本来ならそうなっていたはずの世界
『ヴィヴィアンが屋敷にいない? こんな時間にどこへ行ったんだ……』
『誰かに襲われただと!? 酷い……一体どこのどいつだ……殺してやる』
『シークレットパーティーに付いてきていた? なぜ……俺を追ってだと!?』
『俺はどうして、会場でヴィヴィアンに気がつかなかったんだ……』
『頼む……一口でもいい……なにか食べてくれ、ヴィヴィアン』
『ヴィヴィアンが……死んだ? …………栄養失調でふらついて階段から落ちただって? いや、違う。きっと自ら……』
『両親が怒るのも当然だ。俺なんかのせいで、あの天使のようなヴィヴィアンが死んでしまったのだから』
『殺されたくなければ二度と俺の前に姿を見せるなパーシバル!! あの時お前がシークレットパーティーに誘いさえしなければ!』
『なぜ俺は生きているんだ。俺なんかがこの世にいなければヴィヴィアンが幸せになれたのに……』
『ふざけるな! こんな俺に優しくするな! 俺に幸せになる資格なんかない! 世界一不幸になってもまだ足りない』
『どうせ誰かに奪われるくらいなら、ヴィヴィアンを俺の物にしておけばよかったんだ。そう、こんな風に――』
『うわあああああああああ――――――――――――――!! 誰か俺を……』
*****
「……!? ハアッ……ハアッ……」
あまりにも酷い夢を見て、飛び起きる。
シークレットパーティーに付いてきていたヴィヴィアンが誰かの毒牙にかかり、気を病んで死んでしまうという最低最悪な夢。
俺は養い親から罵倒され、逆にパーシバルには罵倒した。
絶望しながらもダラダラと生きながらえていた夢の中の俺は、自暴自棄になり、ちょっと優しくしてくれた女性を襲って処刑される。
なんなんだこの夢は。まるで体験したかのように、リアルだった。
目の前が真っ赤に染まる怒りも、心臓をえぐられるような底なしの絶望も、全て実際に『感じた』。
――大丈夫だ、実際にはヴィヴィアンは死んでない。行方をくらましただけだ。
シークレットパーティーなんてもう何か月も前の話だし、ヴィヴィアンは行かなかった。
ヴィヴィアンが消えてから、俺は結局養い家を出たが、両親とは友好関係が続いているし、パーシバルとは相変わらずの付き合いだ。
こんなものはただの夢。
この世界のどこかにヴィヴィアンが生きている。
その事実に、喜びを噛みしめる。
酷い夢だが見れてよかった。一つ気が付いたことがある。
「そうか――ヴィヴィアンを俺の物にしたらよかったのか」
だけど壊すんじゃない。
誰よりも幸せな籠を作って、俺の宝物を大切にしまいこんでおけばよかったんだ。




