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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー04

 遥子は、呆れた顔で裕介を見ながら言った。


 「アンタ達の事を言ったの!」


 「何よ?俺なんかやった?」


 裕介はコーヒーを啜りながら不満げに言った。


 「やったも何も、私が免許取ったばかりの時のツーリング覚えてる?私の初ツーリング!」


 「なんかあったっけ?」


 裕介は惚けて答えた。実の所、裕介には心当たりがあり過ぎたのだ。


 「これだよ……」


 遥子は、惚けた裕介に怒りを込めて言った。


 「アンタ達、何にも知らない初心者の私を置いてっただろ!」


 遥子は、裕介に怒鳴りつけた。


 「あー、そんな事もあったなぁ」


 裕介は、そんな遥子の事なぞ気にもしないで、まだ惚けている。


 「コイツらはさ、まだバイクに慣れてない私なんかお構い無しに、どんどん先行っちゃってさ。それも峠だよ。道もわからないし、初めてだから不安だしでさ、車はビュンビュン、抜いてくしさ。もう怖くて泣きそうだったのよ」


 「お前が泣くわけねぇじゃん」


 裕介が笑いながら遥子を揶揄うと、遥子が裕介を睨んだ。


 「ごめんなさい……」


 裕介は遥子の睨みにビビり、頭を下げた。


 「そいでさ、やっと休憩場所に着いたわけ、そしたら、コイツら『遅かったな、何してんの?』って呑気に缶コーヒー飲んでるのよ。わかる?コイツらのデリカシーの無さ。こっちは、怖くて必死なのにさ。やっと休めるって思ったら『のんびりしてんなよ。行くぞ』って。もうヘルメット被って行く準備してやがんの」


 「そんな事あったっけ?」


 裕介は、まだ惚けていた。遥子はもう呆れるしかなかった。


 「ほんと、裕介にしてもコウちゃんにしても、バイクが絡むと周りの事、何にも見えなくなっちゃうからさ」


 「そうかも」


 と笑いながら康二が言うと、


 「康二クンもだよ!」


 ピシャリと遥子が言った。


 「ごめんなさい」


 「康二、怒られてやんの」


 また、裕介が余計な一言を言った。


 「オマエの事言ってんの!」


 「ごめんなさい」


 遥子は大きく溜息をついて言った。


 「まったく、コイツらは……」


 遥子は、康二に真剣な顔で言った。


 「良い?康二クン、初めてのツーリングで、希ちゃんにコイツらみたいな、そんなバカな事しちゃダメだよ」


 「そうだぞ、康二……で、何の話?」


 話が見えていない裕介がまた首を突っ込んできた。


 「うるさい!オマエはいいんだよ!」


 「仲間外れかよー」


 裕介がいじけて見せた。確かに裕介にしてみれば、とばっちりを受けたような物だった。しかし、それも悠介の普段の行いが招いたとも言えるのだが……流石に可哀想になった康二が言った。


 「いや、希ちゃんとのツーリング、どこに行こうかって話」


 康二は女の子慣れしている裕介のアドバイスも参考になると思ったのだ。


 「それで、希ちゃんはどこに行きたいって?」


 「海に行きたいって」


 裕介は、コーヒーを飲みながら言った。


 「いやぁ、女の子だねぇ」


 「裕介ぇ」


 遥子は、裕介に脅しをかけた。


 「いや、いや、そんな悪い意味じゃなくてな。単純に女の子らしいと思っただけだよ。普通の女の子が好き好んで、峠なんて行かないって。灯ちゃんじゃあるまいし。それはバイクをある程度扱えるようになってからじゃない?」



 「ハックション!!!」


 大きなくしゃみの音が、店内に響き渡った。


 「どうしたの?灯?」


 灯のクラスメートが心配そうに聞いた。仲の良いクラスメートがバイトをしている灯の所に遊びに来ていた。


 灯は、鼻を啜りながら言った。


 「うん?どっかのバイク屋の軽薄ジジイが私の悪口言ってる気がする……」


 「何それ〜」


 クラスメートは笑っていた。


 あのやろー、何噂してんだ?


 勘が良い灯だった……




 「確かにそうだな」


 遥子が感心したように言った。


 「うちの店にもさ、女の子来るじゃん。大抵の子は気持ち良く海岸線を走りたいって言うわけさ。確かに、のんびり海岸線走るのは気持ち良いもんな。俺たちもそうだろ?」


 「うん」


 「そんなら、その気持ち良さを経験させてあげれば良いだけの話じゃん。で、何を揉めてんの?」


 「康二クンが、マニアックな所を考えてるからさ」


 遥子が言った事に、康二が反論した。


 「マニアックって……ただ僕は渋滞が無くて、混んで無い所って思っただけだよ」


 「康二が言ってるのは、旅慣れた奴が言ってる事だな。そんなの初心者の希ちゃんにわかるわけないじゃん」


 裕介は、当たり前のように言った。


 「そう!それ!康二クン基準で考えちゃダメだよ。江ノ島なんて康二クンに取っちゃ散歩みたいなもんだろうけどさ」


 「江ノ島?良いじゃん。シラス食べるのも良いし、エスカーに乗って上まで上がっても良いし、何より週末になるといろんなバイク集まるしな。何よりも華があるじゃん。希ちゃんには楽しいんじゃね?」


 裕介は笑顔で言った。


 「オマエ、渋滞が無くって人がいない所って、言い方変えたらさびれた所だからな?そう言う所が悪いとは言わないけど、華が無いよ」


 「確かに……」


 華かぁ……


 康二は、確かにそんな事を考えた事は無かった。


 確かにそう言うのも大事なのかもな……


 いつもソロで好きな所に行っていた康二は、自然と人混みのない静かな所を好んで選んでいた。世間一般的に今どきの若い女の子がどこに行きたいかなんて、考えたこともなかった。

 それに康二は、週末にバイクが集まると言うのに引っかかっていたのだ。バイクが集まるという事は、品評会みたいな雰囲気にもなる。そこに旧車に乗って行くともなると、多少なりとも注目を集めるからだ。この前の、希と行った、用品量販店でもそうだった。裕介のCBが品定めを受ける様に視線を集めていた。康二はそう言うのが嫌いだった。


次回の更新は26日となります。

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