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PONZ! ~ポール・マッカートニー大好きっ子が、路上ライブのシンガー、内気な天才ギタリスト、アクセ好きドラマーとバンドを組んだ話~  作者: 文月(あやつき)
第2部

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EP.23 新年の願い事

 新年を迎え、フレイミングパイは四人で初詣に出かけることになった。

 参拝先はシーがよく足を運ぶという神社に決まった。

 その神社には芸事・伎芸上達の神様と言われるアメノウズメノミコトが祀られている。

 アマテラスオオミカミが天の岩屋戸にお隠れになったとき、その岩屋戸の前で神楽を舞い、神々を笑わせたのがこのアメノウズメノミコトである。

 音楽で人々を魅了するフレイミングパイには、これ以上ないほどうってつけの神社といえよう。

 *

 四人は最寄りの駅で待ち合わせをした。

 一番に到着したポンズは、厚手のマフラーに首を深く埋め、いつもより格段に車の少ない静寂な通りを見つめていた。

 年明けの松山の街は、まるで深い眠りについているかのような穏やかさに包まれている。

 普段は賑やかな道路も、今日は時折通り過ぎる車の音が妙に響いて聞こえる。

 吐く息が白く、空気が凛と冷たい。

 道路の向こうには二十四時間営業のコンビニがぽつんと明かりを灯している。

 あそこで暖を取るのもいいかもしれないと考えていたその時、コンビニの少し向こうに聳え立つテレビ局の電波塔が目に入った。確かその向こうにはFM系列のラジオ局もあるはずだ。

 *

「そういやサトちゃんはラジオ番組への出演も視野に入れてる言うてたな。うちらの音楽を、ライブハウスや、SNSだけやなく、ラジオやテレビの電波にも乗せて広げていくことってできるやろか」

