7.パンネコと憂鬱な37歳の記者
年度末ってどうしてこう忙しいのか、おまけに来週は研修と出張とか確実に殺しに来てるよなぁ
という訳で次回のムヒムマは自宅時間より仕事時間の方が多いので短くなるかもしれません。
それでも投稿は絶対します。
魔法少女とハカル中佐の戦い?があった日の翌日、助けた妖精のパンネコが夕方になっても目覚めない様子に白美も見舞いに来た華織も心配そうな顔をしていた。
「息はしてるけど起きないね」
「マメリス、この子大丈夫かな?」
「こっちの世界は魔力が薄いので回復に時間がかかりますマメ、心配しなくても明日くらいには目が覚めるハズですマメ」
「そっか」
「それで昨日、白美とマメリスが見たっていうもう一人の魔法少女はどんな姿だったピカ?」
「それなんだけどねぇ、風みたいに早くて全然姿が見えなかったんだ~」
「なにか特徴とか一部だけでも見えなかったの?」
「早い上に夜で暗かったからね~、あ、でもなんかひらひらした物は見えたよ」
「ひらひら? スカート?」
「いや、位置的に首のあたりだったかな?」
「首……長めのスカーフとかリボンかな」
「そんでスカートとかじゃなくてぴったり足だった」
「ズボンとかスパッツ系か」
「あとは……頭がなんか丸くってツノみたいなのが二つ出て…」
「待って待って? 丸いってのはショートヘアかなんかだろうけどツノ? 魔法少女ってツノ生えるの?」
「魔法少女の変身する姿はマジックジュエルが本人の記憶や心を読み取って一番にその人にピッタリの姿と能力を形にするピカ」
変身アイテムの宝石をあしらった小瓶を抱えながらピカウサが華織の疑問に答える。
「ということはその魔法少女は首に長いリボンかスカーフを巻いてピッタリズボンのツノを生やした姿が一番似合う子ということですかマメ?」
「…………」
「…………」
マメリスが言葉にしたことで華織と白美は頭の中にその通りの魔法少女を思い浮かべて、しばし言葉を失った。
「えっと、その子が私たちの前に姿を現さない理由ってそういうことかな?」
「かもしれないね」
「出てきてくれたらどんなカッコでも優しく迎え入れてあげよ」
「そうしよ」
この時、二人はまだ見ぬ仲間の魔法少女を受け入れるための心の準備を完了させた。
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一方、そんなイメージをされているとは思っても居ない竜士は二人目の正体が判明した事でその報告する為に急遽皆を招集して玄さんの道場に集まっていた。
「はぁ……」
「竜士さん、薔薇姐さんどうしたんすか? 確か昨日は従妹の誕生日を祝うって言ってましたけど」
「心ここにあらずって感じだな」
「お祝いの写真でもミスったんじゃないの?」
「いまから説明するよ」
自分の従妹が魔法少女だと知った昨夜からずっと上の空な薔薇崎に代わって竜士が昨夜の顛末を話すと、3人はそれぞれの反応を見せた。
「それは……薔薇姐さんにとっては大問題っすね」
「二人目の正体は薔薇崎の従妹だったのか、ますます世界に公表ってのは難しいな」
「ちょっと待って、そうなると今後カメラ警備は2人分ってこと?」
「さすがに俺の娘だけ見守って薔薇崎の従妹はなにもしないってわけにもいかないからな、当面は2人の安全を最優先で行動していくことを念頭に見守りの体制づくりを…」
「なら白美の見守りは私がするわ」
「薔薇崎、いいのか?」
「職業柄、気づかれずに対象を見張るの得意だし今の時代なら小型の撮影ドローンもあるからね。なにより、仕事の事を考慮すれば一番動きやすいのは私でしょ?」
「そうか、なら頼む。宝田は引き続き華織の様子見をしながら危険があれば報告を、手が空いていれば薔薇崎のサポートも頼む」
「了解」
「けど見守るのにも限度があるわよ? いくらアンタだって四六時中駆け付けられるわけじゃないでしょ?」
