おまけ企画「楽器の話」
「PONZ!~ポール・マッカートニー大好きっ子が、路上ライブのシンガー、内気な天才ギタリスト、アクセ好きドラマーを口説いてバンドを組んだ話~」をお読みいただきありがとうございます。
今回は、フレイミングパイのメンバー、ポンズ、シー、カグラ、レアの楽器を紹介するおまけ企画です。 結構マニアックな話です。作者の自己満足となっておりますので、ご注意、ご容赦ください。
この物語では、ポンズ以外のメンバーは、国産メーカーのものを使用しています。 ギブソンだとかフェンダーだとかポール・リード・スミスではなく、国内にはさまざまな素晴らしい楽器メーカーがあることを紹介したかったのです。
では、行きましょう。
ポンズ(光月寛奈)のベースとアコースティックギター
まずはポール・マッカートニー大好き、主人公のポンズです。先ほども言いましたが、ポンズの楽器は国産ではありません。
Hofner ヴァイオリンベース HCT-500
ポンズのベースです。
ヘフナーは、1887年にカール・ヘフナーによって設立された、ドイツの老舗楽器メーカーです。 ヴァイオリンやチェロなどの伝統的な弦楽器から、エレクトリックベースやエレキギターまで、幅広い種類の楽器を製造しています。特に、ビートルズのポール・マッカートニーが愛用した「ヴァイオリンベース」が世界的に有名です。
ポンズの使用モデルはHCT-500/1L-SBのレフティモデルです。ヴァイオリンベースにはPremium、Contemporary、Ignitionと3つのシリーズがあり、ポンズのベースはContemporaryのもので、価格は17万円ほど。 祖父におねだりしてプレゼントしてもらったのでしょう。
Epiphone マスタービルト テキサン
ポンズのアコースティックギターです。
エピフォンは、ギブソンの傘下にあるギターブランドで、1873年創業の歴史を持つメーカーです。 当初はバイオリンやリュートを製造していましたが、ギブソンに買収された後、現在ではギブソンのセカンドブランドとして親しまれ、ギブソン製品の廉価版をリリースする一方で、カジノなどの独自性の高いモデルも展開しています。
シーがエレキギターを買いに行くエピソードで、ギブソン製のギターの高価さにシーがうなだれている時、ポンズが見せたのがこのエピフォン製です。 話を戻して、エピフォンのテキサンは、もともとはエピフォン独自のモデルでしたが、1957年にギブソン社に買収されて以降、ギブソンのJ-45に似たボディシェイプと独自の仕様を組み合わせたモデルとして、1958年から1970年まで生産されました。
作中でも話されているとおり、ポール・マッカートニーが1964年製のテキサンを愛用し、ビートルズの「イエスタデイ」をはじめとする数多くの名曲で使用したことで、その名が世界的に知られるようになりました。 ポンズのモデルは、マスタービルトシリーズでリーズナブルな価格ながら、ボディがオール単板仕様ということで人気があるモデルです。おおよそ10万円前後といったところです。もともとはポンズの祖父のコレクションの一つだったのを、借りたまま譲り受けたのでしょう。
ポンズが将来欲しいと思っているのは、Rickenbacker 4001とMartin D-28で、やっぱりポール命なのです。
シー(真白詩音)のアコースティックギターとセミアコ、ブルースハープ
次は、ポンズの相棒となる路上のシンガー、シーです。
Headway HMJ-WX
シーのアコースティックギターです。
ヘッドウェイは長野県松本市の株式会社ディバイザーのアコースティックギターブランドです。 このシーのモデルは、信州の名工と言われるヘッドウェイのマスタービルダー百瀬恭夫氏の至高の一品と言われています。 シーの父親の形見で母親が苦笑いしながら話すほど高価であり、シー本人は価値はよく分かっていません。 路上ライブでおじさまたちから教えてもらい、どうやら他のギターとは違うとか、価値があるらしいとかを知ることになります。 父親がライブ用にピックアップを取り付けているので、コレクターの方々から「何てことを」と思われるかもしれません。それほど、このモデルは結構レアもので、PROTOタイプは世界に1本しかなく、CUSTOMタイプも10本ちょいしか製造されていないらしいので、欲しくても見つけるのが困難でしょう。過去に66万円ほどで取引されているのをネットで見たことがあります。 シーの父親もポンズの祖父のように、かなりマニアックな人物に違いありません。
Seventy Seven EXRUBATO-CTM JT
シーのセミアコースティックギターです。カラーはT-REDです。
セブンティセブンギターズは、国産ブランド「ヘッドウェイ」の技術を受け継いで2006年に誕生した、セミアコースティックギター・フルアコースティックギターのブランドです。 シーがギブソンES-335に一目惚れするも手が出せず、ヘッドウェイのギターを持っているということで楽器店で紹介されたのが、EXRUBATO-CTMのJapan Tune-upシリーズです。
これは海外で生産したボディやネックに国内の職人が最終的な調整とセットアップを行うシリーズのことで、シーでもリーズナブルに購入することができました。 ネックやフレットなど、演奏性に関わるところを国内の職人によってセットアップされているので、むしろシーにはプレイヤビリティでこちらの方がしっくりきたはずです。この物語のように、大手の楽器屋さんが値引きとおまけサービスをされているかは不明ですが、20万円以内では購入できるんじゃないでしょうか。
TOMBO MAJORBOY
シーのブルースハープです。
