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83)漆黒の龍-3

 再度迫らんとする大量のジズやレギオンに対し黒き龍は微動だにせず、立ち姿のまま両腕を組んだ状態で浮かんでいる。


 迫り来るジズやレギオンなど、何億匹迫ろうが意に介さないと言った様子だ。


 そんな黒き龍は(おもむろ)に口を開けた。鋭い牙が生え揃ったその(あぎと)に、あっという間に眩く(あふ)れる光が生まれる。


 

 “キイイイイイン!!”



 甲高い音を立てながら集まる光。


 その眩い光を十分に溜めた黒き龍は此方に向かって来るジズやレギオン……、そして迫る龍共の背後に居る空中戦艦に向け(あぎと)内の光を放ったのであった……。


 “キュドドドン!!”

 

 黒き龍がその(あぎと)から放った破壊光線――その光は長大な輝くレーザーの様にジズやレギオンを一瞬で蒸発させる。



 その光は超高熱と恐るべき破壊力を持ち、放たれた光の軸線上に居たジズやレギオン……そしてその背後にて退避しようとしていた空中戦艦を貫いた。


 “キュボボボ!!”


 黒き龍の破壊光線は、圧倒的な破壊力で貫かれた存在は無機物、有機物の区別なく焼き尽くされ消滅した。


 その破壊光線はレナンが相対したレギオンやゴリアテのそれとは、比較にならない圧倒的な破壊力を持っていた。


 放たれた光線は黒き龍がその首を大きく動かした為に、破壊光線は水平に伸びて放たれる。


 破壊光線は円弧を描いて幅広く広がり、その範囲に居た存在は全て超高熱で爆散した。


 “ゴガガガガガガアアアン!!”


 黒き龍が放った破壊光線により撤退しようとしていた艦隊は残存総数6隻の全てが爆散し全滅した。


 艦隊の周囲に居たジズやレギオンも同じく、破壊光線の超高熱で全数が蒸発し消滅したのであった。



 ――こうして漆黒の龍へと姿を変えた血染めの少年により、新生軍が誇った全長500mを超えるメルカヴァ級空中戦艦17隻の大艦隊と……空を埋め尽くしていた人造龍のジズとレギオンは全て全滅したのであった……。




   ◇   ◇   ◇




 ――所変わってギムル皇国の玉座の間……。


 白き偽神のゼペドとアニグは、メラフに促され血染めの少年、いや漆黒の龍の戦いの記録を見せられていたが……。


 最後に黒き龍が放った破壊光線で全ての艦隊が消滅し、見ていた記録映像は突然ブラックアウトした。



 記録映像は砂の様な黒色の画面の映し出したまま、もはや何の状況も移さない。 

 

 「「「…………」」」


 押し黙るゼペド達3人の前に黒色のブラックアウト画面が放つノイズ音だけが玉座の間を支配する。


 “ザアアァァァ……”



 そんな奇妙な音が支配した玉座の間……。


 記録映像をゼペドとアニグに促したメラフは絞り出す様に呟いた。



 「……以上が……本国から送られてきた戦闘……記憶映像だ……。この戦いで……我等新生軍の……メルカヴァ級空中戦艦の艦隊は……第6艦隊と……第7艦隊の半数を失った……。この損失は新生軍が保有する艦隊の……実に21%に当たる……大損害だ……」


 メラフの呟きに押し黙っていたゼペドが反論する。


 「? ……今見た映像では……第6艦隊の艦影しか無かったが? 第7艦隊の半数が失われたとは……どういう事だ?」


 「……流石に分るか……。お前の言う通り……残された映像に映っていたのは第6艦隊だけだ……。

 この戦いの後、血染めの奴は……後方支援で控えていた……第7艦隊に所属する、8隻のメルカヴァ級空中戦艦を破壊した……。遠方からの攻撃だった為、避ける事も敵わず……一瞬で8隻の空中戦艦は……破壊されたとの事だ……。その為、記録映像等も残っていない……」


 「……血染めめ……調子に乗りおって……」



 メラフの暗い声に、ゼペドは悪態を付いた。対して横に居たアニグが現状を受け止められず叫んだ。


 「ば、馬鹿な! こんな筈がないよ!! だって、メルカヴァ級だよ!? あの巨大さだよ!? それが……何かの間違いだ!」


 叫ぶアニグの言葉にメラフは青白い顏をしたまま呟く。


 「……お前がそう言うのも分る……。俺も映像を見た後……信じられない気持ちから……エゼケルで艦隊の全滅を確認してみたからな……。

 それだけでは無く、更に第6艦隊に所属する者達に連絡を取ってみた……。結果は、誰一人連絡は付かなかった……。それでも受け入れがたい気持ちから……俺は本国にも問い合わせたんだ。

