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72)巨獣討伐-18(巨獣復活)

いつも読んで頂き本当に有難う御座います!

 先日も御連絡させて頂きましたが、この箱庭Ⅰの投稿日を水曜日と日曜日の週二回とさせて頂きます。2か月近く週三回ペースで投稿しておりましたが、仕事上7月1日より出張が多い立場となりまして、原稿が追い付かなくなりまして、恐れ入りますが週二回とさせて頂きます。


 従いまして次話は水曜日の7/3予定です。今の所このペースで最後まで何と行きたいな、と思っております。お待たせして大変申し訳ありませんが何卒よろしくお願い申し上げます。

  死んだ筈の巨獣の腕に掴まれ、宙に持ち上げられたクマリ。


 「ちょ、ちょっと!? くそ! コ、コイツ!!」


 クマリは叫びながら何とかしようともがくが如何にもならない。何とか掴まれているローブを外そうとするが、吊り上げられた状態では体の自由が効かないからだ。


 そうこうしている内に、仰向けに寝ていた巨獣はその身を起こし、立ち上がろうとする。


 “ズズズズ!!”


 巨獣はレナンに内側から貫かれた傷は修復しつつ有る様だ。大きく切り惹かれた頭の傷も修復が始まっている。巨大な手に掴まったままのクマリは焦りを感じながら叫ぶ。


 「クッ! こ、こうなったら!! “星巡る風よ 我が前に集いて大剣となり 敵を討ち滅ぼせ!” 烈風斬!!」


 クマリは宙に浮かされながら、上級風魔法を唱えた。この魔法は風を集めて大きな剣となし、敵を薙ぎ払う技だった。放たれた風魔法は巨獣の胸部に命中した。


 “ゴヒュウ!!” 

 “ザイン!!”


 胸部に命中した風魔法は、本来なら巨獣位の大きさなら両断出来る程の威力を秘めていたが、彼の巨獣は頑丈である為か、幅広い切り傷を刻んだだけで終わった。


 その傷も泡立つ様に(うごめ)き修復されていく。


 そんな中、巨獣は完全に立ち上がり、クマリを空高く持ち上げた。そして巨大な頭部を向け、無数の牙が生え(そろ)う口を大きく開けた。



 ――クマリを喰らう心算だろう。



 「!! お、おい!? ちょっと、コイツ! や、やめろ!!」


 クマリは食われると分って大きくもがくが抜け出す事は出来ない。その様子を地上から見るソーニャ達は叫んでいた。


 「大変! ク、クマリちゃんが!?」


 対してマリアベルは大剣を掲げ巨獣の足に切り掛かりながら叫ぶ。


 「ク、クマリ!! 化け物め ソイツを放せ!!」


 しかしそんな抵抗も空しく巨獣はクマリを口元に運び今まさに食わんとする。堪らずクマリは大声で叫んで抵抗する。


 「こ、このバケモノ!! わ、私なんか食べても美味く無いぞ!? は、離せ!! や、やばい!」



 クマリが巨獣の口の中に放り込まれんとした時、白い影が巨獣を駆けのぼった。


 巨獣に飛び乗りその体を飛び蹴って駆けあがった白い影――レナンはあっと言う間に巨獣の口元まで辿り着いた。


 “ダッ! ダン! ダン!”


 そして強化魔法を重ね掛けした体を白く光らせながら、異形の右手の棘と左手の宝剣にてクマリを掴む巨獣の手を一閃した。


 “ザシュ!!” 


 “グモオオオオ!!”


 レナンが巨獣の手に向かい一閃すると、クマリを掴んでいた野太い指が2本切断された。


 巨獣は痛みの為、叫び声を上げながら身を大きく(もじ)った。対してクマリは指が切断された事で空中に放り出されてしまった。



 “ダン!”

 

 “バッ!!”



