表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/370

65)巨獣討伐-11(クマリ参戦)

 棘の魔獣殲滅の為、光魔法を放とうとしたレナンに対し、巨獣はその巨大な腕を彼に振り降ろさんとした。


 「クソ!!」


 レナンは魔法の発動を止め、ソーニャを抱き横に飛んだ。


 “ブオン!!”

 “ドガガアァ!!”


 巨獣の振り降ろした豪腕が地面に激突し、地盤を抉り大音響と共に、地を震わせた。


 レナンはソーニャを地面に降ろすと彼女に伝える。


 「……どうやら、奴は僕を危険視した様だね……。僕に構わずソーニャはマリアベルの元に居てくれ」


 「いいえ、そう言う訳には……! 私は貴方を守る為にこの場に残ったのです」


 「有難う、でも僕の事は構わないから、この場から離れて欲しい。奴を抑えない限りあの魔法は使えない」


 「で、でも貴方お一人では余りに危険で……! そうか……私が居たら邪魔なのね……」


 レナンが一人で巨獣を抑えるという言葉にソーニャは強く反発して、反論している最中に自分がこの場に居ればレナンの足かせとなる事に気が付き、悔しそうに呟く。



 対してレナンは彼女の肩に手を置き静かに答えた。


 「……僕よりもマリアベルが心配だ。僕は大丈夫! 何とか隙を見つけて……あの魔法放つから……君はマリアベルの方に向かってくれ!」


 「……分りました……。悔しいですが私では貴方の邪魔となりますわ……。一旦此処を離れますが……必ずお姉さま達と戻って……」11


 「!! 危ない!」


 “ズズズズズ!”


 ソーニャとレナンが話している内にも巨獣は彼を捕まえようと巨大な腕を伸ばそうとする。


 レナンはその様子を見て叫びながらソーニャから急ぎ離れ、自ら囮となるべく巨獣の前に躍り出て剣を振り上げて巨獣に向け大声で挑発した。


 「おい! このウスノロ!! 僕が相手だ、こっちへ来い!! ソーニャ、早く!」

 「!……レナンお兄様、直ぐに戻ります! どうか御無事で!」


 ソーニャは後ろ髪を引かれる思いで叫びながらマリアベルの元に向かった。その様子を見送ったレナンは安堵しながら小さく呟く。


 「……良かった……マリアベルの元なら、彼女も安全だろうからね……」


 レナンの呟き等無視して巨獣はその巨大な腕を振り上げ、彼目掛けて叩き付けた。


 “ドガガアァン!!”


 巨獣の一撃は凄まじく、大音響と共に大地は震え巨獣の振り降ろした拳によって地面が陥没し穴が開いた。


 対してレナンはあっさりと巨獣の一撃を大きく後方に飛んで躱していた。もし此処にソーニャが居れば、今の一撃で吹き飛ばされていたかも知れない。


 レナンは不敵に巨獣に向かって叫ぶ。


 「さぁ! バケモノ! さっさと片付けてやる! 掛かって来い!」


 “ゴオオオオエエエ!!”


 レナンは巨獣を挑発し、対する怪物は怒り狂って大声で吠えた。その叫び声は大気を震わすほどだった。


 対してレナンは何の気負いも恐れも無く一人巨獣に向かうのであった。




   ◇   ◇   ◇




 一方マリアベルは棘の魔獣に襲われた討伐隊を助けるべく鬼化して戦っていた。


 「喰らうがいい! オオオオ!」


 “ザギン!” 

 “キシャヤアア!”