 ポンズの心に、新年への期待と共に新たな夢が芽生える。

 自分たちの音楽が、どこまで遠くの人に届くのだろうか。

 そんな物思いにふけっていたら、

「ポンズ!」

 と、後ろからどんと体当たりをされた。

 振り向くと、息を白く吐きながらレアが笑いながら立っている。

 *

「痛いなあレアちゃん。おはよう。正月まとめて休み取れてよかったな」

「まあ冬休みの学生さんが正月の時給アップ目当てでシフトに入ったし、年末頑張ったから店長の計らいってやつよ。それにしても初詣なんて、うち行った記憶ないな」

 レアが苦笑いを浮かべながら答える。

「うちは正月くらいは行くかな。あと二月のお椿さんとか。今日のとこは芸事の神様やから、シーはよう行ってたんやって」

「ふうん、シー意外と古風なんやな」

「お兄さんも来たらええのにな」

 ポンズが何気なく言うと、

「なんでアニキの話になんの?」

 レアが慌てたように反応する。

「レアちゃんにお兄さんおるなんて驚いたわ。しかも芸人さん志望なんやって? 今日行く神社ちょうどええやんか、教えてあげたらええのに」

「あー、もう……」

 レアが照れたように頭を掻く。

 *

 そのうち、シーとカグラも息を弾ませながら合流し、四人は神社の方へ歩き始める。

 年明けの澄んだ空気が頬を刺し、足音だけが静寂を破っている。

「今日行くのは雄郡(ゆうぐん)神社、芸事の神様のことは話したよね。路上時代からよく行ってたんよ。今年はみんなでフレイミングパイのことをお願いしよな」

 シーが案内役を買って出ながら、四人を先導していく。

「レア、お兄さんも来たらよかったのにな」

「もう、ポンズとおんなじこと言うなや」

 レアはシーに向かってそう言うと、苦笑いを浮かべる。

 四人は笑い声を響かせながら、新年の清々しい空気の中を歩いて行った。

 *

 神社に到着すると、境内には既に多くの参拝者が静かに列を作っていた。

「へえ~正岡子規(まさおかしき)もお参りしてたんやな」

 ポンズが境内にある石碑を見ながら感心している。

 正岡子規は明治時代に活躍した松山出身の俳人である。

 野球好きでもよく知られ、二〇〇二年には野球殿堂入りを果たしている。

 カグラが夏目漱石(なつめそうせき)との交流や、「坂の上の雲」の秋山兄弟の話を詳しく説明してくれたが、三人はちんぷんかんぷんだった。

「カグラちゃん、ほんま物知りやなあ」

 ポンズが感心して言うと、カグラが照れくさそうに微笑む。

 *

 シーに教わりながら、四人は手水舎で身を清める。

 冷たい水が手を刺すが、心が引き締まる思いがした。

 拝殿に向かう石畳を一歩一歩踏みしめながら、それぞれが今年への想いを胸に秘めている。

 シャランシャランと、本坪鈴(ほんつぼすず)をみんなで鳴らし、お賽銭を投げ、二拝二拍手一拝をして、四人はそれぞれの思いを込めてお参りを済ませると、すうっと風が吹き抜けた。

 *

 ポンズはさっき見た電波塔のことを思い出しながら、自分たちの音楽が電波に乗って、もっと多くの人に届きますようにとお願いをしていた。

 シーは、愛未や仲間たちとの絆がずっと続きますように、そして自分の音楽がもっと成長できますようにと祈った。

 カグラは、新しい挑戦を恐れずに続けられますように、みんなの役に立てますようにと手を合わせた。

 レアは、このメンバーでずっと音楽を続けられますように、そしてついでに兄のことも見守っていただけますようにと心の中で呟いた。

 *

 そして四人で拳を合わせ、

「フレイミングパイ、今年もいっくで~」

「おー」

 と少し遠慮気味に掛け声を上げた。

 四人とも、まるで生まれ変わったように晴れやかで希望に満ちた表情になった。四人は一緒に鳥居をくぐると、振り返って一緒にお辞儀した。

 新年の陽光が四人の顔を優しく照らしている。

「お参り、ええもんやな。やっぱりうちら日本人なんやな。ところでサトちゃんはいつ帰ってくるんやろな」

 ポンズが気持ちよさそうに伸びをしながら、シーに尋ねる。

「うん、三日には帰ってくるらしいよ。ほんで、すぐにいい話があるよ~って、あと、だから練習はしておけ~やって」

 シーがにこやかに答えると、四人はまた明るい笑い声を響かせた。

 *

 そして一月三日、愛未が戻ると言うことで、年始休業中の「ROCK STEADY」に四人は集まっていた。

 ライブハウスは静寂に包まれているが、今日は特別な緊張感が漂っている。

「みんなあけましておめでとう! 久しぶり!」

 愛未は、年末の仕事の忙しさによる疲れを微塵も見せず、エネルギッシュに入ってきた。

 今年にかける意気込みが身体全体から溢れ出ており、その熱意が四人にもひしひしと伝わってくる。

 *

「お客さんもいるの」

 と愛未が言うと、黒髪をきちっとセットした、清潔感のあるすらっとした青年が入ってきて丁寧に挨拶を始めた。

「みなさん、お久しぶりです」

 メンバーは全員きょとんとしている。

 顔をよく見ると確かにどこかで見た覚えがある。

 そしてレアが最初に気がついた。

「あ、ヤマケンさんや! あんたらも会ったことあんで」

 と、三人に説明するが、ポンズ、シー、カグラはまだピンときていない。

「無理もないかな。前は金髪だったから」

 青年が苦笑いを浮かべると、ポンズが手を叩いて気がついた。

「あ、レアちゃんが助っ人に入ってたバンドのリーダー!」

 *

 シーがギターを買いに行った楽器店で偶然出会い、彼らの解散ライブにゲスト出演することになり、レアがフレイミングパイに加入するきっかけを作ってくれた人物で、運命的な出会いを演出してくれた恩人でもあった。

