1/3
第1話 ジルコニアス転生
俺、ジルコニアスは乙女ゲーム「月のダンジョン」という世界に転生した。
庶民がお金を儲けるためにダンジョンに潜るというストーリー(ルートによっては入らない事もあるけど)。
そんなゲームの世界に、攻略対象として転生した俺だが、特に波乱があるわけではない。
そのゲームではゆるくストーリーが展開されるのが売りだったからだ。
だから王子として生まれた俺は、その時までゆるく生きてきた。
第一王子でも、第二王子でもなく、第三王子として生まれたため、重い責任も厳しい教育もなかったというのもある。
というわけで、十代半ばまでゆるゆるした日常を送ってきていたのだが。
「あら、王子様だったのね。失礼しましたわ」
おしのびででかけた下町で、出会ったヒロインに一目ぼれしてしまったのだ。
さすがのヒロインは可憐で可愛かった。
俺以外の男性も常に熱い視線をおくるような見た目だ。
そんな彼女の名前は、フィアナ・イレクセント。
両親が経営する小さな食堂に出て、毎日精力的に手伝いをする女性だ。