表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

3. 古の再生に関する二帯魔法と三帯魔法の持続について

 周りの紙を見て、コーヴィル先生の得意な魔術を思い出した。鎖状魔術。使った相手が直前に記憶していたことをその場に何らかの伝わる形で具現化する魔術だ。その魔術を使ったのであろう。

 私がコーヴィル先生の魔術について解説する前に、その周りの紙を見てエスティーはなるほどと言いながら頷いていた。まあ、コーヴィル先生はとても有名なので、その魔術も当然エスティーも知ってるわけなのだろう。

 さて、紙に書かれたことを纏めると、取り敢えず魔石を破壊すればいいということと、その魔石が自我を持って暴走したことと、あの怪物のコーヴィル値が二フレントであったことだ。

 魔石とは、例の賢者の石の事だろうか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 撤退して、私が気絶していた数時間後の夕方頃、私達の元には男子寮のとても優秀な生徒の二人、ゲルドスとジルバーンから手紙が届いていた。魔法全体でそれぞれ一位、二位を取っているほどの実力者だ。

 男子寮の部屋から女子寮の部屋へ、あるいはその逆の方向に手紙を送るのは、寮の建設者による暸空魔法で数秒で出来ることだから割と気軽に出来て、基本的には恋文なので、最初こそ私達のもとにこれが送られて来たときは驚いたが、手紙の包み紙に書かれていたタイトルは「「古の再生」について」だったので、冷静さを取り戻した。そんな手紙の内容はこうだ。



 前略。エスティーとサヴィー様へ。どのようにお過ごしだろうか。『古の再生』について探りを入れているそうだな。『古の再生』についてお願いしたいことがある。以下に記すことはジルバーンの能力で知った情報である。

 『古の再生』には『女王』と呼ばれる、魔力で動く人形のような物があるらしい。その『女王』には、古の三帯魔法の膨大な魔力塊、フェンベル石が内蔵されていて、『古の再生』メンバーの三軸魔法を成立させる魔力源となっている。正確に言うと、『賢者の石』と呼ばれる目玉の形をしている石を媒介して、フェンベル石から三帯魔法の魔力を流し込んでいる。そして逆に、人間の生き血に含まれる魔力を『賢者の石』から回収しているようだ。生き血から三帯魔法の魔力に変換するのは、フェンベル石を使うととても簡単なことらしい。

 魔力が少ない者にとって、魔力を際限なく与えられるというのはとても魅力的なものだ。しかし、貴女達の知っている通り、魔力を借りた者は、元の魔力の持ち主にマインドコントロールされるようになる。女王は意志を持って動いており、この学園の地下に埋まった、クロモノームという、『賢者の石』に似たような見た目をした古代兵器を復活させる野望を持っている。それが解き放されてしまったら、学校は倒壊するだろう。そのために、フェンベル石をすぐさま破壊したい。協力いただけるだろうか。草々。



 とのことだった。

 これで全てがつながった。私の今まで言っていたあの怪物というのは、そのクロモノームという古代兵器のことで、コーヴィル先生の言っていた魔石というのはそのフェンベル石ということなのだろう。しかし、我々が血に汗流しても得られない情報をこんなにあっさり――なのかどうかはわからないが――手に入れてくるのはどういうことなのだろう。

 まあ、ちょっと考えれば分かることであったが、ジルバーンは精神を読む系の特殊な能力であったはずだから、こんなにあっさりというのも頷ける。それ故、私達は割とすんなりとこのことを受け入れ、その作戦に同意する旨と、情報交換をしたいから、男子寮と女子寮の間にあるロビーで待ち合わせをする旨を記した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私達とゲルドス達は、ほぼ同時刻にロビーについて手を振りあった。ゲルドスとジルバーンは高身長で筋肉もかなりあり、屈強な男といった感じだ。そして、この二人は兄弟で顔もほとんど同じなのだが、ゲルドスは金髪、ジルバーンは銀髪である。因みに彼らはそれぞれ黄色と灰色の綺麗なスーツという服装だった。

 しかし、そんなことを悠長に言っていられないほど何か違和感を感じる。誰かに監視されているような、なにかそんな気配を感じる。手紙の伝達が傍受されていたはずはないが、三帯魔法のことだ。何か傍受する術があるのかも知れない。私達四人は戦闘態勢に入った。