「ああ~その節はどうも」

 三人は申し訳なさそうに慌てて挨拶を交わした。

「山田健太と申します。今は、マツヤンプロデュースという地域活性化の活動をしてるんよ」

 山田が改めて自己紹介をする。

「マツヤン?」

 シーが首を傾げる。

「松山のヤンキー?」

 ポンズが無邪気に推測すると、

「ちげーよ!」

 山田が思わず普段の口調をあらわにしてしまった。

 慌てて咳払いをして、説明を続ける。

 *

「松山のヤングたちが地域活性化のために、松山の魅力を発掘し、発信するプロジェクトで、高校生以上のメンバーで構成されとってね、ボクはそのメンバーのリーダーをやってるんよ」

「ヤングって……?」

 レアがヤングという言葉に反応し、吹き出しそうになっている。

「レア!」

 シーが慌てて肘打ちをする。

「まあ、バンド解散後に応募したら当たってね。いろいろ企業の方たちともお話ができるし、就活にもいいかなあなんて。これまでメンバーでアイデアを出して、商品開発やイベント企画とかやってきたんよ」

 山田の話に、四人は興味深そうに聞き入っている。

「へえ素敵ですね。そんなの全然知らなかった」

 シーが純粋に感心して言った。

 *

 そして山田に続いて、愛未が期待に満ちた表情で説明を続ける。

「そこで、このマツヤンが、二月に今年度の活動の集大成として、大街道でステージを組んでイベントをするの。主に、活動の報告を市民の方に聞いてもらうイベントではあるんだけど……」

「はい、そのイベントにね、フレイミングパイに出演してほしいんです! もちろん演奏で!」

 山田は両手を広げて、おおらかな笑顔で宣言した。

 メンバーたちの目が一斉にキラキラと輝き始める。

「実は、このマツヤンメンバーの中には、去年の松山インディーズフェスや、B.F祭に行った子たちが結構おってね。高校生の中には真白さんが路上時代からの追っかけもおるんよ」

 *

「みんな、これはただメンバーの皆さんがフレイミングパイが好きだから決まったんじゃないよ。『ROCK STEADY』のためにやってきたこれまでの活動のことが、商工会や市のまちづくり推進課まで届いて評価されたからなんだよ」

 愛未の言葉に、四人の胸が熱くなる。

「そう! ボクらが君たちを推薦したときは、関係者たちはまるで君たちを知らなかったけど、あのB.F祭の成功で大街道商店街や市役所まで評判が届いてね、昨年末、若い市の職員の方たちや、佐藤さんが中心に動いてくださったんよ」

