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2.戦友招集

次回更新は明後日になります。

 自分の娘が正体不明の兵器と思しき存在と戦っている衝撃の事実を知った翌日、竜士は職場に休みを入れてある場所に来ていた。


 そこは年季の入った道場でその入り口にはホウキで掃き掃除をするジャージ姿の男性が居た。


「おう、来たか」


「お久しぶりです(ゲン)さん」


「もう皆集まってるぜ」


 (ゲン)と呼ばれた老齢の男性に案内されて入ると、そこには3人の男女が居た。


「お、ヒーロー登場!」


「遅いわよ竜士、ジャーナリストにとって時間がどれだけ貴重か前に話したでしょう?」


「お前らうるさい、データをまとめんてんだから静かにしろ」


「みんな元気そうだな」


 そこに居たのはかつてドラグライダーがカオスムーンと戦うにあたって最初期から協力してくれた言わば戦友といえる者達だった。


 格闘道場師範の(げん)さん


 お調子者だけど裏との繋がりもあるなんでも仕入れ屋の良介(りょうすけ)


 報道ジャーナリストの薔薇崎(ばらさき)


 自称スーパーハッカーの宝田(たからだ)



 この4人が居なければドラグライダーはカオスムーンの真実を世界に公開することはできず、ひいてはあの戦いに勝つことはできなかっただろう。


「で、私たちを集めたって事はもしかしてカオスムーン絡み?」


「いや、おそらくだがカオスムーンではない」


「あれから何年経ってるとおもってんすか薔薇姐さん、さすがにカオスムーン共もまっとうな仕事について過去なんて忘れてますよ」


「……能天気」


「だね、ネットじゃいまだにカオスムーンの残党がやったと思わしきテロの情報もあるし」


「そいつは初耳だな、テレビやラジオしか知らねぇジジィだとこういう時困るぜ」


「本題に入ってもいいかな?」


 竜士の一言で雑談をしていた4人は口を閉じて彼の方を見た。


「……実はうちの娘の事なんだが」


「親バカ?」

「たは、緊張して損した~」

「おい竜士、そういう話は絵美さんとした方がいいんじゃないか?」


「いや、違うから、家庭で済ませる問題じゃなくて、なんていうかその、うちの娘がフリフリのドレスみたいなのを着てて…」


「おしゃれくらいいいじゃない」

「竜士さん、女の子が着飾るのダメとか何時代の人ですか?」

「うん、良介に同感だ」


「違うんだって! 娘の華織がなんかフリフリのドレス着てライオンと戦ってたんだって!」


「……竜士、あんた」

「夢の話かなんかっすか?」

「おい、あんまりふざけた話で人を呼びつけたんなら一本気合入れてやるぞ?」


「だから違う~~!!」


「言葉より映像見せた方が早いでしょ」


 話せば話すだけ誤解される状況にストップをかけたのはノートPCと携帯プロジェクターをいじっていた宝田だった。


「まずこれが昨日ドラグライダーの視覚センサーに記録されていた映像」


 プロジェクターから映し出された映像を見た3人はその非常識な光景に昨夜の竜士同様言葉を失ってしまう。


「なんすかこれ?なんかの特撮ですか?」

「……どう見てもカオスムーンが作りそうにない兵器ね、確かに奴らとかかわりはなさそう」

「それよりあの光は一体なんだ? 昔連中(カオスムーン)が使ってたびーむ兵器? ってのに似てなくはないが」


「そんで次がこの映像を撮った力場と同様の反応と思れるものを衛星や監視カメラ、及びネットに接続してる機器の過去ログからわかる範囲で追った発生件数と場所の分布、あくまでもわかる範囲だから実際はもっと多いかも」


 場面が変わり、映し出された日本地図の複数個所に赤点で力場発生点が表示されていた。


「都市部に集中してるわね」

「けど範囲は結構広いすね、これじゃあの兵器の本拠地を絞ろうにも」

「おい宝田、ほかに情報はないのか?」


「昨日竜士から連絡を受けて現時点まで可能な限り分析した範囲でわかっているのは…、

 1、あのライオン型の兵器と二人の女の子(内一名は華織)は敵対関係にある。

 2、ドラグライダーのセンサーや一定以上の分析機器でないと力場の存在は感知できない。

 3、力場を感知できないと外からは一切内部の異常事態は観測できない。

 4、あの女の子達はおそらく科学技術とは別の力によって刀剣やエネルギー波を行使している。

 くらいだね」


「たいして映像以上の事わかってないじゃない」


「専門でもないものを半日そこらで全部わかるわけないだろ!」


「まあまあ、落ち着いて」


 喧嘩腰で話す宝田と薔薇崎を良介がなだめるのを尻目に玄さんは竜士の方を向いて問いただした。


「で、この女の子達の一人が華織ちゃんだってんだろ? お前はどうしたいんだ竜士?」


「どうって、そりゃ止めるためにみんなに知恵を借りようと…」


「お前の考えもわからなくはない。いやむしろ大事な自分の子どもが戦いに身を投じていたら親なら誰でも止めに入るのが道理ってもんだ。けどなあ、きちんとあの子の事情は確かめたのか?」


