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4.魔法少女ピカリィフラワーとお菓子のラビリンス

次回は日曜を予定していますが、不確定な用事があるので投稿が一日遅れるかもしれません。

自宅を出た華織はピカウサの案内でワルイダー帝国が出現した場所に急いでいた。


「こっちだピカ~」


 案内された先には周囲の人々に存在を知られずに侵略を進めるワルイダー帝国の魔法結界が張られていて、その結界は本来なら魔法少女や妖精にしか見えないものだった。


「変身するよピカウサ」


 華織は上着のポケットから小さい宝石が付いた小瓶のようなアイテムを取り出すとそれを頭上に掲げて言葉を口にする。


「マジックセットアップ!」……変身中……「魔法少女ピカリィフラワー!」


 その言葉とともに無数の光の帯が華織を包み込み、着ていた服がパーカーとスカートからフリフリドレスの魔法少女の姿へと変わった。


「行くよピカウサ!」

「華織、気を付けるピカ!」


 魔法結界の中に入ると、そこではワルイダー帝国にダークパワーを注がれて生まれた菓子箱型の魔獣とそれを指揮する幹部、そして複数のハニワのような使い魔達が街の一部を作り替えて侵略の拠点を作ろうとしていた。


「毎回毎回懲りずによくやるなぁ」


「ダークパワーを効率よく集めるエネルギー炉はワルイダー帝国にとって侵略に不可欠ピカ、放っておけば集めたダークパワーでどんどん魔獣を増やされてピカウサ達のラジマナ王国みたいに滅ぼされてしまうピカ」


「その話もう耳にタコが出来るくらい聞いた。戦いが始まるからピカウサは隠れてて」

「わかったピカ」


 ピカウサとの話を終えた華織は魔法を放つ杖から光魔法を発動させた。


「ピカリィショット!」


 こぶし大の光の弾がハニワ使い魔の数体に命中し、ワルイダー帝国は華織の存在に気が付くとすぐ様戦闘態勢に入る。


「くそ、魔法少女め、もうきたか!」


「ドアク大佐、あんた達の思い通りにはさせないよ」


「そう何度も邪魔はさせん! 行け!ハニワ使い魔!魔獣スイーツン!」


「ボックー!!」


 敵幹部のドアク大佐に命令されてハニワ使い魔達は口の部分からエネルギー弾を打ち出し、菓子箱魔獣は背中に背負っていたチョコスティック型の剣を引き抜き、振りかぶりながら華織に襲い掛かった。


「ピカリィウォール!」


 チョコスティックの剣が華織にぶつかる寸前、光の壁が出現して攻撃を受け止め、さらにハニワ使い魔が打ち出してくるエネルギー弾もはじき返す。


「ピカリィショット!」


 相手の攻撃を防いでいる間に華織は再び光の弾を打ち出し、真上から曲線を描いてハニワ使い魔と菓子箱魔獣に命中した。


 命中したハニワ使い魔達は全て砂になって全滅したが、菓子箱魔獣だけは特にダメージはなく、むしろ怒りを露わにしてさらにいきおいを増して光の壁を斬りつけ始めた。


 ピシ!パキ!


「まずい」


 チョコスティック剣の連続攻撃で次第に光の壁に亀裂が入り始め、たまらず華織がその場から飛びのくと、数舜遅れて光の壁が砕け散った。


「ボックゥス!」


「このぉ! ピカリィショット!」


 防御を崩されて攻撃による足止めを試みようとした華織だったが、無数に飛んでくる光の弾をものともせずに菓子箱魔獣は突き進み、今度こそチョコスティックの剣が華織に直撃しようとした瞬間、結晶体の剣が魔獣の横っ面に直撃して吹き飛ばした。


「ピカリィフラワー! 大丈夫?」


「ダイヤローズ ありがと!」


 ピンチに駆け付けてくれたのはピカリィフラワーの仲間の魔法少女ダイヤローズだった。


「今回はお菓子の箱?魔獣じゃなくて物じゃん」 


「そういう話はあと! 早くしないとドアク大佐がエネルギー炉完成させちゃう!」


 そう、戦っている間にも後方でドアク大佐と戦闘に参加していないハニワ使い魔達がダークパワーを収集するエネルギー炉を完成させようとしていた。


「よーし、ならあたしが魔獣をやっつけるからピカリィフラワーはエネルギー炉をぶっ壊して…」


「そうはさせん! スイーツン! お前の力を見せてやれ!」

「ボックゥース!!」


 ドアク大佐の言葉で倒れていた菓子箱魔獣スイーツンが立ち上がり、突然箱の身体が開いたかと思うと、その端から次々に別の菓子箱の柄が現れて、あっという間に華織とダイヤローズを含めた辺り一帯を菓子箱の迷宮に閉じ込めてしまった。


