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6.サプライズ

秘密を明かすタイミングって結構難しいですよね。

早すぎても遅すぎてもよくないし、ゲームみたいに攻略チャートが欲しいところです。

「ただいま~」


「お帰り白美~」


 華織と別れて自宅に帰り着いた白美が自宅のドアを開けると、出迎えてくれたのは両親ではなく別の人物だった。


「あ! お姉ちゃん!」


「久しぶり~また背が伸びたんじゃない?」


「うん3センチ伸びた」


「そっか、じゃあそんな成長中の白美にプレゼント! 誕生日おめでとう~!」


「うわ、これってテレビで特集されてたスイーツ店のケーキじゃん!」


「白美のお母さんがご馳走も作ってるから一緒に食べよう」


「ありがとう()()()()!」


 白美と一緒に家の奥に行くその女性はジャーナリストの薔薇崎その人だった。


「最近は勉強どう? 難しい?」


「ちょっと…かな?」


「図星だと目線が泳ぐところは相変わらずね」


「ちぇ、薔薇姉ぇは誤魔化せないなぁ」


「そうよぉ、ジャーナリストの観察力を舐めたらダメよ」


「うん、そうだね…」


「なに? どうしたの?」


「あ! なんでもない!」


「……そぉ」


 この時、薔薇崎は白美がなにか隠し事をしていることを察していたが、思春期特有の些細な悩みだと思い、流してしまった。


 その後、誕生日パーティを行い、ケーキも食べ終わった白美は薔薇崎が帰るのを見送ってから自室でマメリスと話をしていた。


「ねぇマメリス、なにかほかの妖精と連絡を取る方法ってないの? スマホみたいなやつとか」


 モグモグッ「私たちの世界でなら周りにたくさん魔力が満ちていたのでそういう交信の魔法も出来ましたマメ、でもこの世界は魔力が薄くて位置が分かっているピカウサにもなかなか繋がらないのですマメ」


「電波が届かないみたいな感じ?」


「はい、多分そうだと思いますマメ」


「そっかぁ、なんかパっと他の妖精や魔法少女が見つかるいい方法ないかなぁ」


「仲間と交信が出来ればいいのですが……あ、」


「どうしたの?」


「交信…出来ましたマメ」


「ピカウサくんと?」


「いえ、ピカウサではない他の仲間ですマメ! 一瞬「助けて」とだけ聞こえましたマメ」


「えぇ!大変じゃん! 場所は?」


「そう遠くありません、駅の方向ですマメ」


「じゃあすぐ行こう!」


「あ、ちょ、白美さん! 待ってくださいマメ!」


 新たな妖精との交信に成功した事実と助けを求める内容に白美は居ても立ってもいられず、すぐに家を飛び出し、それを慌ててマメリスも追いかけて行った。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 誕生日パーティが終わり、白美に見送られて帰路についた薔薇崎はコンビニに寄っていた。


 ――白美も随分大きくなってたな、さて朝食も買ったことだし、早く帰って明日の取材に備えないと……あれ?


 薔薇崎は先ほど別れたはずの白美が道路を挟んだ反対側の歩道を走る姿を見つけて何かあったのかと思い、自家用車に乗り込むと、同じ方向に向かって車を発進させる。


 ――こんな夜中に散歩って訳でもないでしょうに、もう夜遊びを覚えたのかしらあの子?