 昨年末愛未が、自身の退職と並行してバタバタしていた理由がようやく明らかになった。

 四人は非常に嬉しく光栄に思ったが、そんな大切な時期に、シーの誤解からバンドの緊急事態を引き起こし、挙句の果てに全員で大号泣していたのかと思うと恥ずかしくなった。

 シーを筆頭に四人は顔を真っ赤にして引きつっていた。

 *

 フレイミングパイは、二月に行われるイベント「マツヤンドリームセッション」出演を快諾し、今度行われる打ち合わせの約束をして山田と別れた。

「これまでやってきたことがこんなふうに繋がっていくんやなあ」

 ポンズがしみじみと感慨深げに呟いた。

「私が目指していること、少しは実感してくれたかな? この輪をどんどん広げていく、この松山からね」

 愛未の言葉に、四人は深く頷いた。

 新年早々、新たな扉が開かれた瞬間だった。

 年明けの静寂な松山の街に、希望の音色が響き始めている。

 *

 一月某日、四人はマツヤンプロデュースの定例ミーティングが行われる市の教育研修施設に招かれた。

 研修施設には高校生から大学生まで約七十名の学生メンバーがフレイミングパイを出迎えた。

「きゃー! シーちゃーん!」

「ポンズちゃーん!」

「カグラちゃーん!」

「レアさまー!」

 あまりの歓迎ぶりにたじろぐ四人に、山田が歩み寄って挨拶した。

「ようこそ、マツヤンへ」

 *

「あ、ほんまやステージから見たことある人、いっぱいおる」

 ポンズが言うと、シーがうなずきながら路上時代からのファンを見つけて、

「あ、いつもありがとう」

 と手を振ると、また歓声が上がった。

 そのシーのファンが一人近づいてきて、

「シーちゃん! 私がイベント企画の班長やっている美咲です。二月のイベントに出てくれてありがとうございます!」

 美咲は高校生で、ハキハキとしていて明るい女の子である。

 一年前から友達を引き連れて、シーの路上ライブに顔を出してくれていた。

 容姿端麗でいつもキラキラしているのでシーの方が逆にいつも照れているほどだ。

 そんな美咲は今回のイベントの企画書や運営についてまとめた資料を四人に手渡した。

 *

 マツヤンメンバーに囲まれるフレイミングパイメンバーの横では、愛未ほどの年齢の女性が愛未に近寄り、名刺交換を始める。

「初めまして、FMマツヤマ放送局の近藤エリカです。B.F祭ではうちの局の者がご挨拶していたと思います。今回このイベントの司会進行をさせていただきます」

「初めまして、フレイミングパイのマネージャーの佐藤です。よろしくお願いします。マツヤマ放送局はFMラジオでマツヤンさんと情報番組をやってらっしゃるんですよね」

 近藤は愛未に耳打ちするように言った。

「ええ、いずれは……」

「本当ですか! もちろんです!」

 *

 二人をにこやかに見ていた山田は、

「あと一人来るんですが、時間も来てるし、先にミーティングを始めちゃいましょうか」

 と提案し、みんなが着席しようとしたところ、一人の青年が慌てて入ってきた。

「遅れてすいません! 電車一本乗り遅れちゃって……」

 ポンズ、シー、カグラはすぐにその人物について気がついた。

 そしてレアが、

「げ! アニキ! なんでここに!?」

「やあ、レア! フレイミングパイ、出てくれるんだろ。うれしーよ!」

 山田も驚いた。

「え? ショータさん、宝来さんのお兄さんなの?」

「うん、俺本名、宝来翔太(ほうらいしょうた)

 *

 レアの兄、宝来翔太は普段は市内の劇場やショーパブで働きながら、ショータという名で、演劇やお笑いショーに出演したりしていた。

 周りもざわつき始めた。

「え~? 私たち知らない間にレアさまのお兄様と活動していたの~?」

 レアのファンも歓声を上げている。

「帰っていいすか」

「いやいやいや」

 レアが言うのを、三人はなだめた。

 愛未は名刺をショータに渡し、挨拶をしている。

「宝来さん、お兄さんは今回、近藤さんとともにイベントの司会進行という重要な役割があるんよ」

 山田が言うと、レアは非常にやりにくそうな顔をしているが、ポンズたちは

「こりゃ初詣のご利益かもしれんで」

「なんでやねん」

 と笑っていた。

 *

 ミーティングが始まると、さっきまでの和やかな空気とは一転、高校生も大学生も、皆それぞれ自分の担当部署からイベントの企画運営の進捗について真剣な表情で報告していく。