 その結果……極めて残念ながら事実である事が確認された……」



 力なく呟くメラフの言葉に、アニグは納得できず大声で聞き返す。


 「……だったら! ジズはどうなんだよ! 第三形態に変異できる王族への、切り札として開発された筈だ!」


 「結果は、見ての通り……技術開発局が鳴り物入りで生み出したアレは……突っ立っているだけのカカシよりも役に立たん……。

 ジズは圧倒的な再生力と火力を持つとの謳い文句だった筈……しかし、大きさが血染めと同じであろうが……、大量に居ようが……実際の所は魂無き鎧では勝てんと言う事だ」


 「「…………」」



 メラフの言葉にゼペドとアニグは押し黙った。メラフは淡々と連絡事項を伝える。


 「……とにかく……今回の大敗を受け……新生軍では大幅な編成の練り直しを行う事となった……。我々は……エゼケルに乗って本国に戻った後……残存した第7艦隊と合流する事となる……。準備が出来次第、この箱庭から出立する……。分ったか?」


 「おのれ!……何故……このタイミングなのだ……! 奴はこの一年、こんな大規模な反攻は無かった筈……!」


 メラフの言葉を受け、ゼペドは悔しくて堪らない様子で叫ぶ。対してメラフは……。



 「……知らん……確かに奴は……クメルト城での敗戦の後……動きは無かったが……」



 そう呟いて両手を祈る様に組み、下を向いて震え出した。その様子を見たアニグが驚き声を掛ける。


 「ど、どうしたんだ!? メラフ!」


 「……わ、分らないのか!? あの映像を見ただろう! 奴の恐ろしさを! 永きリネトアの歴史の中でも奴ほどの化物は居ない……! こ、これは呪いだ! 我等新生軍に……滅ぼされた王家の呪いにより! 血染めは恐るべき……魔王となったのだ!」


 取り乱したメラフは閉じ込めていた感情を一気に爆発させて叫んだ。その様子に横に居たアニグは小さく呟く。


 「……血染めが……ま、魔王……?」


 「そうだ……魔王だ……。 良いか、お前達……良く考えろ……。俺達が本国に戻った後……もし……もしだ……血染めが……あの魔王が、俺達の前に立った時だ……! 俺達は……間違いなく死ぬ!! 奴には誰も勝てん……!」



 そう言って震えるメラフに対し、ゼペドが彼を殴り飛ばした。


 “ドガア!!”

 

 「うぐぅ!!」


 殴られたメラフは部屋の隅まで吹き飛ばされた。殴られて蹲るメラフに対し、ゼペドは苛立ちを憶えながら叫ぶ。


 「……臆病風に吹かれたか、メラフ! 我等は誇り高きヴリト! 戦わぬ者等ヴリトでは無いわ! 血染めが魔王? 上等だ! この俺が奴に引導を渡してくれる! アニグ、その臆病者を連れエゼケルにて、本国リネトアに向かうぞ!」


 「……分ったよ……、行こう、メラフ」


 「……や、奴には勝てん……俺達は死ぬんだ……」 


 メラフはアニグに促されて力なく立ち上がり二人して玉座の間から出て行った。上空に停めてあるエゼケルと言う船に向かうのだろう。



 玉座の間に残されたゼペドは、今だ死体の片づけを行っている皇帝ユリアネスに向け叫ぶ。


 「醜い豚よ! 良く聞け! 我等は(しば)し、この地を離れる! しかし、我等は必ずこの地に戻ってくる! その間、忌まわしきロデリアを滅ぼす為に、ギナルの民は一丸となり戦うのだ! これは神の命と知れ!」


 「は、はい。白き神よ、全て仰せの通りに!」


 そう叫んだ皇帝ユリアネスは死体を片付ける仕事を行っていたが、ゼペドの声を聞き感極まってゼペドの足の甲に口づけをする。


 そんな浅ましい皇帝ユリアネスを見下しながらゼペドは呟く。


 「(しば)しの間、猶予を与えてやろう……不遜(ふそん)なるロデリアの下等動物共め……。しかし我らが戻りし時、貴様達は残党の小僧と共に滅ぼしてくれるわ!」


 ゼペドは悔しそうにそう叫んだ。宣言を行った彼は、アニグ達と共に本国に戻る為、玉座の間から出て行った。


 こうしてロデリア王国を今まさに滅ぼさんとしていたギムル皇国の白き偽神は“箱庭”と呼ばれるこの地を去った。


 “箱庭”から去るゼペド達3人は各々が怒りと不安と恐怖と言った各々が違う感情を抱きながら本国に向かう。



 しかし……彼らは知らなかった。



 “箱庭”に災い成す新生軍を本国の戦いに向けさせる事こそ、“血染めの少年”の目的であった事を。


いつも読んで頂き有難う御座います!


 追)今後の展開の為一部見直しました!

 追)名称に記入ミスが有った為見直しました!

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