 夜の外出理由に予想を巡らせながら少しずつ距離が近づく従妹の背にまずは注意をするのかそれとも普通に声を掛けるのか薔薇崎が迷っていると、ふいにその姿がふっと掻き消えた。


「え?…消え…た?」


 驚きを隠せないまま車を路肩に寄せて停車させると、すぐにドアを開けて外に立ち、周囲を見回した。しかし、見通しの良い4車線の通りのどこを見ても従妹の姿は見えなかった。


「これって……」


 普通の人間だったならこの時点で狼狽えたり、どうすれば良いかわからず思考停止してしまったかもしれない。しかし、薔薇崎はかつてカオスムーンとの戦いで得た経験からこういう時、自分に出来ることを即座に判断して行動に移した。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 一方、仲間の妖精が居ると言われて夜の街を駆けてきた白美は一般人には認識できない魔法結界の中に居た。


「マメリス、仲間の妖精はどこ?」


「この先ですマメ、ですが白美さん気を付けてくださいマメ。魔法結界があるということは…」


「うん、ワルイダー帝国の奴らが居るんだよね」 


「はい、でもおかしいですマメ、今までは魔法結界を使えばその魔力を私たち妖精は察知できましたマメ。でもこの結界は中に入るまで気づかなかったですマメ」


「ワルイダー帝国の新しい魔法って事?」


「まだよくわかりませんマメ」


「なるべく早く分かるように頑張って、代わりにマメリスの仲間はあたしが助けるから!」


「お願いしますマメ」


「うん、いくよマジックセットアップ!」……変身中……「魔法少女ダイヤローズ!」


 合言葉とともに白美は眩い光に包まれ、さら周囲を覆う巨大な結晶体が現れた。そしてそれがガラスのように砕けると白美はシュッ締まった上着とシャープなスカートが特徴の魔法少女の姿へと変わった。

 

「さてと、仲間の妖精はどこにいるんだろ?」


 一見すると普通の夜の街に見えるが、魔法結界内はどこに敵が潜んでいるかわからないのでダイヤローズも慎重に捜索する。  


「ダイヤローズ、ここはピカリィフラワーやピカウサが来るのを待った方がいいのでは?」


 家を飛び出した直後、移動しながら華織達に仲間の妖精について一報を入れておいたので、早ければ十数分で合流できると考えたマメリスはそう提案した。


「うん、そうかもしれない。でも仲間の妖精が助けてって言ってるなら少しでも早く見つけてあげないと!」


「……わかりましたマメ、けど無理だけはしないで下さいマメ」  

 

「わかってるよマメリス」


「ほう、まだ妖精がいたか、皇帝陛下への手土産が増えたな」 


「「!?」」


 突然背後から聞こえた声はダイヤローズとマメリスの首を手で掴み、ギリギリと締め上げる。


「あ、あんた、ドアク大佐の手下?」


「ドアクの手下? 拙者がか?あんな突撃しか能のない陸軍バカと一緒にしないでほしいな、拙者はワルイダー帝国情報部隊指揮官のハカル中佐だ」


「情報部隊? いつものと違うって事?」


「情報部隊の任務は敵地での偵察や攪乱、もしくは潜入して重要な情報や物資を探し出し、それを自軍に持ち帰って役立てることだ。その妖精が持つ力も我々の世界制覇の礎としてくれる」


「なにそれ!マメリス達をそんなことに使うとか意味わかんない!」


「やれやれ、ドアクを手こずらせるというからどんなものかと想像していたが、魔法少女とは思ったよりも頭が悪いようだな」


「んだとぉー!?」


「ふ、魔力を一切悟らせない拙者のステルス式結界魔法を見破ったのは見事だったが、こうも簡単に捕まるようでは拙者の敵ではない。このまま気絶させて、皇帝陛下に献じょ…!」


 直前の言葉を言い切る前に何かに気付いたハカル中佐はその場から大きく飛び退き、その直後に何かとても速い風のようなものが通り過ぎるのをダイヤローズは背中で感じた。


「な、なんだ貴様は! く、早い! スパイカラス達かかれ!」


 ハカル中佐とそれを追いかける何かは高速で街の中を飛び回り、周囲からは隠れていた双眼スコープを目に付けたスパイカラスと呼ばれる使い魔が一斉に襲いかかった。

 しかし、複数回激突を繰り返すうちにスパイカラスは全て倒され、最後にハカル中佐が壁に叩きつけられて決着した。


「ぐぁ! な、なんなんだ貴様は!」


 大きく壁にめり込んではいてもまだ動く力はありそうなハカル中佐とそれをビルの屋上から観察する存在、そしてその戦いを見守るダイヤローズは何が起こっているかまだよく理解が追い付かず、どうするべきか迷ってた。