 落下するクマリをレナンが素早く抱きかかえ地上に降り立った。



 「……大丈夫ですか? クマリさん?」


 「う、うん……ありがとう……レナン君……」


 レナンはクマリを抱き抱えたまま優しく問い掛ける。対するクマリは戸惑いながら礼を言った。


 レナンは彼女を降ろし次いで話す。


 「クマリさん……奴の相手は僕が引き受けますので下がって下さい」


 レナンはそう伝えた後、宝剣を構え巨獣に飛び掛かって行った。



 助けて貰った事に、クマリは戸惑い固まっていた。強者であり、尚且つ亜人の冒険者として唯一人で生きて来たクマリは誰かに助けて貰う事等、ほとんど無かったのだ。


 そんな戸惑うクマリの元にマリアベル達が近づく。



 「クマリ、大丈夫か!?」

 「う、うん……だ丈夫だよ、マリちゃん」


 「クマリ……お前は一旦後ろに下がっていろ……。我等は今より巨獣を叩く」


 「……え? だけど……さっきの戦い見たでしょ? レナン君があれだけやっても……あの巨獣は死ななかったんだよ? マリちゃん達に出来る事なんて……」


 「かも知れん……だが、我等は騎士であり討伐隊だ……この国に害なす巨獣を叩く為に集った。この戦い、レナン一人に押し付けん」


 「……マリちゃん……」


 「何より……私はレナンの父に誓ったのだ……アイツを遣い潰す様な真似はしないと……そしてレナンが大切に想う故郷と……その姉を守るとな……。

 ならばこそ私はレナンと共にこの王国を守る為に……戦う! それでこそ……妻の役目だ。お前達! 我に続け!」


 マリアベルは大剣を掲げ討伐隊を率いて巨獣に向かっていく。クマリはその様子を眺めながら呟いた。


 「……馬鹿だね……出来る事なんて無い筈なのに……相変わらず真面目過ぎるよ、マリちゃんは……でも、妻の役目か……。それと……レナン君の姉……それが元婚約者のティアちゃんだった筈……一体どんな子だろう……」


 クマリはマリアベルの誓いを聞いて、改めてティアに興味を持つのであった。




  ◇   ◇   ◇




 「ハァ!!」


 “ザイン!”


 “ゴウエエエ!”


 レナンは右手の棘と左手の宝剣で果敢に巨獣に斬り掛かった。


 切り掛かった後、レナンは街道横の木の枝に降り立ち、彼の巨獣を見遣る。


 対する巨獣は鈍重である為、簡単にレナンによってその巨体に傷が刻まれるが、見る間に修復していく。


 先程レナンがクマリを助ける為に切り落とした指も既に再生されていた。その状況に内心レナンは焦りを感じていた。



 (……光の蔦で、巨獣の体をズタズタに切り裂いた筈……しかし、巨獣には効かなかった……。やはり“アレ”で完全に消滅させるしか……手は無いのか? まるでソレしか倒す方法が無いみたいに感じさせられる……

 まるで……僕に“殺してみろ”って言っている様だ……まさか……そうなのか?)




 レナンは剣を構えながら巨獣を見つめ考えている内に、恐ろしい考えに行きついてしまった。


 その考えを裏付けする様に巨獣は、レナンが見たどんな生き物とも違う。


 アンバランスな肥大した上半身、圧倒的な再生力、光線を放つ半透明の器官、そして……棘の魔獣……。


 その全てが戦う為だけに用意された様に思えてくる。そしてそれはレナンと戦わせる為に用意された様に思ってしまったのだ。


 このまま巨獣の進撃を許せば、待っているのは王国の壊滅……。


 レナンが止めなければ巨獣は王都を滅ぼし、その結果このロデリア王国はギナル皇国に攻め込まれ、そして滅亡するだろう。



 そうなれば故郷のアルテリアやティアも唯では済まない……。



 巨獣を止めなければ、この王国に未来が無い事を悟ったレナンは、自分と巨獣との戦いが避けられない事を理解した。


 そしてこうなる様に仕向けられた様に感じ、言いようの無い気持ち悪さを感じたのだ。


 「……そんな訳無いよね……だけど……何れにしても“アレ”は使わない……」


 レナンは自分の推理を振り払う様に呟いた。


 巨獣の歪さが、まるで“レナンと戦わせる為に造られた存在”で有るかの様に感じれらたのだが、現実的にそんな訳が有る筈がないと、自身の考えを否定したのだ。


 しかし一方で巨獣の背後に見え隠れする“第三者の意図”に反発する様に声に出して、腐肉の龍を滅ぼしたあの技を使わないと誓うのだった。

 

 「……いずれにしても早く倒さないと……ん? アレはマリアベル達か?」


 レナンが降り立った木の枝から下を見下ろすとマリアベルを始めとする討伐隊が一斉に巨獣に切り掛かろうとしている所だった。


 「このままでは拙い……また、同じ事の繰り返しだ……」


 pレナンは巨獣の背後に見え隠れする“第三者の意図”に苛立ちを憶えながら、マリアベルの元へ飛び降りるのだった。





一部見直しました。

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