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PONZ! ~ポール・マッカートニー大好きっ子が、路上ライブのシンガー、内気な天才ギタリスト、アクセ好きドラマーとバンドを組んだ話~  作者: 文月(あやつき)
第2部

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おまけ企画「カバー曲の話」

 第2部をお読みいただき、ありがとうございました。皆さんいかがでしたか?

 フレイミングパイの四人、そしてブラックシトラスの四人、そして、さとう愛未が奏でた名曲の数々、心の中で響いていただけたでしょうか。彼女たちが魂を込めて演奏したあの瞬間瞬間が、読者の皆さんにも伝わっていたなら、これ以上の喜びはありません。


 今回は、物語を彩った珠玉のカバー曲たちを、込められた想いとともにご紹介します。

 音楽を知ると、きっとあの場面がより鮮明に、より愛おしく蘇ってくることでしょう。


■ポール・マッカートニー「Flaming Pie」

 カバー曲の始まりはこちら。ポンズたちの代名詞とも言えるこの楽曲です。第1部で登場しましたが覚えていますか?


 インディーズフェスで初めて披露したこの曲は、四人の息がぴったりと合った、まさに「フレイミングパイ」らしい一曲です。

 1997年五月に発表されたこの楽曲は、ポール・マッカートニーの同名アルバムに収められています。ビートルズ・アンソロジー制作後に生まれただけあって、随所にビートルズらしさが散りばめられています。リンゴ・スターのドラムや歌声も聞こえる、まさにビートルズ愛に満ちた一曲です。


 ポールらしい軽快なロックンロールでありながら、その構成は驚くほど洗練されています。特に途中とアウトロのピアノフレーズは楽しく、ポンズたちが思わずステップを踏んでしまったのも納得でしょう。


 そして、この曲のタイトルの由来—「燃えるパイに乗った男からビートルズという名前のヒントをもらった」というジョン・レノンの内輪ネタ。改めて第1部を読み返すと、「フレイミングパイ」と名付けたときの楽しい様子が伝わります。


■羊文学「more than words」

 シー、マキ、レアが3ピースで演奏したこの楽曲。マキとレアが再び一緒に演奏したB.F祭でのあの場面を思い出すと、胸が熱くなります。


 2023年九月にリリースされた、アニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマの一つ。オルタナティブロックに織り込まれた文学的な歌詞が、もしもシーがソロを続けていたなら、きっとこんな音楽を奏でていただろう…そんな「もう一つの可能性」を見事に表現された楽曲でしたので、迷わず選びました。


 物語では、インディーズデビューで巣立っていくブラックシトラスのマキが、シーのもう一つの未来(可能性)を見たくて選んだのがこの曲。それがきっかけで、シーは図書館に通うようになり、押し殺していた本音を愛未にぶつけるようになります。そして自分の弱さと向き合い、ポンズたちとともにバンドで歩む決意を新たにするのです。


 一つの楽曲が、一人の少女の心をこれほどまでに揺り動かす。音楽の持つ力を改めて感じさせてくれる場面でした。


■イーグルス「Hotel California」

 ロック史に燦然と輝く名曲中の名曲。この楽曲でのコラボレーションは、まさに圧巻でした。


 1976年十二月発表のこの楽曲の魅力は、何と言ってもドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのツインリードギター。ロック史上最高とも称されるギターソロは、オープニングのイントロから既に美しく、様々な解釈がなされた歌詞とドン・ヘンリーのハスキーなボーカルが絶妙に絡み合います。


 ブラックシトラスのリードギターナツがカグラとの演奏を懇願して実現したこのコラボ。ユズ、ナツ、ミオ、ポンズ、カグラの五人が奏でるあの演奏で、ポンズは初めてブラックシトラスの真の実力を痛感することになります。


 ただ楽しく演奏していた自分と、シーやカグラのような真の実力者たち。このコラボ企画は、ポンズに大きな不安を抱かせることになりました。でも、その不安こそが彼女をさらに成長させていくのです。そんな心の動きを、もう一度味わってみてください。


■伊勢正三「俺たちの詩」

 愛未の魂の叫び。ピアノの弾き語りで歌われたこの楽曲は、四人の少女たちの心を揺さぶりました。


 2019年二月、伊勢正三16年ぶりのオリジナルアルバム「Re-born」に収録されたこの楽曲。叙情的なメロディーと温かみのあるアコースティックサウンドが、青春時代の葛藤と、それに抗う不屈の精神を歌い上げます。人生の分岐点に立つ者への応援歌として、これ以上ふさわしい楽曲はないでしょう。