 すると、周りからは古びたローブを身に纏った三人がゆっくりとこちらに歩いてくるのが分かった。「古の再生」のメンバーだろうか。私達に気がついた途端に、こちらに無言で赤青緑に光る巨大な魔力弾を撃ってくる。エスティーは、例のレンズを取り出し、白黒の矢を例のごとく赤青緑の矢に変え、魔力弾を無効化していた。ゲルドスとジルバーンは目を丸くしながら敵に二帯魔法の一種の、白と黒の小指の先に収まるサイズの魔弾を高出力かつかなりの高密度で撃って、相手の三帯魔法を無力化していた。やはり、二帯魔法が得意な者はその方式を取るのか。見兼ねた私は即席でゲルドスとジルバーンの前に例のレンズと同様にレンズを製造した。二人は私に軽く会釈をして、さっきと同様の二帯魔法を三帯魔法に変換して撃っていた。

 しかし、私達がどれだけ反撃しても、ローブを纏った三人を、追い詰めることは出来なかった。というのも、普通は魔力弾での戦いというものは、相手が降参するまで弾幕を張り続け、互いの攻撃を無力化していくものなのだが、彼らはどのようにしても降参しそうにないのだ。相手の魔力がどういうわけか際限なく湧き出てくる。そして、手紙で言っていた通り、マインドコントロールされているのだろう。

 どうしようかと考えていると、ふとあるアイデアを思いついた。私の領空魔法で三人の魔術を制限できることに気づいたのだ。私は天に腕を掲げ、三帯魔法を封じ込めるための赤紫色の六つの環を魔力弾を撃つ三人の両手にひらひらと落としていった。すると、三人は魔力を使い続ける素振りを見せているが、こちらに攻撃が通らなくなった。

 しかし、まだ何か違和感を感じる。私は空間の歪みを感じた。感覚からコーヴィル値を大体推定すると、三十フレント。とても低い数値である。ロビーに取り付けられたシャンデリアを見上げると、これまたローブを纏った赤髪の大柄の女性がいた。


「吾輩は三皇が一人。マージだ。唐突に悪いが、お前らには死んでもらおう」


 と声高らかに叫んだ。三皇とは何なのだろう。左隣にいるジルバーンに訊いてみたが、首を横にふっていた。

 マージは私達に腕を向け、赤色の巨大な光線をこちらに向けて撃ってくる。私はすかさずコーヴィル値を推定する。しかし、値が高すぎる。二十五万フレントもあったのだ。どういうことなのだろうか。攻撃するときにコーヴィル値が著しく上がることが必要ならば、取り敢えず……。

 私は両手を心臓の前あたりに当てて、手から青色の環を拡げて、私達とマージとの間の空間を極端に歪め、コーヴィル値を強制的に下げた。すると、赤色の光線は忽然と姿を消した。


「流石サヴィー。我らが三帯魔法の弱点に気づくか」


 マージは余裕そうに笑い、次の攻撃を用意し始める。彼女は私と同じ様に、心臓の前あたりに両手を当て、赤色の環を高速で展開しだし、他のローブの三人にかけた魔術は打ち消された。

 三人はこれまで通り三帯魔法の魔力弾をこちらに撃ち、マージは、大量の赤い光線をこちらに向けて撃ってきた。

 すると、ゲルドスはすべての攻撃を、身を持って吸収した。ゲルドスの得意な能力は身に受けた魔力を代償を使いすべて自分の魔力に変換する、金凰魔法である。差し出す代償は何でもよく、今回は広大な魔力を差し出したようだ。


「我が前に何も言わずに平伏せよ」


 ゲルドスがそう三人とマージに向かって叫ぶと、三人とマージは言った通りに平伏した。これはどういうことなのだろうか。私達は絶句しながら首を傾げた。完全にマインドコントロールされている。ただ、そんな魔法は歴史上にすらなかったはずだ。

 マインドコントロール――その文言を何処かで聴いたことがある。確か手紙で言ってたことには魔力を借りた者は、元の魔力の持ち主にマインドコントロールされると。そして、自分の魔力に変換するというのを過去を含めと仮定すると、彼らを魔力を借りた者として見ることが出来るが、それは過去改変であり、そんな魔法もまた歴史上ないはずだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