トンボ楽器製作所は、1902年創業のハーモニカとアコーディオンの老舗メーカーで、日本で初めてアコーディオンを製造販売した企業としても知られています。ハーモニカでは教育用からプロ仕様まで幅広く製造し、長渕剛やミック・ジャガーなどの有名アーティストにも愛用されています。ブルースハープとは、主にブルースやロック、フォークなどで用いられる、10個の穴を持つ「10ホールズ・ハーモニカ」の通称を言います。特定のキー(調)にチューニングされているので、曲のキーに合ったものを選べば、初心者でも演奏がしやすいのが特徴です。構造もシンプルで、息の吹き方、吸い方で強弱をつけ、「ベンド」と呼ばれるテクニックで音を変化させて様々なニュアンスを表現できます。今回、シーが「フレイミングパイ」という曲の間奏で、初めてソロを取りますが、セカンドポジションという、ブルースやロックで一般的に用いられるスタイルで、曲のキーより完全4度上のキーのハープを使っています。それにより吸う息の方が多くなり、難易度がグッと上がりますが、かっこいいサウンドになります。この楽器は曲のキー(調)ごとに必要ですので、シーは複数持っていることになりますが、最近はひとつ5千円近くします。シーの持っているキーに合わせて、ポンズは作曲しているのかもしれませんね。
シーが将来欲しいと思っているのは、GibsonのセミアコES-335、同じくアコギJ-200もしくはDOVEと、小さい体の割に大きいギターが好みのようです。
カグラ(神楽坂奏多)のエレキギター
続いて、内気なリードギタリスト、カグラです。
Ibanez AZ2402 Ice Blue Metallic
カグラのメインギターです。
アイバニーズは、日本の星野楽器が製造・販売する世界的に有名なギター、ベースブランドです。 エレキギターやエレキベース、アコースティックギターなど、機能美を追求した先進的なラインナップが特徴で、プロから初心者まで幅広い層のミュージシャンに愛用されています。
カグラのモデルは、そのアイバニーズが提案する、新世代のギタリストのスタンダード・モデルとして登場しました。ここのところ、音楽スタイルはさまざまなものが融合する度合いを強めていて、ギタリストの求めるものも多様化しています。 カグラもいろいろなバンドのリードギターをコピーするために選んだのでしょう。彼女の好きな青系のIce Blue Metallicがこれまた美しい色です。カグラは裕福な家庭なのでしょうね、20万円は超えるモデルになります。
Fernandes RST-50
カグラのセカンドギターです。
フェルナンデスは、1972年からエレキギターの製造・販売を開始した日本の老舗楽器メーカーのブランド名です。 ギタリストの布袋寅泰さんなどが愛用したことでも知られ、小型のスピーカーを内蔵した「ZO-3」シリーズは特に有名ですね。
残念なことに、フェルナンデスは近年、業績悪化と競争激化、中古市場の台頭などにより、2025年7月に破産開始の決定を受けていますが、日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界的に支持された素晴らしいブランドです。
カグラのモデルは、1980年代にフェルナンデスが製造した「The Revival」シリーズのエレキギターで、当時のFenderストラトキャスターを忠実に再現した「ジャパンヴィンテージ」として知られています。 おそらくカグラも誰かにこの古いモデルを譲り受けて、練習をしていたのでしょう。このモデルも青色系で、カグラの好きな色は青色なのもこれがきっかけなのでしょう。 中古市場では5万円以内で購入できそうです。カグラの家庭では、どなたが所有していたのでしょうね。
カグラが将来欲しいと思っているのは、Fender StratocasterやYamaha PACIFICAなどで、弾きやすさを求めていそうですね。
レア(宝来鈴愛)のドラム
最後はアクセ大好きドラマー、レアです。
Pearl リファレンス・ピュア・ドラムセット Champagne Sparkle
物語中では、彼女のドラムセットについては言及はありませんが、彼女のイメージとしてこれを選びました。
「パール楽器製造株式会社」は、1946年に創業し打楽器やフルートなどを製造・販売する日本の楽器メーカーです。世界中のドラマーに愛用されるトップクラスのブランドでもあります。
レアのドラムセットは、バイト代をはたいて購入した中古品で、Champagne Sparkleというカラーが気に入って購入しました。Pearlは真珠だし、ChampagneとかSparkleという言葉が、あるバンドの旧名だったり、有名ロックバンドの曲名だったりするので、それが決め手だったのでしょう。レアらしい単純な発想です。 おそらく、シンバル等は後付けで買い足したり交換したりして、独自のカスタマイズもしていることでしょう。
レアが将来欲しいと思っているのは、ドラムセットではなく、色々なパーカッション楽器。きっと収集することが好きなのでしょうね。
いかがだったでしょうか。この作品の構想中に、この子には何を弾かせようなどと考えるのも非常に楽しかったですし、自分も実際に欲しくなってしまいました。
ちなみに私が所有するギターは、Martin D-18、Martin OMCPA3、Gibson Les Paul Studioです。「お前は国産やないんかい!」と突っ込まれそうですが...
これまで、買っては売り、売っては買いで、この3本になったのですが、今となっては手放して後悔しているモデルが4~5本はあります。その中には国産というか、国内のビルダーさんのが一つ含まれます。
このままでは、話がどんどんマニアックな方向へ流れて行ってしまいそうになるので、この辺にしておきます。 彼女たちがどんな楽器を持っているのかがイメージできると、作品もまた面白くなるのかなと思い、記録としてここに残してみました。
皆さんのご贔屓のバンドやミュージシャンの楽器のことを調べてみるのも、これもまた楽しいかもしれませんよ。ちなみに私のイチオシのギタリストはReiさんです。
第2部順調に執筆中です。近いうちにお目にかかれると思いますので、お楽しみに。
文月




