No.8
神社行き
脳裏にあるは
銀世界
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公式企画「俳人・歌人になろう!2023」参加作品です。
▼小説家になろう 公式企画サイト
https://syosetu.com/event/haikutanka2023/
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【解説】早朝。鳥居から見えていた人達はこぞって目が死んでた。
あれは決して眠気のせいじゃなく、思い詰めた人間が半信半疑で何かに縋る時の顔。
誰もがやや猫背気味で、中には笑顔の奴もいたけど、それは俺が小さい時に初めて覚えた処世術で。
覚悟を決めて予習通りに鳥居潜ると、空気も音もそれまでとは全然違う。
ちょっとした霊障の経験こそあれ、霊感とは全く無縁の俺でもハッキリ知覚出来る程、どんよりとした負のオーラに満ちた空間。
澄み渡った空気が何とも言えない重みを帯びていて。
木枯らしが素肌を撫でているにも関わらず、額から止まらない汗。
ご本殿に辿り着く頃には、脳みそに叩き込んだ筈の礼儀やら頼み込む筈だった切実な縁切りと願いは全部空っぽになった。
もちろんこういう場合を想定してカンペも用意してたけど、カンペ読みながらでも即座に言葉が飛んじまう始末。マジで何しに行ったの俺。
参拝した翌日、俺はめちゃくちゃ体調悪くなって、現状の効果はそれだけ。本当に何しに行った俺。
ちゃんと形代にお願いびっしり書いたんじゃが……。
多分あれだ、字ぃ汚過ぎて神も解読出来なかったに違いない。
「よう分からんけど悪縁ぶった斬ればいいのね?」ってな感じで悪縁だけサクッと斬って頂いた感じの奴でしょ。いや本当、せめて悪縁だけはちゃんと切断して頂かないと骨折り損なのですが。
始発乗ろうとしてギリ失敗、軽い体調不良に見舞われる。
「体調悪い時は行かない方がいい、歓迎されてないサインだから」ってな話を事前に聞いてた俺は、電車待ってる時に引き返そうとしたんだけどね。改札くんが係員呼べとか言い出してさぁ。早朝の田舎の駅に駅員はいないのよ。いや、俺が探すのヘタクソだっただけかも知らんけども。
(そもそも始発間に合わなかったってのはひとまず目を瞑る前提で)俺に非がないと仮定して。
この場合は歓迎してんのか、してねえのかどっちなんだよ。あれか、ツンデレか?(ポジティブな姿勢)
「こっち来ないでよ」からの「せっかく駅まで来たんだから寄っていきなさいよね! 歓迎しないけど!」的な奴ですか。俺が帰った瞬間えげつない雨振り出したのも「ようやく帰ったかアイツ」ってはしゃいでたんすか。
頼むから愛情表現はストレートにしてくれ(ブーメラン)
まあとにかくそんなだから俺も腹括って天を仰ぐ訳よ。
「これがシュタイ〇ズ・ゲートの選択か────」って。
電車乗ったらあっさり体調は治ったから良いんだけど、着いたら今度は↑ですよ。
ちょっと理不尽じゃねえかな。
まあとにかく、とても不思議な場所でした。