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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー06

 いきなり話を振られた康二は驚いて答えた。


 「そうそう、最近オマエ、あっちの方行ってないだろ?いろいろ変わってるかもしれないしよ、事前調査だよ」


 「話、誤魔化しやがったな……うん?」


 遥子が裕介にツッコミを入れようとした所に、サイレントモードにしている遥子のスマホに着信の振動が来た。


 遥子はスマホを開いてチラリと見ると、


 「……うん、うん、そうだね。下見は大事だよ。行って来なよ康二クン」


 急に態度が変わった不自然な遥子の言い方に康二は不審に思い言った。


 「どうしたの?何か企んでる?」


 変な所だけ勘がいいな、コイツ……


 遥子は、そう思うと、必死に誤魔化しに入った。


 「別に何にも企んでないよ。やだなぁ。あっと、お店戻らなきゃ、灯ちゃんに怒られちゃう。またねぇ」


 と言うと、遥子は逃げるように店を出て行った。


 アイツ、何か隠してやがるな……あとで聞いてやろっと。


 裕介は、そう思いながら、遥子が不自然に下見を進めた事を察して、康二に言った。


 「ルートにしてもさ、鎌倉から行くのか、藤沢から行くのか、逗子を回って行くのかで変わるだろ?店だって変わってるだろうし、オマエなりに見て回るのも良いんじゃね?オマエのバイクの調子見がてらさ」


 康二のバイクは、旧車とはいえ、こまめに面倒を見ている分、トラブルは皆無と言っても良い。しかし、それは細かなトラブルはトラブルと見ていない康二だから言えることで、やはり旧車なだけに、道中、何があるかわからないとも言える。事前に調子を見ておく事に越した事はないのだ。


 「そうだね、明日行って見るかな。どうせ暇だし、色々見て回ってみるよ」


 「そうしな。そうしな。いいか、康二。今はネットがあるから簡単に調べる事が出来るけどな、ちゃんと目で見て、自分で判断した物に適う物は無ぇんだ。それにその方が、絶対希ちゃんも喜ぶと思うぞ」


 「わかった、ありがとう」


 康二は、素直に言った。


 こんな、無警戒で良いのかねぇ……大の大人が……


 裕介は、少し康二の事が心配になっていた。


 逃げるように店の外に出た遥子は、スマホを開き、早速LINEに返信を打っていた。


 ヤバいヤバい、ほんとに、変な所だけ勘が良いからな、アイツ……バレる所だった……


 いや、実際は、裕介にはバレバレなのだが……


 それにしてもさ……


 遥子はニヤリと笑うと


 「若いって良いねぇ」


 返信を打ち終えると、店に戻って行った。



 フォン!


 希が一吹かししてからエンジンを止めた。


 康二がこの前、CBでやっていた事を真似をするようになったのだ。

 

 「こんにちわ!」


 希が遥子の店”vent frais(ヴァン・フレ)”に、少し恐縮しながら入って来た。


 「いらっしゃい、どうしたの?なんか遠慮してるじゃん」


 遥子が希に言った。希がカウンターに座りながら照れて言った。


 「だって、こんなお願い、ちょっと恥ずかしいっていうか……」


 「そんな事気にする事ないって。私としては頼ってもらって嬉しかったよ」


 遥子は笑顔で言った。


 「で、バイクで来たんででしょ?」


 「はい。お店の前に停めさせてもらっています」


 「バイク、裏に持って行こうか?通行の邪魔になっちゃうとアレだし」


 そう言うと、遥子はカウンターから出て言った。


 「あの、お店、誰も居なくなっちゃいますよ?」


 希は、心配そうに言った。


 「大丈夫、大丈夫。日曜の午前中なんて、暇だもん」


 遥子は、そう言って笑った。


 「一応、念の為」


 遥子は、店の扉の札を”準備中”に変え、


 「さ、行こう。お姉さんが希ちゃんのバイクを見てあげる」


 「ちょっと、怖いな……」


 二人はそう話しながら、笑って店の外に出ると、遥子は希のバイクを見て、


 「えらいえらい。ちゃんと綺麗にしてるじゃん」


 「はい。整備はわからないですけど、せめて綺麗にしておこうと思って」


 「その心掛けが大事。手を入れてあげれば、バイクは答えてくれるし、整備の事は康二クンに聞けば良いんだし、ね!」


 と、遥子は多少、含みのある言い方をしたのだが、当の希はそんな事に気が付かず、バイクの事で遥子に褒められたのが嬉しかった。


 それにしても……


 遥子は、希の姿を見て思った。


 良くも悪くも普通だわ……


 決して、希のファッションセンスが悪いわけでは無い。希の私服は可愛いと思っていたし、今時の女の子らしいファッションだと思っていた。しかし、バイクファッションに関しては、個性も工夫も何も無かった。よくあるトレーナーにデニムパンツ、そして、ライダーブーツ。悪くは無いのだが、あまりに普通すぎて面白く無いと遥子は思った。

 それと言うのも、隣に来る客は、個性的な者が多い。乗っているバイクも個性的な物ばかりだ。もちろん、それぞれバイクファッションにも気を遣っている者達も多い。そういった面々を見慣れている遥子にとっては、希の姿は、普通以外の何者でもなかったのだ。


 灯ちゃんとまでは行かなくても、せめてその半分もあれば、可愛いのに……


 確かにその個性的な面々の中でも、灯は異彩を放っていた。何せ、女子高生が、短いスカートの制服でバイクを乗り回すのである。私服でも、バイクだからという気負いは全く無い。着たい物を着て、普通にバイク、それもレーサーレプリカに乗る……流石にヒールは履かないが……肌が露出していようが、足が出ていようがお構い無しだ。その度にオヤジさんに怒られるのだが、本人は全く気にしていない。


 「こっち、こっち」


 遥子は希を呼ぶと店の裏にある駐車場に案内した。

次回の更新は2月2日となります。

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