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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第二話

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第二話ーー曇りのち晴れーー12

 「若い子は、こう言ったヘルメットが好みなのかなぁって思ったんだよね」


 康二はそう言うと、シンプソンのM30を手に取って言った。


 希は、M30の独特な形を見て、


 「なんか、ダース・⚪︎イダーみたいですね」


 康二は、改めてM30を見て、


 「確かにそうだねぇ。僕としては、世紀末救世主伝説か、マッドマック⚪︎って感じがするけどな」


 希は、キョトンとした顔で康二を見ていた。


 「ちょっと、何言ってるかわかんないです」


 希は康二の言った言葉の意味がわからなかった。


 世代間のギャップだ……


 康二は康二なりに気の利いた例えを言ったつもりだったのだが、それが希には通じなかったのでまた少し落ち込んだ。


 「でも、オリジナルペイントされてるんですよね?どんなデザインなんですか?」


 希は興味深げに康二に聞いた。


 「うん?デザイン?」


 「はい。どんなデザインなんですか?」


 康二は、気を取り直して話し始めた。


 「僕のはね、自分のイニシャルをデザインしてもらった。色は、白ベースに、赤文字に黒と白の縁取り」


 「へぇ。結構、私の周りでもオリジナルデザインしたいって人多いんですよ。だけど、頼むと値段がそれなりにかかるし、自分でやるのも大変だしって言ってました」


 「僕は、オヤジさんの店の常連さんに、ペインターさんがいたから、安くやって貰ったんだ。裕介さんも遥子さんもやって貰ってるよ」


 康二は笑顔で言った。


 「裕介さんは、赤と白の幾何学模様で、遥子さんもイニシャルをデザインしてる。色は、僕と同じ組み合わせなんだけど、僕より派手かな」


 希は羨ましそうな顔を浮かべて言った。


 「なんか、羨ましいです。そんな常連さんの知り合いがいるなんて。さっきの人も常連さんですか?」


 「ああ、あの駐輪場であった人?そう、あの人も常連さんだよ」


 その噂の常連は、遠巻きに二人を覗き見をしていた。側から見ると、まるで不審者である。


 「報告、報告」


 楽しそうに、そう言いながら、スマートフォンを操作していた。


 「何だかんだい言いながら、上手くいってそうだぞ。少し話は噛み合ってないみたいだけど、康二にしては上出来だな。送信っと」



 裕介のスマートフォンに着信音が鳴った。


 「おっ、やぶからLINEが来た」


 裕介は常連客のやぶから来たLINEを読んでから、遥子に見せた。


 「俺の作戦、成功じゃね?」


 裕介は得意気に遥子に言った。


 「お前らな、人のデートを覗くなんて趣味悪いぞ」


 遥子は呆れて言った。


 「別に覗きに行ったわけじゃないし、やぶに会っちまった、康二の不運って事だな」


 裕介は、訳のわからない理屈を言って笑った。


 「全く……ほどほどにしときなよ?バレたら康二クンに怒られるぞ」


 「わかってるよ。だけど、気になるだろ?」


 と言うと、ニヤリと笑った。


 「もちろん」


 遥子もニヤリと笑った。


 「だろ?返事返さなきゃ……引き続き、情報頼む。送信っと」



 「おっ、帰ってきた。了解、しっかりと監視しておきますよっと」


 と、やぶは、返信を打って、また康二と希の二人を覗き始めた。


 「あの常連さんは、実はお医者さんなんだよ。それも結構腕が良いらしい」


 「本当ですか!?」


 希は驚きの声を上げた。どう見ても、さっき会った時には、そういう風には見えなかったのだ。


 「希ちゃんがびっくりするのもわかる。体もデカいし、とてもお医者さんには見えないもんね」


 そう言うと、康二は笑った。


 「そんな事言うと、失礼ですよ〜」


 そう言うと、希も笑った。


 「なんだか、楽しそうだな。なんかバカらしくなってきたな……」


 やぶは、段々と楽しそうな二人を覗いているのが虚しくなってきていた。


 「でも、なんで『やぶ』って言うんですか?」


 希は康二に聞いた。


 「うん?オヤジさんが、「ヤブ医者」って言い始めたのが始まり。やぶさんが、医者やってるって言ったら、なんだ、ヤブ医者かって」


 「ひどい!?」


 「やぶさん、本当は矢吹って言うんだけど、それと『ヤブ医者』をかけて、『やぶ』になった」


 「なんか、面白いですね」


 希は笑いながら言った。


 「やぶさんは、KAWASAKIのZ1300って旧い大きいバイクに乗ってるんだけどさ、オヤジさんの腕に惚れ込んで、常連さんになったんだ。あの店の常連さんは、クセ強い人多いからねぇ。オヤジさんも裕介さんもクセ強いからしょうがないけどさ」


 KAWASAKI Z1300


 1979年発売。水冷6気筒DOHC2バルブ 1286ccのビッグバイク。前年発売されたHONDA CBXに市販車初の6気筒を奪われたが、CBXは空冷だが、こちらは水冷、そして、当時日本車最大の排気量を誇った。駆動方式はシャフトドライブで、ツアラー的な意味合いが強かった。とにかく、排気量もデカければ、車体もデカく、日本人には足つき性も良いとは言えなかった。体のデカいやぶには、お似合いの一台。



 「なんだか、鼻がむずむずしてきた」


 そう言いながら、鼻をぐずぐずさせているやぶは、


 「ほんとにバカらしくなってきたな……帰ろ」


 と言い残して、一人寂しく帰っていった。

次回の更新は、08日になります。

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