「ちょっ、なにこれ!?」


「上も迷路で塞がってる、出口はどこ?」


 天井も含めて球体上に迷宮化してしまった菓子箱魔獣に困惑する二人の魔法少女は出口を探して周りを見回すが、そう見つけやすいところにあるはずもない。


「出口がないなら作ればいいじゃん!ダイヤソードフラッシュ!」


 複数の結晶剣が迷宮に向かって飛んでいったが、菓子箱の壁は大量の菓子を迷宮のいたるところから吹き出し、結晶剣はその勢いに飲み込まれ、あっという間にピカリィフラワーとダイヤローズの所にまでお菓子が殺到した。


「うわ、これおいしいけど服がチョコやマシュマロでベタベタになる」

「そんな事よりこれ以上お菓子が増えたら窒息するでしょ! やばい、このままじゃ!」


 ビリィ!!!


 出口が見つからないまま、お菓子だけが増え続ける危機的状況の中、ピカリィフラワーがどうにか脱出しようとも搔いていると、ふいに迷宮全体がぐらりと揺れたかと思うと、紙が避けるような音がして外の光が見えた。


「ローズ!」

「わかってる」


 突然出来た脱出口から飛び出した二人は外に出ると、そこにはうずくまっているドアク大佐と砂になって消滅しかかっているハニワ使い魔、そして大きな裂け目が出来てダメージを受けている菓子箱魔獣スイーツンが居た。


「くそ、なんなんだ今の奴は! 新手の魔法少女か!?」


 ドアク大佐の言葉の意味がよくわからない華織だったが、敵が見せたその隙に杖を菓子箱魔獣に向けて発動に時間がかかる大技魔法を発動させる。


「ピカリィストーム!」


「ボックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー!!!」

「な! しまったーーーー!!」


 杖から打ち出された光の束が菓子箱魔獣に命中すると、その勢いに押されて魔獣は後方のドアク大佐と作りかけだったダークパワーを集めるエネルギー炉に激突して大爆発を起こした。


「やったー! 今日も快勝だね!」


「……うん、」


「どうしたのピカリィフラワー?」


「さっき外に出る裂け目が出来たのは何だったのかな?って考えてて…」


「あ~、確かに。もしかして他にも魔法少女が居るんじゃない?」


「私たち以外に?」


「そう、そっちのピカウサやうちのマメリスみたいにラジマナ王国から逃げてきた妖精がまだどこかに居てその子と契約した魔法少女がいたって不思議はないでしょ」


「だとしたらどうして姿を見せてくれないんだろう?」


「さぁ? 恥ずかしがり屋なのかもね」


「そうなのかなぁ?」


 自分達が助かった事は事実だが、その原因がはっきりしないことにもやもやしつつ華織は帰路に着いた。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・

 

「ふぅ、なんとかバレずに済んだな」


 戦いが始まってからずっと華織の様子を観察していた竜士は二人が菓子箱魔獣の迷宮に閉じ込められた直後、すぐさま変身して残っていたハニワ使い魔とドアク大佐に一撃を加えて身動きを取れなくし、迷宮内中の華織達に見つからないように竜断手で脱出口を切り裂いて作り、姿を隠していた。


 ――あ~、本当だったら自分達の力で解決するのが良いんだろうが、さすがにあの状況じゃ親として静観はできんかった。


 はじめ、竜士は華織の意志を尊重して見守りはするが極力手は出さないつもりだった。しかし、十キロ以上離れた音の聞き分けもできる高感度音響センサーを搭載したドラグイヤーからピンチな娘の声が聞こえた瞬間、思考を置き去りにして身体が動き、気付いた時には変身が完了して第一撃を繰り出していた。


 ――ともかく、明日からはまた宝田に協力してもらいながら見守りを続けないとな。


 そしてこの日からドラグライター 高木竜士の第二の戦いの日々が始まるのだった。


次回予告

「子どもの戦いに親が手を出すのは常識で考えてどうだろう?」

「うるさい! 悪の組織が常識を説くな!」

「とはいえ、ようやくタイトル通り魔法少女らしい話が出てきたな」

「……あぁそうだな」

「なんだドラグライダー、嬉しくないのか? 娘が活躍してるんだぞ?」

「いや、昔の魔法少女物なら悪くなかったが、最近は血みドロ系が異様に多いからそっち展開が起きないか親として心配で……」

「それは作者の気分次第だな」

「最悪はドラグスパイラルバスターで止める」

「生身の人間にあんな技放ったらそれこそ血みドロ案件だぞ」


「次回、『魔法少女の同級生』お楽しみに~!」


「頼む、平和なお邪魔で魔女な世界に展開してくれ~」

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