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悪役義兄との子、育てます  作者: kae「王子が空気読まなすぎる」2巻発売中
第1章 彼女が姿を消したわけ

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1話 乙女ゲームの悪役お兄様

 一生に一度のチャンスだと思った。

 前世から恋焦がれていた想い人。絶対に結ばれるはずのないこの人に抱かれるたった一度のチャンス。


 お互いに服を脱ぎきる余裕すらなく始まったというのに、泣きたくなるくらい優しい手つき。

 肌の上をサラサラと撫でていく美しい銀髪。

 心の底から大好きな人の匂いに包まれて、体中の力が抜けていく。

 彼は、私が今まで何百回も、こうなることを夢見て思い描いていたことなんて、知る由もないだろう。

 いつもは皺一つなく完璧な彼のジャケットが乱雑に脱ぎすてられ、シャツのボタンはいつの間にか全て外されている。

 普段は隠れている逞しい体が見えて、クラクラしてしまう。

 幸福感に、涙が止まらない。

「だめ……」

 仮面に手を伸ばされて、一瞬だけ正気に引き戻される。

 これだけは外されるわけにはいかない。

 彼の背中に回していた手を、慌てて仮面の前に持ってきて押さえる。

 いくら彼が今ものすごく酔っていて、この部屋が薄い月明かりしかなくても。

仮面を取ればさすがに私の正体が誰なのかバレてしまう。

 そうしたらこの人は、この行為を止めてしまうだろう。

「……」

 あっさりと仮面を外すことを諦めた彼が、次は信じられないことにその唇を、私の唇に寄せた。

 許可を求めるように、触れる寸前に止まった唇に焦れて、最後の1ミリは自分から近づいた。

 幸せすぎて、死んじゃいそう。

 

 ――今日だけだから。一生に一度だけだから。

 嬉しい。好き。大好き。前世からずっと。

このままずっと永遠にこうしていたい――。



*****



 ――あ、ここ乙女ゲームの世界だ。

 私――ヴィヴィアン・ウォリアーズがいわゆる異世界転生をしていたことに気が付いたのは5歳の時。

 優しくて大好きなお兄様の態度が急に冷たくなった頃だった。

 それまでは本当に優しくて、本を読み聞かせてくれたり、一緒に散歩してくれたり、私が疲れたと言ったら背負って帰ったりしてくれていた。

 18歳になった今にして思えば、10歳の兄が5歳の妹をそれほど面倒みてくれるって、すごいことだったと思う。

 だけどお兄様は10歳の誕生日を境に急に一緒に遊んでくれなくなってしまった。

 勉強や習い事が忙しいからっておっしゃっていたけれど、そんなのはそれ以前から同じだったし。

 食事の席で話しかけても、一応返事はしてくれるけれど、以前みたいに沢山お話はしてくれなくなった。

 わけが分からなくなった私は泣いてごねた。私が泣いたら、お兄様がきっと慌てて、また優しいお兄様に戻ってくれると考えたから。

 でもいくら泣いてもわめいてもお兄様の態度は変わらない。

泣きつかれて興奮しすぎて高熱が出た私は、寝込んで目が覚めた時に気が付いたのだ。



 この世界が前世の私がやっていた、乙女ゲームの世界なのだと。

 そのゲームは、ヒロインは平民出身なのに魔法の才能を見出されて特別に魔法の訓練を受けられるというよくある設定のものだった。

学園に通って勉強を学んで、王宮へ通って剣技とダンスを習い、魔術師塔に通って魔法を習得して、知力・体力・魔力を上げていく。

 そして最後には一番好感度の高い攻略対象と結ばれ、仲間たちと協力して、世界を救う。

 攻略対象は①王宮にいる王子、②宰相令息、③学園の生徒会長、④優しく美形な公爵、⑤魔術師塔の天才魔術師――とバリエーションも豊かに選ぶことができる。特に一番人気は正統派ヒーローの王子様だった。

 そしてもう一人、攻略対象とは違うけれど――王宮で出会う、王子の優秀な側近がいた。

 銀髪で、アイスブルーの目元もクールなこの側近。話しかけたり好感度を上げることはできるのに、どんなに頑張ってもゲームでヒロインと結ばれることはない。

それどころかこの側近には話しかけてはいけない、冷たく避けるのがこのゲームの正解だと言われている。

 もしもヒロインがこの側近に優しくしてしまったが最後、執着してヤンデレ化し、思い余ってヒロインを襲い、彼は死刑になってしまうのだ。

 傷ついたヒロインもその後立ち直ることはできず、最後はお人形さんのように無感情なってしまうというバッドエンドルート確定の悪役キャラクター。

 最初そのことを知らなかった前世の私は、一生懸命この側近を攻略しようと頑張った。

 何度も彼の元へ通い、優しくし話しかけ、ヤンデレ化しても逃げずに付き合い続け、彼と幸せになるために努力した。

 だけど結末はいつも同じ。その時たまたま2番目に好感度の高いキャラとの仲を誤解され、嫉妬されて襲われる。

 どうしてこんなに格好良くて、優秀な人なのに、彼は幸せになれないんだろう。

 そう考えると切なくて苦しくて、何度も何度もゲームを最初からやり直したのを覚えている。

 今考えてみたら、その時すでに私は彼のことを好きになっていたんだろう。


 側近の名前はウィルフレッド・ウォリアーズ


 そう、それが今の私の兄なのだ。

 記憶が蘇って気が付いたけれど、私と兄は血がつながっていない。

 ゲームのウィルフレッドは物心つく前に両親を亡くし、母親の親友の家に養子として引き取られたという設定だった。

 成長して大人になったら育ててくれた家とは縁を切り、実力だけで王子の側近に取り立てられたはず。

 育ててくれた貴族の家には血の繋がらない妹がいるという設定もあったから間違いないだろう。

実際に私が大きくなってからお母様にも確認した。

 兄がゲームの悪役キャラクターだと気が付いた後も、態度が冷たくなった兄のことを、5歳の私ではどうすることもできなかった。

 いくら血がつながっていない家族だとしても、兄の10歳の誕生日まではあれほど仲良く幸せに暮らしていたのに。

一体どうして急に冷たくなってしまったのか。


『ウィルなんてだいきらい!』『どうしてそんなにつめたいの!』

 どうにもできない5歳の私はなんと、お兄様に喧嘩を吹っ掛けるようになってしまった。

 完全に関係がなくなるよりも、喧嘩してでもいいから関わっていたいというよくあるクソガキムーブ。

 当時の私に言いたい。

 好きな子をイジメる小学生じゃないんだから! って。……いや、5歳児だったんだけど。

だけど前世の大人の記憶もあったのに!!

 未熟だった過去の自分が恨めしい。

おかげで13年経った今では、兄妹仲が最悪として、社交界でも有名になってしまった。


 もしかして、ゲームで兄が闇落ちしたのって、私が原因なのだろうか。

 ……少なくとも、縁を切って家を出て行ってしまうのは、私のせいな気がする。



お読みいただきありがとうございます。

乙女ゲーム×悪役×義兄!

こちらは氷雨そら先生と木村ましゅろう先生企画の『シクベ企画』の作品です。好きな物を詰めこんで、楽しく書かせていただいています。

感想やいいね、ブクマに評価、すべて励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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