5.魔法少女の同級生
ストックが無くなったので次回からこの小説は、
毎週日曜朝8時から投稿となります。
読んでいただいている皆さんに失礼のないクオリティを維持する為、
(という体の遅筆の誤魔化し)
一週間単位となってしまう事、ご理解ご容赦のほどよろしくお願いします。
菓子箱魔獣との戦いから数日後、竜士は仲間の4人と再び集まってそれぞれの情報交換をしていた。
「で、前回の戦いで得たデータからドラグライダーの力はワルイダー帝国の戦力にも通用する事はわかったわけだけど、肝心のワルイダー帝国自体についてそれ以上の事はまだわかってないね」
「どうでもいいけどワルイダー帝国って名前どうにかなんないの? 国民全員悪役願望の子どもかなんか?」
「カオスムーンよりもザ・悪者って名前ですもんね」
「う~ん、俺にゃあ孫の見てるアニメみたいな話だな」
宝田、薔薇崎、良介、玄は道場の真ん中でお茶を飲みながら互いの思った事を口にする。
「ピカウサってのから他に得られた情報だと、ワルイダー帝国がこっち来て活動できるのはこの東京の限られた範囲内だけらしい」
「なんで東京限定なの竜士?」
説明に対して当然の疑問を薔薇崎は投げかける。
「あいつらは妖精たちが逃げる時に集まって作った魔法のゲートを通ってこっちに来ているらしい、そしてそれは東京上空のどこかにある」
「位置はわからないの?」
「ピカウサ達がこっちに来たのがちょうど夏の台風が東京に直撃した日だったらしい。おかげで暴風に飛ばされて正確な位置はわからんとさ」
「じゃあそのゲートってのを見つけて塞いだりできないんすか?」
今度は良介が質問をしてきた。
「仮に見つけたとしても一度開けると数年かけて自然に塞がるまで待つか、もう一度大勢の妖精達が閉じるために力を合わせないと無理らしい、今のところ2匹しかいないみたいだしゲート封鎖は当分できないだろう」
「妖精って匹で数えるんすか?」
「知らん」
「ちょっと待って竜士、ゲートが東京にあるからってそいつらがバカ正直に東京にだけ侵略をしてくるとは限らないでしょ? もし他県や別の国に潜伏でもされていたら…」
「それも今の所は心配ない」
「なんでよ?」
「こっちに来たばかりの奴らは手持ちのダークパワーとやらしか侵略に使える武器がないらしい、それをこの世界で集めるための装置を作ろうとする活動はこれまで華織達によってすべて潰されているからな、なくなったら補充に戻らなきゃならないんだと」
「なるほど、敵にとっての補給地がこの世界にない以上、そのなんとかパワーを補給するための出入り口からあまり遠く離れた地域には出たくても出られんという訳か」
「そう考えると、一見バラバラだったこの力場の出現分布からどのあたりにゲートがあるのか予測できるかも」
会話から役に立ちそうなワードを選んで新たな情報を得ようと、宝田はPCを操作して分布図とそこから上空とを結ぶ線を計算し始めた。
「じゃあ次は私かな、今の所どの報道局や新聞社も力場やワルイダー帝国についてなにかはっきりとしたネタは手に入れてないみたい」
「断片的だったり不明瞭な情報とかは入ってるのか?」
「まぁそれなりにね、昔のコネで2つほど大手の報道関係者に探りを入れたけど観測機器に原因不明のノイズが入るとか、性能の良い撮影カメラに妙な影が映ったとかくらいで、これだけじゃあ正体不明の侵略勢力が魔法を使ってるなんて真相には夢でだって辿り着かないでしょ」
「とはいえ、ほっとけばいずれは嗅ぎ付けて騒ぎ始めるヤツが出てくるだろうな」
「そうね、玄さんの危惧ももっともよ。だから私たちも今後のために決めておかないとね。かつてのカオスムーン同様に世界に向けて公表の準備をしておくのか、それとも今回は静観するのか」
「うん、そうだな……」
薔薇崎の提示した選択肢に、竜士は即答できず考え込む。
「……確かに今回は難しいかもね、カオスムーンの時は独り身のあなただけだったから最悪、正体から私生活までバレても構わないっていう覚悟があったけど、14歳の中学生にそれを強いるのは酷だわ」
「せめてきちんと華織ちゃんと話が出来ればいいんすけどねぇ」
「竜士、まだあの子にはお前の正体秘密にしておくのか?」
薔薇崎や良介、玄の問いかけに竜士は皆を見据えて回答する。
「両方とも今はまだ秘密だ。せっかくカオスムーンの記憶も薄れて人々は平和な生活を送っているのにそれをかき乱す事はしたくない。それに華織やあのもう一人の魔法少女が人知れず街を守ろうとしてくれている覚悟に水を差す行為も控えたいと思っている」
「けど、もし怪我やそれで済まない事態になったら…」
「もちろん、秘密裏にこちらから出来る限りのサポートを行い、それでも守り切れないと判断した時は接触して話をするつもりだ」
「サポートって言うけど、具体的には? 毎日ストーカーすんの?」
「宝田、言い方!」
