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89)クマリからの挑戦

 レナンの名が出た事でティアは驚いて大声を出した。


 「……レ、レナン!? レナンを知っているの!? そ、それに……愛するって、どういう……」



 ティアは上ずった声で、眼前の黒ローブを羽織った小柄な女性――クマリに問うた。


 対してクマリは面妖な仮面を被っている為に、表情は分らないが、笑い声を上げて答える。



 「ハハハ! レナン君なら、よーく知ってるよ! その強さもね……。それで私は彼にすっかり惚れてしまったんだ! 彼ほどの男は居ないからねー。いやー、こんなに思い込んだのマリちゃん以来だよ!」


 クマリの話を聞いてティアの横に居たジョゼは有る事を思い出し、声を上げた。



 「そう! 思い出した! ずっと前……リース姉様から聞いた事が有る! 黒騎士に付き(まと)う危険な特級冒険者が居るって。 その名前が……確か、クマリ!」


 「特級……最強クラスじゃねぇか……」



 思い出して叫んだジョゼに対し、リナは青い顏をして呟いた。


 それもそうだろう……特級冒険者は王国内でも数人しか居ないとされる最強の冒険者達だ。対してクマリは朗らかに答えた。



 「やだなー! ジャガイモちゃんの妹君! 危険だなんて止めてよー! 黒騎士のマリちゃんには……何度も闇討ちしたり、ナイフ投擲(とうてき)したけど……一度だって殺す気は無かったんだ! 何よりマリちゃん、あっさり(かわ)したもんね。……君らと違って……。

 だけど……レナン君は別格だよ!! 私は本気で戦ったけど……手も足も出なかったもんなー! 思いっ切り手加減された上に気絶させられちゃった。 

 しかも! それだけじゃ無いんだよ! この前の巨獣討伐で、何とレナン君は山ごと巨獣をぶっ殺したんだ! 山ごとだよ!? 

 勇者なんて可愛い枠に収まらない……、彼は真に最強の怪物だよ! これはもう、マリちゃんと一緒にお嫁に行くしかないねー」


 「「「…………」」」



 クマリが興奮して語る内容に驚愕してティア達は固まったが、腐肉の龍とレナンの戦いを知っているティアは、直ぐに我を取り戻し気になっていた事を改めて聞いた。



 「……ライラは何処に居るの?」


 「フフフ……、あの金髪脳筋騎士の事が気になる……? さて……何処に行ったのかな? 私の言う事聞いてくれたら……教えてあげるよ……」


 クマリはそう言ってティアを脅すのであった。




  ◇   ◇   ◇




 ティア達はクマリに脅されてエバント男爵別宅の裏庭に連れて来られた。


 「……ライラまで巻き込んで……私に何の用ですか?」


 「フフフ……やっぱ、気になるよね。いいよ、話したげる。私はね……」




 ……ティアに問われたクマリはマリアベルと出会ってから追い続けている(ストーキングとも言う)事や、レナンと出会ってからの事を包み隠さず話した。



 「……そんな訳で……レナン君に君をダシに脅したら……マジ切れされちゃって……本気で殺されそうになったんだ。アレはヤバかった……。

 特級冒険者になって久しいけど、あんな恐怖を感じた事無かったもんなー。その後、マリちゃんもティアちゃんの件でマジ切れしたレナン君見て焦ったみたいで……とんでもない事を……。

 とにかく……超凄いマリちゃんや、有り得ない怪物のレナン君が凄く気に掛けてるティアちゃん……、君に興味を持ったんだ……。ってティアちゃん、聞いてるの!?」



 クマリは話し終わった後、ティアを見遣ると彼女は顔を(おお)って震えていた。


 対するティアはクマリの話を聞いてレナンが自分の事を想ってくれていた事を知って、涙が止まらなくなったのだ。



 フェルディの件が有った以降、ティアは自分の気持ちを考え続けた。レナンに対し自分が向けていたのは“弟”としての愛情なのか、どうかを……。


 考え始めた時、最初は答えは見えなかったが、離れて暮らす内に日に日に自分の気持ちが変わって来た事を感じていた。


 “レナンに会いたい……今すぐに”



 レナンの事を考えると胸が熱くなり、今更ながらの自分の想いに焦燥と後悔で気が狂いそうになりながらも、彼をどうしようもなく求めてしまう。


 “フェルディに騙されていた反動か?”


