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言い伝えと職業





「ようこそ。ここは緑の平原の首都…と言いますか一大国・グリーン王国の王城でございます。」


「……………………………………………………は?」


 やっと出した言葉がそれだった。


「リ、リーフ長老。い、今なんて言いました?」


「?グリーン王国の王城だと言いましたが」


 うん、聞き間違いじゃなかった。ここはグリーン王国らしい。そしてリーフ長老の名前はリーフ・グリーン。と言うことは……


「と、ということは…リ、リ、リーフ長老は王族と言うことですか?」


「その通りでございます。私リーフ・グリーン緑原長老は、グリーン王国先代国王

でございます。」


「えっ、えぇぇぇぇ!!??」


 俺の声が王城の一室に木霊する。


「リーフ長老って先代の王国様だったんですか!?」


「はい。現在の国王は私の息子になりますな。それに今は長老をやっているのでリーフ・グリーンとなっておりますが、国王を辞めるまではリーフ・リジ・グリーンと言う名前でありました」


 リーフ長老が微笑みながらそんな事を言う。だから王城なんてとんでもない所に来れたのか。


「そしてセイヤ殿にはこれから現グリーン王国国王にあっていただきます」


「え?」


 俺の間抜けな声がやけに大きく響いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「陛下。転生者の方をお連れしました」


「通せ」


 見るからに兵士のような姿をした人が恐らくこの部屋(所謂、謁見の間)に居るであろう国王に告げる。

 俺は今、大きな扉の前に居る。そしてこれから俺は国王に会う。


 扉の横に控えていたメイドの人が扉を開ける。その部屋には金色をベースに宝石が散りばめられた豪華な玉座に座った、リーフ長老と同じくすんだ金髪に若草色の瞳の国王らしき40代位の人が正面にいた。

 国王の後ろには10歳位の国王を子供にしたような小柄な王子らしき少年がいた。

 国王の横には深藍の髪に黒い瞳の女性がいた。恐らく王妃だろう。

王子の横には、薄花色の背中の半ばまで伸びた髪で、国王と同じ若草色の瞳の13、4位の明らかに王女な少女がいた。


 玉座に座る国王の左前に宰相らしき豊富な顎髭を蓄えた老人がいた。


 そして異様だったのが性別、髪色、年齢、様々な人達が道を作るようにサイドに控えていた。

 

 しかし一番気になったのは、王女の髪に、銀色のメッシュが入っていたことだ。

この世界にも髪を染める人がいるのか?いるにしても王女がそんな事するか?


 俺が考えていると声がかかった。


「君が新しい転生者かね?」


 国王が俺に聞いてくる。


「え、あ、はい。そ、そうらしいです」


 思わず挙動不審になってしまった。まずい、落ち着け俺!


「まず、余から名乗ろうか。余は、グリーン王国国王 ベイン・リジ・グリーンである」


「私はグリーン王国王妃 リアーナ・リゼ・グリーンでございます」


 ……ベイン……意味は確か葉脈……そしてその父親のリーフ……意味は葉……わざとじゃ無いだろうな?


「ぼ、僕は…!グ、グリーン王国第二王子…レディウン・リジ・グリーンでしゅ…!

あっ……!」


 噛んだ。この王子噛んだ。緊張してるんだなぁ…。そんな王子を見て笑いを堪える臣下達。なんだこの構図…


「私はグリーン王国王女 ノーリッサ・リゼ・グリーンです」


「君の名前を教えて貰ってもよいか?」


 国王が自己紹介を促してくる。「よいか?」って断れる訳が無いんだよなぁ……


「お…じゃなかった…僕は八雲星夜です。はい」


「ヤクモ殿か…漢字ではどうやってかくのだ?」


 ……ん?今なんて言いました?漢字?えっ?ここ異世界だよね?


「あの~……今漢字って言いました?」


「うむ。言ったな」


 うん。聞き間違えじゃなかった。異世界にも漢字ってあるの…!?


