6話 再会
ある日珍しく、セレファス様に外のお仕事に付いてくるように言われた。
とある場所の結界石の交換を行うのだと。
そんな仕事はよくあることだし、いつもは私はお留守番でひたすら結界石を作っていたので、なぜ今日に限って一緒に行くことにしたのか疑問だった。
「君だけじゃなくて、エヴァも連れていきたいんだ。ノラも一緒に来てもらって、仕事中はみていてもらおう。とても景色のいいところだから、以前から君たちに見せたいと思っていたんだ」
「まあそうなんですか。楽しみです」
「おかあさま! すごいわ、お花いっぱい」
馬車を降りて驚いた。
そこにあったのは一面のお花畑。
5年前、お兄様に連れてきていただいた、あのお花畑だった。
記憶にある通り、5年前と変わらず色とりどりの花で埋め尽くされている。
先に馬車を降りたエヴァとノラが、嬉しそうに走っていった。
「すごいだろう? なぜここまで見事な花畑があるのか不思議なんだが、ここは穴場なんだ。『ゲーム』のイベントの場所なのかもしれないな」
懐かしさと、あの日の記憶が蘇ってきて涙が溢れてくる。
「ヴィヴィアン!? どうしたんだ」
「……すみません。この場所に思い出があって。あ! 良い思い出なんです。だから嬉しくて」
ハンカチで慌てて涙を拭きながら、悲しくて泣いているわけではないことを説明する。
「5年前にも、ここに連れてきてもらったことがあるんです。大切な人に」
「……ここに君を、連れてきた奴がいるのか。僕以外に」
それまで笑顔だったセレファス様が、なんだか複雑そうな表情をしている。
いけない、いけない。お仕事だったのに、いきなり5年前の思い出のことで泣き出したら、驚かれてしまうのも無理はない。
「あ、お仕事をしなくちゃですよね。私、結界の様子を見てきます!」
「ああ、そんなに急がなくても大丈夫。まあでも、早めに終わらせて、少しエヴァと遊んで帰ろう」
「ありがとうございます。エヴァ、本当に嬉しそうだわ!」
セレファス様と二人で、結界石のチェックをしていく。
この辺りは年数が経っているものが多いので、そろそろ取り換え時だ。全て新しい石に取り換えていく。
最初は誰もいなかったけれど、しばらくいると何人かお花畑を見に来る人もいることに気が付いた。
あまり知られていない穴場だけど、知っている人は知っているんだろう。
「この石で最後ですか?」
「ああ、そうだ。これでエヴァと遊べるな」
「本当にいいんですか?」
「もちろん。最初からそのつもりで来たから……」
「ヴィヴィアン!!」
その時、突然遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
久しぶりなのに、誰が呼んだのかすぐに気が付いてしまう。
胸がキューっと締め付けられて、その人と会えることに全身が喜んでいる。
――お兄様の声?
その方向へ振り向くのが怖い。
「……知り合いか? ヴィヴィアン」
警戒しているのか、少し緊張した様子のセレファス様に聞かれ、頷いた。
「お兄様です。血はつながっていないんですけど」
「ヴィヴィアン!! 会いたかった」
最初に聞こえた声は、離れた場所だったように思うのに、気が付いたらすぐそばまで来ていた。
恐る恐る振り向いたらそこには、前世の頃から焦がれた想い人がいる。
「お兄様……?」
聞き間違いだろうか。今、私に会いたかったと言った――?
「探したぞヴィヴィアン。君に謝りたくて。――いや、それよりも前に、一番大切なことを――」
「この人物は安全なんだな?」
セレファス様の確認に、何度も頷く。
「分かった。では僕はあちらでエヴァたちと遊んでいる。なにやら事情がありそうだから、ゆっくりと話すと良い」
「ありがとうございます、セレファス様」
そう言ってセレファス様は、私とお兄様を二人にしてくださった。