とも冷静に見つめ直したが、この想いはずっと初めから有った気持ちだと直ぐに気が付いた。


 レナンと最初に出会った……あの“箱庭”で……、あの日からこの気持ちは芽生えていたのだろう。


 しかしティアは彼と余りに近くに、そして長く居すぎて見えなかったのだ。もしくはティアが幼すぎて分らなかったのかも知れない。

 

 クマリの話を聞いて独り善がりかも分らないが……同じ気持ちをレナンも感じてくれている――。




 そんな風にティアは思い、感極まって泣いていたのだった。しかし……ティアの様子を見ながらクマリは冷ややかな調子で話す。


 「……あのマリちゃんやレナン君が……気に掛けるから……凄い子なんだろうなーって思ったけど……大外れみたいだねー。

 大した力も容姿も無いのに……縁故で傍に居ただけのレナン君に……自分が捨てた癖に今更ながら(すが)る……。こんなみっともない残念な女は見た事が無いね。

 ティアちゃん……妹のソーニャちゃんにも言われたみたいだけど……君にはレナン君は全然釣り合わないよ? 悪い事言わないから……その辺の酒場で女、漁ってる馬鹿男と恋愛ごっこしときな? あぁ、レナン君の見えない所でやってね」


 「オイ! アンタ何言ってんだよ!!」

 「あんまりです!! クマリさん!」


 クマリの言葉を聞いたリナとジョゼは憤慨して詰め寄った。対してティアは彼女達を制止する。


 「二人共、怒ってくれて有難う……、だけど……実際私がみっともないのも……馬鹿なのも……その人が言った通り……。

 クマリさん……貴女は私に色々言い放ったけど、そんな事……自分が一番分ってるわ……」



 クマリの挑発した声にティアは彼女を睨みながら言い返す。対してクマリはおどけた調子で答えた。


 「ふーん……残念令嬢から……少しは成長したって事? フフフ……まぁ、いいさ……それで、私が君を呼び出した理由だけどね。

 君に興味が有ったのもそうだけど……、どうしても君に“教えてあげたい”事があってね……。それで御足労願った訳さ……」



 クマリは軽い口調でティアに話すが、その言葉に棘を感じる。対してティアはそんなクマリに問い返す。


 「……“教えてあげたい”事……?」


 「ああ……私はね……ティアちゃん……改めて君の事を調べたんだ……。

 ティアちゃん……君は……マリちゃんの妹の、ソーニャちゃんに踊らされ……フェルディとか言うクソ野郎に騙され……レナン君を捨てた君は……自己嫌悪で引き篭もった……。

 此処までは、残念極まりないけど私には関係ないから……まぁ許容範囲さ。

 だけど……。その後、ソーニャちゃんに励まされ……復活した君は“有る事”を決意したよね……。

 ティアちゃん……君は冒険者になって……マリちゃんやレナン君より強くなり? レナン君を取り戻すんだって? ククク……笑わせるなよ」


 「「「!!……」」」


 声を低くして呟いたクマリが放った殺意に圧倒されティア達は固まった。



 クマリは、木剣を懐から出してティアの足元に突き刺した。


 “ヒュン!”


 “ズガ!”


 「手に取りな……小娘……。お前に身の程を教えてやるよ……。その木剣で私に一撃でも与えたら……ライラとか言う金髪脳筋女を返してやる」


 こうして特級冒険者のクマリはティアに戦いを挑んだのだった……。



いつも読んで頂き有難う御座います!



 追)冒険者のクラス見直しました!

 追)一部見直しました!

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