 山田やショータは、その都度、報告の内容を深掘りしながら詳細を詰めていく。

 レアは自分の知らない兄の一面を見ながら、感心していた。

 レアも自分勝手に好きなことをやるだけでは、結局何も生まれないことを、バンド活動を通してわかるようになっていた。

 兄もまた、舞台の上で好きな演劇やお笑いをやるだけではなく、一つのイベントを成功させるために、多くの仲間たちと交流し、連携して作り上げている。

 レアは少し気を引き締め、協議に耳を傾けた。

 *

 運営協議がフレイミングパイの演奏部分に差し掛かると、愛未はメンバーの控室や機材搬入を中心にやり取りをする。

 すると愛未に続いて、レアがパフォーマンスをする上で、舞台の強度や電源の確保、出力可能な音量やモニターの配置について、メンバーを代表して発言をし確認を求めた。

 愛未や他のメンバーは驚いたような様子だった。

「何?」

「すごいなレアちゃん、ダテにいろんなとこで叩いてへんな~」

 ポンズらが感心して言うと、照れた様子でレアは言った。

「そらまあ……アニキに負けてられへんやろ」

 *

 ミーティングが終わると、フレイミングパイはマツヤンメンバーに再び囲まれた。

 イベント担当の美咲は、

「シーちゃん! 学校の友達たくさん誘うから!」

「あ、ありがとう……」

 照れながらシーが返答すると、

「わたしも誘う!」

「俺も」

「うちも」

 と、高校生たちが口々に言ってくれた。

 山田は冷静に、

「アーケード街が大変なことになるよ」

 と言って、みんなで笑い合った。

 そして、

「こりゃ大ごと太山寺(たいさんじ)ってね~」

 とショータがローカルな駄洒落で見事にスベっていた。

 *

 二月某日、マツヤンドリームセッションの日がやってきた。

 ポンズたちフレイミングパイは、大街道のアーケード街に設置されたステージ近くの建物で待機していた。

 窓越しに、レアの兄ショータとマツヤマ放送局の近藤の息の合ったMCが聞こえてくる。

 ステージでは、マツヤンのメンバーたちと市内の企業関係者が共同開発した商品の紹介をしている。

 そのアイデアを出した若いマツヤンのメンバーたちの笑顔がはじけている。

 集まった観客たちも温かい拍手を送り、お試し用の商品を手に取って楽しんでいる。

 それを手際よく回していくショータをレアは見ていた。

 レアはイベントの前に兄妹で話したことを思い出した。

 *

「レア、マツヤンのイベントよろしくな。ステージの補強もしっかり見直されたから、バッチリドラム叩けるで」

「……あ、ああ、ありがと」

「いい仲間に恵まれたな。それに、あんなに若い子たちに人気があるなんて知らんかったで」

「アニキだって、あんなにいろんな方面で顔がきくの知らんかったよ」

「舞台に立つってのが好きなんよ。レア、ちょっとこれからのこと話していいか?」

「何?」

「俺、お前が高校行かずに音楽の道を選んだ時、お前がその道で行けると確信したら大阪行こうと思ってたんや」

 レアはなんとなく予感はしていたが、お互いあまり干渉はしていなかったし、レアはこれまで自分のことしか考えていなかった。

 *

「でもな、お前んとこの佐藤さんと話していたら、こっちでもできることがぎょうさんあるって知ってな、しばらくは俺松山で頑張ってみるよ。だからお前はお前の道をいけよ」

「言われんでもそのつもりやけど」

 レアは照れ隠しで言ったが、内心自分のために兄の夢を犠牲にしていないか心配もしていたので、少し安堵していた。

「ま、うちは大丈夫やから、アニキも好きにやりいや」

 *

「レアちゃん行くで!」

 ポンズがレアに声をかけていた。

 どうやら出演の時間がきたみたいだ。

「おっしゃ! 行こか!」

 フレイミングパイのメンバーは意気揚々とステージへ向かった。

 *

 ステージに立つと、観客たちの歓声が上がった。

「きゃー! シーちゃーん」

「レアさまー」

「ポンズちゃーん」

「カグラちゃーん」

 マツヤンメンバーが椅子に座る一般客の後方から、大きなエールを送っている。

