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3-4

 結局、試験も公開問題もすべて正解だった。

 そのことが、学校中はおろか、辺境伯の耳にまで伝わったことを知ったのは、それから二日後のことだ。

 夕食の配膳をしていたときだった。

 彼の前に皿を出したその手を、いきなり掴まれた。

「お前。計算の試験で教師よりも早く答えを出したそうだな」

「よくご存知で」

 彼の隣に座っていたアンナリーズから、舌打ちが聞こえた。どうやら彼女は、数字全般が苦手のようだ。ビクトル情報では、毎回追試を受けているらしい。

「体調などに関係なく、常にその力は発揮できるのか?」

「だと思います」

「食事のあと、仕事場に来るように」


 片付けを終えたあと、屋敷にきて初めて三階への階段を上った。

 案内された部屋は書斎、というより執務室のようだ。壁の書棚はすべて本と書類で埋め尽くされていて、それとは別に、三つある長机の上に紙が散乱している。

 彼はその中央付近に立っていたが、レーヴを見咎めると、紙を二枚手にして、近づいてきた。

「農作物の収穫量の記録だ。徴税は、生産量に応じて決めている。こちらは、行商人の売上報告だ。一割を税として集めている」

 それら以外にも、道の整備や、治水にかかる費用の見積もりなど、どうやら、領地を治めることの大半の業務は、金、すなわち数字との戦いようだ。

「屋敷の雑務はもういいから、明日から私の仕事を手伝いなさい」

「一点、お願いがあるのですが」

「まさか断るつもりか」

「いえ、そうではなく。ヘンドリカさん一人では、業務が回りません。これまでの仕事はそのままに、当主様のお手伝いをさせていただくことはできませんか?」

 そう言うと、彼は小さく眉を上げた。

「お前がそれで良ければ、もちろん構わんが」

 登下校で、走る時間は確保できている。就寝前の訓練の時間を削れば、どうにかなるだろう。

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