「く、ここは退かせてもらう!」


 腰からいくつかの球を取り出したハカル中佐はそれを叩きつけて煙幕を発生させると、それに紛れて姿をくらませた。


 そして、ハカル中佐が撤退した事を確認すると、謎の存在も建物の上を飛びながら遠のいていった。


「ありがとう……でいいのかな?」


 よく姿は見えなかったが、その行動から味方と思われる存在に聞こえてはいなくとも感謝の言葉を口にした白美はその後、ようやく合流した華織とともにマメリスの案内で建物の屋上で檻に閉じ込められていた猫型の妖精を発見した。


「マメリス、どう?」


「大丈夫ですマメ、少し魔力を使い過ぎで眠っているだけですマメ」


「そっか、良かった~、ところでこの子の名前は?」


「この子はパンネコというピカ。甘えん坊の妖精なので目が覚めたら可愛がってあげてほしいピカ」


「うん、わかった」

「猫って事はミルクかな、それとも魚?」

「起きてから聞けばいいでしょ、それよりどっちの家で介抱する?」

「じゃあジャンケン、勝った方ね」



 変身を解き、元の姿に戻った白美は自分が預かることになったパンネコを抱えて、自宅に戻る道を進み始めた。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 白美が帰路を進む頃、とあるビルの屋上では二人の人物が会話をしていた。


「……間違いないの?」


「……一応関連があるかもと思って華織と一緒に取ってあった生体反応データと照合してみたんだけどな、何度やっても今映ってるあの子と一致してる」


「冗談でしょ?」


「俺も娘がそうだったとき同じこと思ったよ」


「なんで、なんでよ!」


「ば、声が大きい! 近所迷惑になる!」


 ここで説明しておくと、ハカル中佐からダイヤローズを助けた謎の存在、それは当然ながら薔薇崎が連絡して駆けつけたドラグライダーの竜士だった。

 

 前々から華織と一緒に戦っているもう一人の魔法少女の正体がはっきりとしていなかったことから今回、竜士はそれとなくドラグアイの機能で保存してある生体反応データを周囲に存在する人物と照合してみた。

 すると、照合結果に一致する人物がヒットし、その人物を拡大すると、見えてきたのは仲間である薔薇崎の従妹、白美ちゃんだったというわけだ。  


「なんでうちの従妹まで魔法少女やってるの~~~~!?」


 その日、一人のジャーナリストの心からの叫びが夜空に消えていた。


次回予告

「ワルイダー帝国にも情報を扱う者どもが居ったのだな」

「陸軍がどうとか言ってたから空軍や海軍もあるのかもな」

「ふむ、それなりに使えそうならカオスムーンにスカウトしてもよさそうだな」

「組織が壊滅してるのにスカウトもなにもないだろう」

「ふ、最初から無理と決め付けていてはなにもできん!」

「悪人じゃなけりゃいい台詞だな」

「大事なのは始めるという決意と行動するための第一歩だ!」

「悪事以外ならその通りだ」

「そこから何度となく障害や非情な現実を前に心折れそうになるだろう、だがやり遂げる覚悟と変わりゆく環境に対して柔軟に目標を変えていける許容の心、それこそが今の厳しい社会を生きていくのに必要なのだ!!」

「ほんと悪の組織が言わなけりゃいい台詞だな!!」


「次回、『パンネコと憂鬱な37歳の記者』お楽しみに~!」

                          チュイン! カキン!

「年を言うんじゃないわよ!!」ズダダダ!(*`Д´)┳・・・・・・Σ('ω')

                       「ふはは銃など効かんわ!」 

「わー!待て薔薇崎! 当たる!跳弾が俺にも当た、ぎゃーー!」

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