05-10
お城に戻ってきたリフィルは、レオンを持ち上げてじっと見つめていた。ちなみに今はいつものリフィルに戻ってる。いつもの様子のリフィルに、アレシアも安心してくれていた。
じっとレオンを見つめる。じっと。じいっと。
レオンは気まずそうに、にゃあ、と鳴いて目を逸らした。
「レオン」
「うに」
「レオン」
「うにゃ」
「…………。怒っていい?」
「ふにゃ……」
しょんぼりと項垂れるレオン。リフィルは微かに笑って、レオンを抱きしめた。
あの懐かしい、ぼんやりと外を眺める感覚。あれは、ずっとリフィルと一緒にいた子が表にいた時の感覚だ。つまりは……。レオンは、リフィルとずっと一緒にいた子。
「どうして、だまってたの?」
「うにぃ……」
「いいにくかった……? どうして?」
「ふしゃ。うにゃにゃにゃ。にゃご」
「なるほどわからん」
「にゃあ!?」
いや、なんとなくは分かるのだけど。
レオンが言うには……。ずっと自分が閉じ込めていた存在に、つまり今のリフィルに、全てを押しつけてしまったのが後ろめたくて、言い出しにくかった、とのこと。
なんというか……。ちょっと呆れてしまう。リフィルはちっとも気にしていないのに。むしろ、大切な片割れがいなくなったことが、本当に寂しくてつらかったのに。それは、レオンも何度か聞いていたはずなのに。
「レオンのばか」
「にゃ……」
「ばか」
「に」
「ばか……」
「うにゃあ……」
ぎゅっと抱きしめる。こんな近くに、あの日いなくなってしまった子がいたなんて思わなかった。本当に、嬉しい。嬉しくて嬉しくて……。不思議と涙があふれてきて。
変だ。痛くも悲しくもないのに、涙が出てしまう。リフィルは変になってしまったかも。
でも……。今は、止めようとも思わなかった。
「にゃあ」
レオンは、そんなリフィルに苦笑いしているみたいだった。
そうして、落ち着いたところで。
「それじゃあ、レオン」
「に?」
「からだ、かえす」
「…………。にゃ?」
何言ってんだこいつ、みたいに聞こえてしまった。そのままの意味だけど。
「あ、うん。そうだ。そうだね」
「にゃにゃ」
うんうんと頷くレオンに、リフィルは言う。
「レオン。ごめんなさい」
「うにゃ!?」
ちゃんと、謝っておかないと。
ずっと、ずっと。いろいろと押しつけてきた。村での生活から始まって、あの残酷な未来を知った時も、そしてそれをどうにか対処しようとしていた時も、全て押しつけてきた。
レオンは、ずっとリフィルのことを助けてくれていたのに。リフィルは一度も、レオンを助けたことがない。だから、謝らないと。
そう、拙いながらもしっかりと説明して。
「うにゃ!」
ぽふんと額を叩かれた。肉球パンチ! 気持ちいい!
「うにゃにゃ! ふーっ! ふにゃー! しゃー! に!」
「…………。ながいと、こまる……」
「うにゃ……」
レオンの言葉はなんとなく分かる程度なので、長文はなかなか大変だ。えっと……。
リフィルは何も悪くない。むしろ責められるべきは自分だ。リフィルにはレオンを責める権利がある、みたいな内容。だと思う。けんりってなんだろう。わかんない。
でも。
「んー……。おわらない、やつ?」
「ふに……」
これは、あれだ。自分が悪い、いや自分が、みたいなことを繰り返すやつだと思う。だから……。これ以上は意味がないな、と思った。
だから。
「じゃあ、ありがとう、レオン。ずっと、かんしゃ、してる」
「うにゃ!」
「うん……。どういたしまして」
お互いにありがとうを。感謝もずっとしていたから。
お互いに、謝って、お礼を言って。これで終わり。つまり。
「じゃあ、からだ、かえす」
「うにうにゃにゃ!?」
いやなんでだよ、という言葉が聞こえたような気がした。
「だって……。このからだは、あなたの、ものだから」
「にゃご」
「いまは、わたしの? わたしは……。もう、じゅうぶん」
いろんな場所を見た。お友達もできた。リフィルとしては、わりともう満足してる。だからまた、あの子の中からぼんやりと眺める生活に……。
「うなー! にゃごご! ふしーっ! にゃ!」
えっと……。満足しているのはレオンも同じで、むしろこの猫の体が気に入ってる。それに、アレシアはリフィルとお友達になったんだから、ちゃんと一緒にいてあげるべきだ、みたいな内容。
そういうもの、なのかな?
「そう?」
「にゃん」
「ん……。わかった」
それじゃあ……。もうしばらく、リフィルはがんばろうと思う。今ならレオンも一緒だから。
「レオンは……。もう、いなくならない? ずっと、いっしょ?」
「うにゃ!」
もちろんだ、と頷いてくれる。リフィルはそんなレオンを抱きしめて、
「うん……。よかった。これからも、よろしく、レオン」
柔らかく微笑んでそう言った。
「うーにゃ」
「うん。そろそろ、ばんごはん。シアがつくってくれてる」
それじゃあ、と二人は部屋を出る。あの聖女と出会った時の嫌な気持ちは、もうすっかりなくなっていた。
壁|w・)これからは、ずっといっしょ。
次回、エピローグです。