 物語では、愛未のモデルとなったシンガーソングライターがカバーしたものが元になっています。夢破れた愛未が、すべての思いと愛情をこの一曲に込めて歌った場面。彼女が青春を捧げた音楽の道を、今度はフレイミングパイの四人とともに歩んでいく…そんな決意の歌でもありました。愛未の涙と、それを見守り泣きじゃくる四人の表情を思い出すと、今でも胸が熱くなります。


■ビートルズ「You Can't Do That」「Let It Be」「Hey Jude」

 年越しセッションライブで披露された、永遠の名曲たち。ポンズの祖父たちが見守る中での演奏は、微笑ましい瞬間でした。


「You Can't Do That」—1964年「Can't Buy Me Love」のB面として発表されたこの楽曲は、嫉妬心剥き出しの荒々しいナンバー。初期のアイドル的なビートルズからは想像できないほど尖った一曲で、ジョン・レノンが単独で書き上げ、リードギターも自ら弾いています。


 愛未へのシーの誤解から始まったバンドの些細な危機。シーへの仕返しにポンズが選んだのが、この攻撃的な楽曲でした。シーの荒々しいカッティングが生かされたカバーは、ポンズとシーの二人の関係性を象徴するような演奏になりました。この辺から、音楽家として完璧のように見えたシーの脆さが伝わり、どんどん身近な存在になっていったのではないでしょうか。


「Let It Be」—1970年、偉大なバンドの終焉を見守るように発表されたため解散の象徴とされがちですが、それ以上に世代を超えて人々に希望を与え続ける、真に普遍的な名曲です。ポール・マッカートニーが夢の中で聞いた母の言葉「なすがままに、あるがままに」がそのまま歌詞になったこの楽曲で、カグラが母親から教わったピアノに挑戦し、シーもギターソロに挑みました。物語の中で、この時の彼女たちの演奏を学園祭レベルと表現しました。これは演奏レベルが低いのではなくて、演奏にだけ気持ちが向けられて、お客さんを楽しませている余裕がないという意味です。近頃の若い人たちの演奏はレベルが高いですよ。


「Hey Jude」—ビートルズが設立した「アップル・レコード」最初のシングル。希望に満ちた歌詞、七分を超える当時としては異例の長さ、そして歴史に残るアウトロ。名曲とはこういうものをいうのでしょうね。


 この楽曲でポンズは「いつまでも歌っていたい」という感情に目覚めます。そして物語終盤、自作曲「See You」のアウトロでその想いを実現し、フィナーレでファンたちとの大合唱につなげていくのです。その時の会場の一体感が伝わっていればいいですね。


■音楽と物語、そして皆さんへ

 いかがでしたか?気になった楽曲があれば、ぜひ実際に聴いてみてください。きっと、あの場面がより鮮明に、より感動的に蘇ってくるはずです。


 小説は文字だけの世界。音が出ることはありません。でも私がこの物語を紡いでいるとき、頭の中では常に音楽が流れています。ポンズの躍動するベースライン、シーの情熱的なボーカル、カグラの繊細で美しいギター、レアの力強く確実なドラム。四人の「架空の音楽」を、私は確かに聞いているのです。


 音を表現するとき、言葉に詰まるとAIの力も借ります。そして自分のイメージと言葉のイメージが合致したとき、そのフレーズを物語に織り込んでいきます。彼女たちの架空の楽曲も、私自身がギターを手に取り、「こんな感じかな?」と知っているコードを並べて弾きながら想像を膨らませてたりもします。


 第3部では、フレイミングパイは松山を飛び出し、県外のライブハウスへの出演、そしてラジオ出演も果たしていきます。

 そんな第3部は、ただいま絶賛執筆中です。ポンズ、シー、カグラ、レアの四人が「早く書いて!」と、後ろから急かしてきますので頑張って書いています。そして、さらに心を込めて物語を紡いでまいります。

 第3部はいろいろな出会いがあります。どうぞお楽しみに。


 ここまで「PONZ!」をお読みいただいた読者の皆さん、本当にありがとうございました。改めて感謝申し上げます。

 音楽とともに歩む彼女たちの物語が、皆さんの心に少しでも響いていたなら、作者として最高の幸せです。


 文月あやつき

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