 玄さんの言葉に竜士はハッとする。


「お前という前例もあるから華織ちゃんが望まぬ力を与えられて嫌々戦っていることも十分考えられる。が、だとしてもそれならそれで親であるお前や絵美さんに相談するなり何かしら方策を考えるハズだ。しかしそれがないというなら華織ちゃんはそうしなきゃならん秘密を抱えてまでも戦う覚悟をしたという可能性だってあるんだ。その秘密が何なのか分かるまでは強引に戦いから引き離すのは良案とは俺は思えんぞ?」 


「すいません玄さん、俺、つい大事な娘が戦いの世界に居る事が耐えられなくて、それで頭が一杯になってしまって……」


「焦る気持ちはわかるよ。俺だって昔息子を人質に取られてカオスムーンに改造人間兵器にされそうになった時は他の事なんて考える余裕もなかったからな」


「まずは情報収集ね。報道関係者の知り合いに声かけて力場や関係がありそうな事について調べてみるわ」


「街の方は衛星と監視カメラでモニターしとくよ、なんかあったらいつもの通信コードで連絡する」


「俺も業者や情報通の奴らからめぼしい話聞いてきます」


「みんな、ありがとう」


「あとはお前さん次第だぜ竜士。父親だろう?」


「は、はい、頑張ります」


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 その日の夜、帰宅した華織を待ち構えていた竜士は最近では少なくなっていた親子の会話をするべく話しかけた。


「お帰り~華織」


「……ただいま」


「今日は学校どうだった?」


「……普通、友達と話して一緒に帰った」


「そ、そうか」


「…………」


「…………」


「何?」


「え?」


「なにか用なの? 父さん」


「あ、いや、なんというか……華織になにか変わった事はないかなぁと思ってな、最近よく陽が落ちてから出かける事も増えたし」


「そ、それは……あれ! コンビニ! 新作のお菓子とか色々気になる新商品が出てるのチェックしてて」


「そ、そうなのか? 他にはなにかあったりするか? 相談したいこととか……あ、お父さんに言いづらかったらお母さんでもいい、ぞ?」


「…………ない」


「華織?」


「相談したいことなんて、ない!」


 強い言葉でそう否定すると、竜士の横を通り過ぎて華織はそのまま自室に駆け込んでしまった。


「……少し急ぎ過ぎたか」


 玄さんに諭されたばかりだというのにまだ焦って早急に話を聞き出そうとしてしまい、結果対話に失敗したことを反省しつつ、ひとまず竜士は気を取り直して次の行動を開始した。


「ドラグアイ起動」


 ドラグライダーの視覚機能だけを部分的に起動させてなにかを探すように視線を動かし、目当てのものを見つけた竜士は空中に手を伸ばし、そのままなにかを掴むような形に握ると家の外に出てた。


「さて、華織には逃げられてしまったがお前にはきっちり話を聞かせてもらうぞ」


「は、離せピカ~、なんで普通の人にボクの姿が見えているピカ~!?」 


 ドラグアイで映し出された竜士の手の中にはマスコットヌイグルミのような花を頭にあしらったウサギ耳の謎生物が握られていた。


次回予告

「なんか可愛い生物が出てきたな」

「あれ可愛いか~? ヌイグルミみたいなのに動いてるから逆に気持ち悪、」

「何を言う! あのフォルムの愛らしさが理解できんとはやはり女心が分からん奴だなドラグライダー」

「な、そんなことはねーよ!妻の絵美さんだって俺が花束持ってった時は喜んで」

「あ~それポーズね、あんまりほしくない物でも貰ったら一応は相手の事も考えないとだから」

「そんなはずはない! そんなはずは……」

「完全に否定できない時点で女心を理解してないと認めているようなものだ!」

「ならドンカオス、お前はどうなんだ!」


「次回、『魔法少女の憧れは?』お楽しみに~!」


「あ!てめぇ! 逃げやがったな! 汚ねーぞドンカオス!!!」



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