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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー07

 店の裏の駐車場には、遥子のクルマ、真っ赤なミニクーパークラブマンが一台とカバーがかけられたバイク、そして灯の NSRが停めてあった。


 「ここに停めて」


 遥子は、灯のNSRの隣を指差した。


 希は、指定された位置にバイクを停めると、灯のNSRをまじまじと見つめて言った。


 「これ、灯ちゃんのバイクですか?カッコいいですね」


 「そうそう、今、休憩中で隣に行ってる。裕介やおじさんに色々教わってるんじゃない?」


 「教わる?」


 希は不思議に思った。


 教わるって、何を教えてもらうんだろう?私なんかよりも全然バイクの事知ってるのに……


 遥子は、希の疑問に答えるように言った。


 「あの子、レースやってるからさ、セッティングとか、理屈とか、色々教わってるわけよ。レーサーって言ってもただ早く走れば良いってわけじゃ無いし、エンジニアやメカの人達と対等に話せないと、自分の伝えたい事、伝えられないから。それがタイムに繋がるしね」


 「へぇ。勉強熱心ですね」


 希は感心して聞いていた。


 「それにね、あの子、ああ見えて英語の成績だけは良いんだよ?将来ヨーロッパでレースしたいって。英語話せないとコミュニケーション出来ないから」


 「凄い!」


 希は素直に感心していた。まだ高校生の灯が自分の夢の為に、そんなに頑張っている事に素直に感心したのだ。


 それに比べて私は何をしたんだろうな……


 希は灯と自分を比べると、少し悲しくなった。大学に通ってはいるが、何をやりたいのかも見つからず、毎日をただ流されているだけの自分が情けなかった。


 「ま、あの子は少し変わってるよ。環境も環境だしね」


 「環境?」


 「そう。あの子のお父さんは、元々はおじさんのワークスチーム時代の後輩でね。若い頃、おじさんから色々と教わって、おじさんを尊敬してるんだって。今は小さいながらも自分のレースチームを持ってて、灯ちゃんもそんな環境で育ったから小さい時からお父さんに付いてサーキットに行ってたし、バイクがいつも身近にあったから、物心ついた時からバイクに乗って、サーキットを走り回ってたんだって。言ってみればバイクのサラブレットな感じ。で、うちでバイトしてるのも灯ちゃんのお父さんがおじさんに色々教われって、修行みたいなものなのよね」


 希に疑問が浮かんだ。


 「修行って言うなら遥子さんのお店じゃなくて、直接おじさんのお店でバイトすれば良いのに」


 遥子は、当たり前のような希の疑問に、吹き出して答えた。


 「それはね、灯ちゃんの『可愛くない』の一言で、おじさんの店でって言うのは無くなったの。それじゃって、うちでバイトする事になったわけ。うちでバイトしてれば、いつでもおじさんの所に行けるじゃん?別にメカニックになろうってわけじゃ無いから、それでも良いかなって、おじさんも言ってさ。それに、あの二人、女子高生をどうやって扱って良いかもわかんなかったから」


 「なるほど……」


 「そう言うところも含めて、ほんとあの子は面白いわ。感情で物事を言うからね。自分に正直なのよね」


 遥子は、そう言って笑った。


 そう言う所、羨ましいかも……


 希はそう思った。自分に正直に生きる……人に気を遣って生きてきた希には、少々ハードルが高いと感じられていたのだ。


 希は、駐車場に停まっている、赤いミニを見ると、遥子に聞いた。


 「遥子さん、クルマも乗るんですね?」


 「ああ、あれ?うん。買い出しとか、やっぱり車が無いとね」


 やっぱりセンス良いなぁ。


 希は遥子のミニを見てそう思った。赤いボディカラーが遥子によく似合っている。


 「ミニ、可愛いですよねぇ。それであのカバーがかかっているのが遥子さんのバイクですか?」


 「そう。見たい?」


 遥子はニヤリと笑って、希を見た。クルマの事よりもバイクの事を聞かれた方が嬉しそうなあたり、やはり遥子もバイクが好きでたまらないようだ。


 「ぜひ、見せて下さい!」


 希も目を輝かせて答えた。


 遥子は、丁寧にバイクにかかっているカバーを外した。


 カバーの中には、綺麗に磨き上げられた、赤いSUZUKI GSX-R1100が姿を現した。


 「うわっ!」


 思わず希が声を上げた。迫力のある車体と良い、レーサーを彷彿とするスタイリングと良い、これが、背が高くスタイルが良い遥子によく似合っていた。


 「カッコいい……」


 希はそれしか言えなかった。バイクはもちろんなのだが、何よりも、この大きなバイクを自信満々に乗り回している遥子がカッコ良かった。希は、どちらにしても他に言葉が浮かばなかった。


 SUZUKI GSX-R1100


 前年に発売したGSX-R750の排気量を1100ccまで上げた1986年発売のフラッグシップモデル。

 GSX-R750に採用された油冷式のエンジンで、随所にフラッグシップに相応しい技術が盛り込まれていた。

 当時、雑誌企画でドイツのアウトバーンで時速300kmを達成したり、当時の耐久レーサーを彷彿とさせるスタイリングもあり、人気が高かった。

 ちなみにGSX-Rという名称は、SUZUKIのスーパースポーツを象徴する名称で、現在まで受け継がれている。

 遥子のバイクは発売年の1986年モデル。


 それにしても、SUZUKIはγ(ガンマ)と良い、GSX-Rと良い、刀と良い、隼と良い、デザインも性能も尖ったバイクを出しますね。だからスズ菌なんて言葉も生まれてしまったのでしょうか(笑)スズ菌に侵されると他のメーカーには乗れなくなるなんて良く言われてますね(筆者談)



 「良いでしょ?私の自慢」


 そう言えば、裕介さんも同じように、自慢って言ってた。


 希は、裕介の言葉を思い出していた。


 康二さんも同じように言うのかな。「僕の自慢」って


 希はそう思ったら、少しおかしくなった。


 「なんか、おかしい?」


 遥子は希に聞いた。


 「いえ、裕介さんも同じ事を言ってたなって思って」

次回の更新は6日となります。

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