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5-1

 士官学校に入学して半年が過ぎ、夏も終わりに近づく。

 突然の不幸は、肌寒さを感じるようになった初秋の朝、門からやってきた。

 食事の準備をしていたとき、呼び鐘が激しく鳴った。

 玄関に急ぐと、食堂に向かう途中だったのだろう、辺境伯が応対に出ていた。


 扉の先にいたのは、見たことのない茶色い軍服を着た三人の兵士と、そのうしろに、擦り切れたコートを身にまとった、目つきの悪い商人風の男が一人。

「アンナリーズ・テューダーはいるか」

 誰もが当主より若かったにもかかわらず、先頭にいた肩の星の数が一番多い兵士は、敬意を表すどころか、横柄な口を利いた。

「憲兵の少尉がわざわざこんなところまで、いったい何の用だ」

 当主が特に表情を変えずに答えたせいで、どの程度の危機なのかが計れず、逆に焦燥感が増す。

 階級で呼ばれた男は、うしろの部下から一枚の紙を受け取り、辺境伯に差し出した。


「国家転覆に関わる重要事項の秘匿の罪により出頭せよ、とは、いったい――」

「詳しくは教えられん。かばうと、エステルハージ卿にも罪が及ぶ可能性がある」

 辺境伯は、わずかの時間思案したあと振り返り、その様子を瞬きもせずに見ていたレーヴと目が合った。

「呼んできてくれ」

 胸騒ぎしかしない。


 ダイニングへ戻ると、彼女は優雅に食後のお茶を飲んでいた。

「こんな時間からお客様?」

 動揺させないようにしたかったが、方法がわからない。見たままの状況を話すと、さっと表情を曇らせた。

「憲兵って、おじさまはそう言ったの?」

 確か、戦場で戦うというよりは、犯罪者を取り締まることに重点を置いた組織だったはずだ。

 だが、アンナリーズがそんな相手に目を付けられる人間でないことは明らかで、つまりは、訳がまったくわからない状況だった。


 彼女とともに玄関に向かうと、少尉はうしろにいたコートの男に振り返った。

「この女か?」

「ええ、間違いないです。金貨六枚で買い取りました」

 金貨六枚だって?!

 それはつまり、マスターオークの外皮の売り値だ。

 そう考えたとき、すでに上官は二人の部下に指示を出していた。

 彼らは、アンナリーズのそばに立ったかと思うと、いきなりうしろ手に縛り始め、それを見て血の気が引いた。

 あの行為が違法だったのだろうか。彼女が、村の素材屋に売らなかったのはどうしてだっけ。


 そのときのやり取りを思い出そうとするが、ただの学友よりは、はるかに近しい人間が、すぐ目の前で、そんな扱いを受けては、さすがに冷静ではいられない。

 頭が混乱していたせいで、商人の男が、レーヴに鋭い視線を送っていることに気づかなかった。

 彼は少尉に向かってこう言った。

「軍人さん。そういえば、そこのガキも一緒にいた気がします」

 アンナリーズと二人、軍用の馬車に乗せられたのは、それから間もなくのことだ。

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