 マツヤンメンバーが声をかけた若者たちも随分いる。

 高校生も多くいて、制服がバラバラなことから、いろんな学校から来ているようだ。

 *

「今、松山で多くの若者たちの支持を得ている全員十代のガールズバンド、フレイミングパイのみなさんでーす!」

 マツヤマ放送局の近藤が紹介すると、

「今回、マツヤンメンバーもファンの子らが多いんですよ! 見てくださいあの後ろの若者たちを! みんな楽しんでるー?」

 ショータが声をかける。

「イエーーーッ!!」

 アーケード街に若者たちの声が響く。

 *

「それでは、自己紹介してもらいましょう」

「ベースのポンズでーす!」

「ボーカル、ギターのシーです」

「ギ、ギターのカグラです……」

「ドラムのレアちゃんだよ~」

「お前、そういうキャラちゃうやろ!」

「なんや~悪いか!?」

「はいはい兄妹ゲンカはやめてください」

 宝来兄妹のやりとりがみんなの爆笑を誘い、和やかにトークを終え、フレイミングパイは演奏の準備についた。

 *

 そして、ライブが始まると迫力のある音が、アーケード街を飲み込んでいった。

 演奏の大きな音に、一般客層は少したじろいでいたが、後方の若者たちの熱狂的な声援もまた、空間をうねり始める。

 そして歩行者たちもその熱狂ぶりに足を止め、フレイミングパイの演奏に耳を傾き始める。

 シーの歌声、ポンズのハーモニー、カグラのギター、そしてレアの力強いドラムが、ライブを見ている者たちを揺り動かし始める。

 ショータは座席に座っている一般客に起立を促し、一緒に手拍子しながら跳ね始め、そして後方のマツヤンメンバーや若者をステージの最前まで招き入れ、ライブステージ前は彼らでアリーナ席のように埋め尽くされた。

 ライブはフレイミングパイとマツヤンメンバーで盛大に盛り上がり、エンディングを迎えた。

 *

「今年はすごい盛り上がりでしたね~。さてマツヤンメンバーの出演するラジオ番組『カモンマツヤン』では、このライブの模様を放送します」

「うお~! 楽しみですね! 近藤さん、今回ゲストもあるそうですね……」

「はい! ゲストにはフレイミングパイの皆さんをお迎えしまーす!」

 なんと、フレイミングパイ初のラジオ出演が決定!

 しかもまだ音源のない彼女らにとっても意外だったのは、このライブを放送するということだ。

「うおおお! 本当ですか!」

 ポンズは大絶叫、初詣で願ったことが早くも叶ってしまい大興奮、他のメンバーたちも笑顔で喜んでいた。

 *

 愛未はステージを見ながら、満足げに眺めていた。

 するとスマホが着信で震えているのに気がついた。

 愛未は少しステージから離れ、スマホの画面を確かめる。

 ライブハウス「ROCK STEADY」のスタッフだった。

 電話に出て、彼の話を聞いた愛未の表情が変わった。

「え? オーナーが?」

 *

 ステージでは出演したフレイミングパイを二人のMCで挟み、その周りをマツヤンメンバーたちが取り囲んだ。

 そして、みんなはじける笑顔で拳を上げ、記念撮影のシャッターが切られた。

 イベントは大成功に終わり、フレイミングパイはまたひとつ、輪を広げることができた。

登場人物

フレイミングパイ

光月寛奈みつき かんな16歳(高1) ポンズ Vo.&Ba.

真白詩音ましろ しおん15歳 シー Vo. &Gt.

神楽坂奏多かぐらざか かなた16歳(高1) カグラ Gt.

宝来鈴愛ほうらい れあ17歳 レア Dr.

マネージャー

・さとう愛未あいみ

ROCK STEADYオーナー

岩田恒太郎いわたこうたろう

ポンズの祖父

光月邦彦みつきくにひこ

レアの兄

宝来翔太ほうらいしょうた ショータ

マツヤンメンバーのリーダー

山田健太やまだけんた ヤマケン

シーの追っかけ

美咲みさき

マツヤマ放送局のアナウンサー

・近藤エリカ

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