「う……そう、だな」
薔薇崎の指摘に現在社会人としての立場もある竜士はどう返答すればいいかすぐには答えられなかった。
「とするなら守るだけでなくワルイダー帝国ってのを直接どうにかする手段も考えるべきだろうな」
玄さんから守り以外に攻めについてもどうするか言及されて皆が考えをそちらに向ける。
「う~ん、せめてゲートの場所が分かれば俺が乗り込んでどうにかするって手もあるんですが、」
「竜士さんそりゃ無茶すぎっすよ」
「相手の規模がまだどの程度かもわかってないのに敵地に飛び込むなんて自殺行為よ」
「今はまだワルイダー帝国について情報を集める段階だろうね」
「情報、情報か……みんな、ちょっと聞いてくれ」
宝田の言葉から一つ案を思いついた竜士は全員にそれを伝えて再び動き始めた。
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-ワルイダー帝国 本拠地 作戦会議室-
「まったく、どれもこれも失敗した作戦の焼き直し! もっと良い作戦はないのか!?」
ワルイダー帝国陸軍のドアク大佐は部下のハニワ使い魔達と地球に対しての次なる侵略作戦を考える会議で良い提案が浮かばず、怒り散らしていた。
「ですがドアク大佐、現地の魔力濃度が薄く、手持つのダークパワーくらいしか使えるエネルギーがない現状ではこれ以外に考えられる作戦は……」
「そのダークパワーのみで実行した作戦でこれまでどれだけの損害が出たと思っている!」
「ハニワ兵の損失は200体以上、そして前回の失敗で合計20基のダークパワー収集エネルギー炉を失ったことになります」
「わかっている! くそ、妖精どもめ! 異世界の人間どもと手を組み魔法少女などと、あれさえいなければ今頃あの世界の大半もすでにワルイダー帝国のモノになっているハズなのに!」
怒りがヒートアップしているドアク大佐にハニワ使い魔達が縮み上がっている中、会議室に新たに入ってきた人物は平然と話しかけた。
「これはこれはドアク大佐、ずいぶんと会議に熱が入っている様子で」
「ん? 何の用だハカル中佐」
そこに居たのは先日、白美たちの前に現れた情報部隊隊長のハカル中佐だった。
「いえ、拙者があちらの世界で手に入れた重要な情報を皇帝陛下にご報告したところ、大佐にもお伝えするように言われまして」
「重要な情報?なんだそれは?」
「大佐がお困りのダークパワー以外で侵略に使えそうな力に関する情報です」
「なにぃ?」
「いやぁ、苦労しましたよ。情報部隊にとってもあちらの世界は勝手がわからず、なにから調べればいいのやら北へ南へ足をのばして羽をのばして耳までのばして帝国が使える情報を」
「御託はいいさっさと話せ」
「では、さっそく詳細を」
――ふん、せいぜい現場ではこの突撃バカに働いてもらおう。そして最後はこちらが手柄を全ていただいて皇帝陛下の側近の地位まで出世してやる。
この時、ハカル中佐は内心でドアク大佐を利用する事しか考えていなかったが、そう遠くないうちになにも利用されるのは大佐だけではないという事を知るのだった。
次回予告
「ダークパワーとやらが具体的にどんなものか調べてみたいな」
「調べてどうすんだよ」
「我がカオスムーンの世界征服に利用出来ないかと思ってな」
「おいやめろ! 悪の組織が言うと冗談に聞こえねーよ!」
「ふん、心配するな、どの道今の私では扱うことは叶わん」
「あ、そうか、実世界じゃお前バラバラだもんな」
「…………」( ^ω^)
「……おい、本当にお前バラバラなんだよな?」
「…………」( ̄▽ ̄)y-゜゜゜スパ~~
「なんとか言えこら~~!!!?」
「次回、『登場!三人目の魔法少女!?』お楽しみに~!」
「もしもし宝田! NA●Aの月面探査衛星ハッキングしてくれ! 大至急確認したい事が…」