「せめてボディーガードって言ってあげるっすよ」
「どっちでもいいけど、竜士が仕事してる時はどうせ俺がカメラハックして様子見なきゃなんだろ?」
「すまん、頼めるか?」
「へいへい、引き受けますよ。昔あんたに救われた命だ、役に立ってやるよ」
「ひとまず今日はここまでだな、午後から門下生が来るんでな」
冗談交じりのやり取りをしながら今後の方針はまだ見守りを続けるという事で決定し、その日の集まりはお開きになった。
「さて、それじゃ私はもう行くわ、良介、頼んでた物は手に入った?」
「薔薇姐さんの頼みで手を抜く俺じゃないっすよ」
「なにを頼んだんだ薔薇崎?」
「従妹が今日誕生日でね。だから今一番流行ってる高級スイーツ店のホールケーキを良介に頼んどいたの」
「へぇそうなのか。おめでとう」
「私じゃないけどありがと」
良介がクーラ―ボックスから取り出したケーキの箱を受け取ると、薔薇崎は足早に帰って行った。
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そのころ、華織はというと学校が終わり帰宅前にファスト―フード店で寄り道をしていた。
「最近ワルイダーの出現頻度多くなってきてない?」
「だよね~もう二人だけじゃ手が足りない気がしてきてるし」ズズーッ(╭ε・`)
「白美やマメリスくんはなにかいい方法とか考えてたりする?」
「この前、魔法少女を増やせないか聞いた時はこっちの人間に魔法を使えるようにするには一人につき妖精一体は付きっきりサポートで魔力を送信しないと無理って言ってたよ」パク!(´~`)モグモグ
「やっぱりそうか~、って事はまず生き残ってる他の妖精を見つけないとだね」
「あとは魔法少女をやってくれる人がいるかどうかだね、御馳走様」(-人-)
「早! 白美早いよ、私まだシェイクも飲み終わってないのに」
「華織がのんびり過ぎるんだよ。社会人だったら時間は一秒でも惜しいんだからサッと食べてサッと次の行動に出られるようにしないと」
この早食い少女の名前は輝代白美、高木華織と同じ学校の中学生であり、魔法少女ダイヤローズの正体だった。
「行動は早いけど、考えるのは苦手だよね白美」
「う、」
「黒板の書き写しも速記過ぎて自分でも何が何だかわかんないし」
「うぅ、」
「飛び出したはいいけど、マメリスくんの誘導より先行って道に迷って遅れたり」
「ううぅ、」
「社会人に憧れるのはいいけど、もっと動く前に考える時間も必要じゃない?」
「ううううぅ、それは言わないで~~!」
「今からならまだ十分直せるでしょ」
「頑張ります~」
「でもそのすぐ行動する性格のおかげてあの時助かったのも事実だし、私はそんなに嫌いじゃないよ」
「華織~」
初めて白美が魔法少女になった日の事、
その時はまだ華織は一人で街を守るために戦っていて、敵の攻撃で魔法結界の外に弾き飛ばされてしまった先で偶然、白美に会った。
そしてそのまま結界内までついてきて、ドアク大佐に捕まっていた妖精のマメリスを解放するとピンチの華織を見かねて速攻で契約を結び、二人目の魔法少女になったという経緯だった。
「マメリスを助けるまではよかったけど、庇って攻撃受けたあの時はほんとにヤバかったよね~」
「あれはタイミング的に仕方なかったし」
「おかげであの時は助かりましたマメ~」
白美のカバンから尻尾が枝豆のような形をしたリス型の妖精マメリスが頭を出して以前のお礼を言う。
「ま、華織もマメリスもこうして今は無事だし結果オーライかな」
「そうだね、で話を戻すけど、妖精探しと並行してこの間言ってたもう一人の魔法少女を探そうと思うんだ」
「あ~あれね」
「なにか探すのにいい手はないかな」
「私たちと同じように妖精が近くいるハズだろうからそれを見つけるとか?」
「でも私たちみたいにカバンとかに入ってると難しいかも」
ちらりと華織が自分のカバンに視線を向けると、中では数本のスティックポテトを頬張るピカウサの姿があった。
「でも常に入ってるとは限らないでしょ、注意深く探してみよ」
「とりあえず地道にやってくしかないか」
「じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
話が終わり別れた二人はまっすぐに自宅へ帰っていった。
次回予告
「遠い別世界に来ているとはいえ、補給がままならんとは悪の組織としてはまだまだだな」
「随分上から目線だなドンカオス、お前だって負けたじゃないか」
「ほぅ、ストーカーライダーが言うじゃないか」
「誰がストーカーライダーだ! 実の娘だぞ!?」
「一人はな、もう一人に関しては第三者から見れば立派なストーカーだぞ?」
「悪の組織にだけは言われたくねーーー!!!」
「次回、『サプライズ』お楽しみに~!」
「そうだ、今度の華織の誕生日も良介に頼んでケーキ用意してもらおう」