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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第二話

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第二話ーー曇りのち晴れーー13

 ひとしきり、ヘルメットを見た二人は、次はブーツ売り場に来ていた。


 「康二さんは、バイクに乗る時、どんな靴を履いてます?」


 希は、ライダーブーツを見ながら康二に聞いた。


 「ほら、教習所の時に踵付きの靴じゃなくちゃダメじゃないですか?私は、その時に買ったブーツをまだ履いてるんですけど」


 「僕は、街乗りの時は、普通にスニーカーだよ?ブーツはツーリングの時にしか履かない」


 「そうなんですねぇ」


 希は感心しながら言った。


 「私、バイクに乗る時は踵付きじゃなきゃダメなんだって思ってました」


 「そうなの?」


 康二は、驚いて希に聞いた。


 「はい。教習所でそう言われたから……」


 「でもさ、それだと普段乗るのも大変じゃない?それこそ、合わせる洋服も限られちゃうしさ」


 「そうなんですよねぇ。だから、段々とバイクから遠のいちゃいました……」


 なるほどね。本当に根が真面目な子なんだなぁ。


 康二はそう思った。


 「でもさ、周りにバイク乗ってる人とかに教わらなかったの?」


 「はい。同級生には、あんまりいなくて……スクーターに乗っている人は多かったんですけどね……」


 そっか、そう言えば……


 康二は、昨日の事を思い出していた。


 あんまり、女の子にしては、デザイン的に良い物を身につけて無かったような気がするな……もしかして、裕介さんはそういう所も見て、あんな事を言ったのかな……


 「なるほどねぇ。僕は別にスニーカーでも良いと思うけどね、滑らなければ。ヒールとかだと危ないけどさ」


 「そうなんですか?」


 「うん、確かに踵付きだと、ステップに引っかかるから、滑らないってあるんだけどさ」


 そう言うと、康二はブーツを手に取って説明をし始めた。


 「それに、足首も守ってくれるから、コケた時なんかは助かるけどね」


 希は熱心に聞いている。


 「だけどさ、街中ではライダーブーツってやっぱり浮いちゃうよねぇ。僕は、皮つなぎを着る時じゃないと履かないかな。それにね、バイクだからこうじゃなきゃなんてのは無いと僕は思うけどね」


 「なるほど……」


 康二は頷いて答えた。


 「うん。だってそんなに構えて乗ったって楽しく無いでしょ?いや、それこそスカートで乗っても良いって言ってる訳じゃ無いけどさ。いや、一人居たな……とんでもないのが……」


 「えっ?スカートで乗っちゃうんですか?」


 希は驚いて聞いた。


 「遥子さんのとこに灯ちゃんって居たでしょ?」


 「はい。アルバイトの店員さんですよね」


 「そう、あの子。まだ高校生なんだけど、制服でバイクに乗っちゃう。流石にスカートの下は、ジャージとか履いてるみたいだけどさ。前は見せパンだから大丈夫なんて言っては、オヤジさんに怒られてた」


 康二は笑って言った。


 「すごい!信じられないです」


 「それも、靴はローファーだからねぇ。まぁ、あの子は色んな意味で特別だとは思うけどさ。けど、最低限の事を守ってれば良いんじゃ無いかな。特に街乗りはね。僕もスニーカーだし、ね」


 「はい」


 希は頷いた。


 「ただねぇ、スニーカーだと、ここがすごく汚れちゃうんだよね」


 康二はそう言うと、シフトレバーが当たる所を指差した。


 「白いスニーカーなんか履くと最悪だよ?すぐに真っ黒になっちゃう。それに痛むしね。だから、ライダーブーツだと補強が入ってるでしょ?」


 「ホントですね」


 希は感心して頷いた。


 「スニーカー用の補強カバーみたいなのもあるんだけどさ、結局めんどくさくなってしなくなっちゃうんだ。ここを見れば、バイク乗りかどうかわかるよ。みんな黒く汚れてると思う」


 「そうなんですねぇ」


 康二は、ブーツを棚に戻し、ライダー用のスニーカーを手に取った。


 「最近は、こう言うのもあるけどね。まぁ、ここらは好き好きじゃ無いかな。僕は履かないけど」


 「なぜですか?」


 希は不思議そうに聞いた。


 「だって、なんでもかんでもバイク用ってダサくない?」


 康二は笑って答えた。


 「僕は、バイクってそう言うもんじゃ無いって思うんだ。上手く言えないけど、バイクってもっと身近な物だと思ってるからさ」


 この人にとって、バイクって本当に、普通にある物なんだ。特別な物じゃ無いんだ。なんか、そう言う付き合い方って良いかも……


 希はそう思った。


 「じゃあ、康二さんって、ブーツはどういうの履いてるんですか?」


 希は聞いてみた。康二のバイクとの付き合い方に、ますます興味が湧いていたのだ。それに、康二にいろいろ教えて貰ったら、バイクの事が好きになるかもしれないと思っていた。


 「僕はね、レッドウイングのエンジニアブーツをずっと履いてるよ。ソールが減ったら、直してもらってね。ちょっとゴツいし重いけど、長く履いてると、馴染んで良い感じなんだよね」


 「へぇ、こういうライダーブーツだと思ってました」


 希は、棚にあるブーツを見て言った。


 「ツーリングに行くって言っても、ずっとバイクに乗ってる訳じゃ無いじゃん。いろんな所を見て歩くのに、いかにもバイクに乗ってますって言うのは嫌なんだよ。だけど、エンジニアブーツも今時履いてる人あんまりいないかもなぁ。けどね、好きなんだよね。このゴツい感じ」


 「こだわりなんですね」


 希は笑って言った。


 「そう、それ!こだわりって奴」


 康二もそう言って笑うと、二人で別の売り場に移動した。


次回の更新は、12日になります。

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