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4. 星々天に昇る

 私があのマインドコントロールが何なのかについて考えていると、ゲルドスは水色の光の環を手から拡げて、三人とマージを立ったまま眠らせた。マージは空中浮遊していたが、その魔法の効果も無くなり、空中から緩やかに降りてきたようだ。よく勘違いされていることだが、とゲルドスは切り出す。


「金凰魔法というのは、魔力を自分のものにする能力というより魔力に付いているタグのようなものを書き換える能力だ」


 なるほど。確かに魔力は識別できるようにタグがついているという情報を聴いたことがあるような気がする。そして、他人の魔力を使うとマインドコントロールされるというのは、正確に言うなら他人のタグがついた魔力を使うと、ということなのか。魔力を使うとマインドコントロールされるというのを学ぶ授業は、ほとんどの人が受けるが、それは必修ではなく私は受けていないので実はそれ関連の情報は知らない。

 でも、そうだとしてもマインドコントロール出来るのはおかしい。彼らはゲルドスのタグがついた魔力を使っていなかったはずだ。

 いや、ゲルドスの魔力コーヴィル量は圧倒的に低かったことと、撃ち出した時点での光景から推定されるコーヴィル値が〇・五フレントと非常に低いことを考えると、あの時点でゲルドスのタグは付いていたということだろうか。しかし、どのようにして撃ち出す前にゲルドスのタグを付けたのだろうか。

 ゲルドスは説明を続けた。


「実は前もって、彼らの『賢者の石』にタグを付けたんだ。残念ながらあの四人にしか分配されていないようだったがな」


 なるほど。魔力源の『賢者の石』にタグを付けてしまえばその魔力を使った者は皆マインドコントロールされるというわけか。

 ――刹那。拍手とおぞましく甲高い嗤い声が聞こえた。後ろを振り返ると、ローブの四人は消えていた。その代わりに大きめの紙が落ちていた。


 暸空、二帯、金凰、銀飄の叛参澀匣(はんさんじゅうこう)よ、この度はマージとその手下がお世話になった。我の魔力源に錨を降ろそうとは、なかなか良いアイデアではないか。わざわざ気づかせて()()()()()褒美に葬るのは計画を遂行してからにしてやる。首を洗って待っているが良い。


 文面から察するに、例のフェンベル石が自我をもって暴走した「女王」なのだろうか。随分と皮肉めいた口調だ。この叛参澀匣とはどういう意味なのか。叛く、参る、澀る、匣……。まあ恐らく良い意味では使っていないだろうが。

 さて、本来の目的は『古の再生』の対策についてであったが、盗聴されている恐れがあるようだ。私はそう思って今学校の周りに張られているのと同様な、外界との情報を殆ど完全に遮断する真っ黒な結界を指を鳴らすだけで張った。これは暸空魔法学修了くらいにやる、とても難しいとされているが、実は暸空魔法の基礎を詰め込んだだけの魔法だ。これで八分間くらいは何者をも通さないはずだ。


「相変わらず凄いわね……魔力逆コーヴィル量の流れが一エーゲ・フレンティスにも満たないわ」


 エスティーはそう褒め称えた。逆コーヴィル量というのは、何者かによる空間への作用の程度で、値が大きければ大きいほど作用が大きい。コーヴィル量を示すコーヴィル値の単位のフレントがあって、その逆数であるフレンティスが逆コーヴィル量の単位として用いられている。つまり、フレントで一を割ったものがフレンティスである。そして、エーゲ・フレンティスというのは、一垓分の一フレンティスという非常に小さな量である。ちなみに、エスティーがすぐにそう返せたのは、逆コーヴィル量は二帯魔法で簡単に計測できる方法があるからだと思われる。まあ要するに、私が今作った結界は外部からの魔力の流れによる空間の干渉を殆ど遮断しているということだ。

 確かに言われてみればここまでの精度で結界を展開したことはない。


「それで、実はいいことがあるんだ」


 ちょっと間があった後ゲルドスは言う。この状態でいいこととはどういうことなのだろう。


「マージは女王によってもうマインドコントロール出来ない状態になってるんだが、あの手下の三人は忘れているのかまだマインドコントロールが出来る。三人と魔力で一方的に繋がったままなんだ」


 ゲルドスは目を見開いてはきはきと語った。私達三人は口を揃えて感嘆の相槌を打った。マインドコントロールが出来るのなら都合が良い。


「マインドコントロール出来るならこっちに来て貰うことってできるかな、そしたら元の魔力に戻すことができそうなんだけど」


 私はゲルドスに訊ねた。暸空魔法で三帯魔法の魔力を無帯魔法の魔力という大元となる魔力に変換して、三人の本来の魔力に変換することができそうなのだ。


「三帯魔法を二帯魔法にしてたもんな。でも今は時計塔奥に閉じ込められているみたいだから暸空魔法で回収出来ないか」


 私は了承の意を示した後、ゲルドスは私に三人の座標を提示した。結界外に出て、例の如く紅い環を手から放って身長大まで拡げていった。三人はゲルドスの精神操作により環を跨いでくぐった。それと同時に速やかに環を閉じた。

 私は徐ろに、三帯魔法の魔力を無帯魔法の魔力に直すための三つの光の環を作った。因みにこれもまた私の暸空魔法の技術によるものである。光の環は速やかに三人の体内に入り、魔力を無帯魔法の魔力に直すことが出来た。しかし、その次の段階の元の魔力に直すことができない。人には皆個別で魔力口と呼ばれる固有の魔力を決める魔力を放出する出口が有る筈だがそれがないのだ。

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