「質問なら後でいくらでも聞こう。漢字を教えてもらえぬか?」 


「え、え~と…まあいいか…八雲は八に雲、星夜は星と夜で八雲星夜です」


「八と夜は分かるが『くも』と『ほし』は後でどんな文字か教えてもらえるか?」


「え、あ、はい」


 流れで答えてしまったが…国王に文字を教えるの!?責任重大じゃん…


「では…」


 国王が次に進める。


「部屋を変えようか。質問はその部屋で聞こう」


「はい」


「では、ヤクモ殿はこれの上にお乗り下さい」


 執事らしき人がリーフ長老が描いた、魔法陣と同じ物の描かれた絨毯を取り出した。……今どこから取り出した?まぁ、後で聞いてみるか…


 俺が言われた通りその上に乗ると魔法陣が光り出した。そしてそのまま転送されるのかと思いきや…


「さて、余も行くか」


「では、私達も」


 国王が玉座から立ち上がり、王妃と王子、王女が絨毯の上に乗った。


「え?」


「───『転送』───」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「…ん?」


「よし、全員居るな」


 国王が確認する。


「では、ヤクモ殿。その椅子に座ってくれ」


「は、はい」


 俺は言われるがままに指定された椅子に座る。


「さて、ここではまずヤクモ殿の職業を調べる」


「職業?」


 そう言えば、異世界に来てすぐにあった変な画面?にそんなのあったな。無職になってたけど……俺は一応学生なんだが……


「と言う訳で…これに手を置いて貰えるか」


 そう言って国王は15×15の厚さ約5cmの黒い板を取り出した。


「これにですか?」


「そうだ。そうして貰えれば、ヤクモ殿の職業や能力などが表示される筈だ」


 便利だなそれ…ともかくこの板で俺のステータスが分かるわけだ。


「ちなみにこれは魔法具…後で詳しく説明するが、その一つで『ステータス板』と言うものだ」


 ステータスを表示する板だから『ステータス板』…安直だな……まだ読み方が『いた』じゃなくて『ばん』なだけまだマシだろうけど。


「更に言うと、これは初代転生者が名付けたものだ」


「初代転生者適当だな…」


「とりあえず、それに手を置いてくれ」


「はい」


 俺はそのままステータス板に手を置く。すると…


「おぉ…」


 ステータスが空中に写し出された。その内容は…






〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


八雲(ヤクモ 星夜(セイヤ:男 16歳  


出身:地球


職業:旅人・旅芸人



能力:創造・浄化・空中浮遊・空中歩行・加速・不老・気配遮断・気配察知・身体強化・付与・魔法創造・自己再生




〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓






 職業が表示されていた。職業は旅人か…でもなんで職業が2つ?


 確認の為に国王達に目を向けると、


「……やはり職業が2つ…言い伝えが本当だったとは」


「あなた…これは…」


「あ、姉上以外に職業を2つ持つ者が本当にいるとは…」


「お父様…」


 何故か驚愕していた。何がおかしいのだろう。


「ヤクモ殿……我が…いや我らがこれほど驚いて理由を簡単に説明しようか」


「あ、はい。ありがとうございます…?」


 何故かお礼をしてしまった。あと、国王の一人称が変わってるな。驚いて素が出たのかな?


「この世界の者、または、この世界に来た転生者・転移者は全員、普通は職業は1つしか持っていない、そしてその職業をある程度は成し遂げなければならない」


「え?」


 そうなのか…でもどういうことだ?俺の職業は2つあるぞ?


「そしてこの世界の王族だけにこんな言い伝えがある。『旅人の職業を持ち、尚且つなおかつ頭髪の色が1色ではない者は職業を2つ持つ。更にその者が転移または転生者である場合、現れた国の旅人と旅をさせろ』とな。まぁ、簡単に内容を言っただけだが。ついでに言うと、旅人はかなり、かな~りレアな職業だ。たしか千年に1人とか言われてたな」


「はぁ…」


 と言うか俺の髪色は黒1色だぞ?


「あと、ヤクモ殿には旅をしてもらう」


 マジかぁ……異世界に来て早々に旅かよ……あれ?でも旅をするのは他の旅人がいるときだけじゃ…てことは…


「お察しの通り、この国…いやこの世界には旅人が1人いる。もちろんこの国に」


「でもかな~りレア職業何じゃないんですか?」


「あぁ、だから驚いていたのだ」


 あぁ、職業が2つだからだけが理由かと思ってたけど違うんだな。


「で…そのもう一人の旅人はこの王城にいる」


「え!?」


 てことは、さっきの謁見の間に並んでいた人の中にいるのか?


「それでその人物は……」


 俺は息を飲む。


「そこにいる、ノーリッサだ」


「………………え?」


 ノーリッサってことは……王女って事か……!?


「と言うわけで、これから娘をよろしく頼む」


「あっ、あの!よろしくお願いします!」 


 国王と王女が何か話し掛けていたが呆然としていた俺の耳には届かなかった……






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