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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー14

 遥子は、今まで康二が連れてきた女の子達とは、正直に言って、どこか合わなかったのだ。


 康二が連れて来た子達は、良くも悪くも普通の子、今時の流行を追いかけて、簡単に、康二に危ないからバイクを降りてと言うタイプだった。いくら、優しい康二とは言え、バイクを降りる事は絶対に無い。きっとこれだけは譲る事は無い。それは、康二を見て来た遥子達にとっては、確信とも言えた。と言う事は、結局ダメになる事が目に見えているわけだ。

 だからと言って、そう言う子達が悪いと、遥子は思ってはいない。ただ、単純に康二に合わないと思っているだけなのだ。

 合わないと言う事は、どこかで必ず歪みが生まれる。どちらかが我慢をしなくてはならなくなる。結局、お互いが傷つく事になる。

 人が良い康二は、彼女とバイクを天秤にかける事は出来ない。悩んで、悩んで、その傷を一身に受けてしまう。今までの康二の恋愛を見てきた遥子たちには、これ以上、康二の傷つく姿を見たくは無かった。


 もしかしたら、希に対しても、遥子の買いかぶりなのかもしれない。


 しかし、オヤジさんに怒鳴られても逃げる事無く、裕介に現実を突きつけられても、バイクに乗りたいと言った気持ちの強さ、自分の事よりも人の事をまず第一に考える人の良さ。これだけでも、遥子にとっては、合格点をあげたかった。何よりも、遥子は、希と走りたいと思っていたのだ。希と一緒に走ると楽しいだろうなと遥子は思っていたのだ。遥子にとっても、これは珍しい事である。


 遥子にとって、この短期間に懐いてくれた希は、康二と同じように、いつの間にか「妹」となっていたのだ。もちろん、遥子の「妹」には灯も含まれる。遥子は、このファミリーが大好きだった。


 「とりあえず、そのブーツはなんとかした方が良いかもね」


 遥子は言った。


 「これだと、いかにもバイクに乗ってますって感じじゃん?」


 希は、少し考えて言った。


 「そうなんですけど、ツーリングにスニーカーって訳にもいかないじゃ無いですか?」


 「別に、私はスニーカーでも良いと思うけどねぇ」


 灯が明るく言った。


 「いや、近場を軽く走る程度だったら良いかもしれないけどさ。一応ツーリングなんだしね。何があるかわからないしさ」


 一応、ここは先輩らしい事を遥子は言った。


 もちろん、本人が良ければスニーカーでも全然構わない。それに、ツーリングだからと言って、そんなに身構えるものじゃないとも遥子は思っている。かといって、何があるかわからないのも事実だ。転ぶかもしれないし、事故に遭うかもしれない。そう言った意味でも、足を最低限守るブーツは必要だと思っていた。


 「じゃさ、希ちゃん、スニーカーとか、ライダーブーツじゃなくて、ちょっとゴツ目の靴持ってない?例えば、編み上げのブーツとか?」


 灯が希に聞いた。希は少し考えて答えた。


 「持ってるよ。サイドジッパーの奴、だけど重くて全然履いてない」


 「それしっかりしてる?なんちゃってじゃ無い?」


 確かに、ゴツ目のブーツと言えど、履きやすさ重視のファッション性の高い物もある。もちろん、そう言ったものはバイクには向かない。灯が言いたいのは、ファション、履きやすさ重視の物では無く、そこそこでも良いからしっかりとした作りの物を言っているのだ。

 それこそ、有名ワークブーツメーカーの物であるのならば言う事はないのだが、そう言ったメーカーの物は、それなりの値段もする。その分、手入れを怠らなければ、10年、20年と長く履けるのだが……


 「うん。一応、ちゃんとしてると思うよ。重いもん」


 ブーツの重さは、一応重要なファクターとも言えるかもしれない。重い分、作りがしっかりしているとも言える。


 「じゃあ、それで良いじゃん。デニムパンツを少しロールアップすれば可愛いと思うけどぉ」


 灯が言った。


 「確かに、それだと足首守ってくれるしね。紐さえしっかり結べばの話だけどね」


 遥子がそう言うと、希は少し不思議そうに聞いた。


 「紐ですか?」


 「うん。靴紐が解けると、引っ掛けちゃって危ないからね。厳密に言えば、サイドジップも避けた方が良いんだよね。ジッパーは金具だから、バイクを傷つけちゃうかもしれないじゃん?だからバイク用のブーツはサイドジップでも、ベロアが付いてて、ガードしてるでしょ?だけど、そんな細かい事言ったら履くものなんて無くなっちゃう」


 そう言って遥子は笑うと希は感心して言った。


 「なるほど、ちゃんと機能的に出来てるんですね」


 「ま、ね〜。だけど、そんなに難しく考えなくても良いと思うよぉ。そんな事ばっかり考えてたら、オシャレ出来なくなっちゃうもん」


 灯は明るく言った。


 「アンタは考えなさすぎだけどね〜」


 遥子は笑いながら言った。


 「え〜一応考えてますよぉ。酷いなぁ」


 灯は、不満気に言った。


 「そうね、アンタなりに考えてるかもね〜」


 遥子は、笑いながら言った。


 「なんか、馬鹿にされてる気がするぅ……けど、ま、良いか。それでね……」


 灯の切り替えの速さに希は、戸惑って答えた。


 「……う、うん」


 戸惑っている希に遥子は笑いながら言った。


 「この子は、こう言う子なの。いちいち気にしてたら疲れるよ」


 「なんか、ディスられてる?」


 灯は、また不満気に言った。


 「ソンナコトナイヨ」


 遥子は、感情を入れずに答えた。


 「ま、良いや。それで、ウエストバックなんだけど、それはイカンなぁ」


 灯は、希のウエストバックに容赦無くダメ出しをしてきた。


 「もう、それだけで可愛く無ぁい。それだけでヤボったぁい。便利なのは分かるけどぉ」


 「容赦ないねぇ」


 遥子は笑って言った。


 「だってぇ、ほんとにそうなんだもん」


 「これダメ?使い勝手は良いんだよ」


 希は不満気に言った。


 「それがダメ。使い勝手が良くても可愛くなかったら、それだけでダメ〜」


 灯は、自信満々に言った。灯の判断基準は、可愛いか、可愛くないかなのである。どんなに良くても灯が可愛くないと思ったら、ダメなのである。

次回の更新は3月2日となります。

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