいなぁ、失恋って。


「セレ。ないてる? いたいいたい?」

「エヴァ……」

 花畑に仰向けに寝転がって泣いている僕を、心配したエヴァが近づいてきて、のぞき込んでくる。

 いけない。こんな小さな子に、心配をかけてしまう。

「セレないちゃやだ……」

「ああ、ごめんエヴァ。なんでもないんだ……エヴァ!?」

 なんということだろう。

 僕が泣いているのを見て、小さなエヴァまでポロポロと涙を流して泣き出してしまった。

 ヴィヴィアンと同じ虹色の大きな瞳から、大粒の綺麗な涙がこぼれ落ちていく。

 慌てて起き上がって、可愛いエヴァを抱き上げる。

「もう大丈夫だよ。ごめんね」

「ほんとうに?」

「本当に。昨日悲しいお話を読んだのを思い出していたんだ。エヴァもお話を聞いて泣いたことがあるだろう?」

「うん」

「だから僕は大丈夫」

「よかった。あのね、エヴァはセレがないていたら、くるしいの」

「え?」

「ここがギューって、くるしくなるの。だからセレがなかないように、エヴァがまもってあげる」

「……ありがとう。僕も君を守るよ」


 家族にはなれなかったけど。

 今までと変わらず、僕は僕なりの方法で、これからもずっと君たちを守っていくよ。




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