 鬼化した事で規格外の膂力により振り降ろされた大剣の前では、頑丈な棘の魔獣と言えど唯では済まず、マリアベルの剣の前に次々と倒されて行った。


 この辺りに居た棘の魔獣は概ねマリアベル達が倒した様だ。



 そんな中、マリアベルを呼ぶ声がした。ソーニャだ。


 「お姉様! 良かった、御無事でしたか!」


 「ソーニャ!? お前……どうして此処に? レナンはどうしている?」


 マリアベルはこの場にソーニャだけ現れた事が腑に落ちず彼女に問う。対してソーニャは自分が此処に来た理由をマリアベルに説明した。




 「……と言う訳で……レナンお兄様の指示でお姉さまの元に参りました……」


 「そうか……確かにあの場にお前が居ればレナンは満足に戦えまい……。それは何もお前に限った事では無い……。レナンと巨獣の戦いの間では私ですら邪魔になるかもな……。しかしだからと言って安穏とする訳にいかん! このまま急ぎ虫の魔獣を倒しレナンの元へ戻るぞ!」


「「「「はい!!」」」」


 マリアベルはその場に居た白騎士達や討伐隊に声を掛け、棘の魔獣を駆逐せんと森の奥へと向かう。


 この場ではマリアベルや白騎士隊達が目に付いた棘の魔獣を倒したが、森の向こうでは未だ大量の魔獣が居る模様だ。



 駆けていくマリアベル一行に頭上から能天気な明るい声が響く。



 「やぁ! マリちゃん! いい天気だね! 所で随分楽しそうな事してるけど手伝って欲しいかな?」


 「! そ、その声はクマリ!? き、貴様……昨日は良くも我が夫にちょっかいを掛けてくれたな!」


 「おのれ! クマリ! 此処で会ったら百年目! 神妙にしろ!」


 マリアベルの頭上から現れた特級冒険者にしてストーカーのクマリは、駆けていくマリアベル達の頭上で木々を足場にして跳躍して進みながら声を掛けた。


 対してマリアベルは彼女に対し大声で抗議し、白騎士オリビアは駆けながらクマリに凄む。



 クマリは人外の跳躍力で飛びながらマリアベルに話した。


 「えー? まだレナン君とは婚約中でしょ? 彼の事、好き過ぎて勝手に夫公言しちゃってるんだ? それは痛いよ、マリちゃん?」


 「ううう、うるさい! お、お前に関係ないだろ!?」


 クマリは凄むオリビアをあっさり無視しマリアベルに対して呆れた口調で答える。


 クマリの中ではマリアベルとレナン以外はジャガイモ程度の興味しか無い様だ。クマリに指摘されたマリアベルは大声で怒りながら走る。


 「まぁー、レナン君相手じゃ浮かれちゃうの仕方無いけどねー? 此処で宣戦布告ー。僕もレナン君狙うからねー? 別に彼は君一人だけのモノって訳じゃ無いしー。おっと! 虫発見ー! 退治しまーす」


 「ちょ、ちょっと、お前! それどういう意味だ!? !……虫の群れか! 邪魔だ!」


 木の上を飛び走りながら好きな事を云うクマリに対し、マリアベルが盛大に文句を言おうとした最中に、逃げ惑っていた討伐隊を襲おうとしている棘の魔獣の群れに遭遇した。


 対してマリアベルは悪態を付きながら、大剣で棘の魔獣に切り掛かる。


 “ザシュ!!”

 “ギキキキイイ!”


 マリアベルの斬撃を皮切りに、他の討伐隊達も棘の魔獣相手に攻撃を加える。


 だがやはりマリアベルの様に効果的では無く動きを押し留めるのが精一杯の様だ。そんな中、電撃参戦したクマリは木の上から降立ち、羽織ったローブの間から銀色に輝く金属の爪を覗かせながら呟く。


 「……ジャガイモちゃん達はどうでも良いけど……弱いコイツ等守る為にマリちゃんはどうしても無理するからなー? 早くレナン君の所に行く為、手伝うか……」


 クマリはそんな風に呑気に呟いた後、そして銀の三つ爪を胸の前に交差し、次いでゆらりと体を動かしたかと思うと恐るべき速さで棘の魔獣の群れに突進した。



 “ギキキン!!” 

 “ギュウウウエ!!”


 そして体をコマの様に回転させながら銀の三つ爪を一瞬で振るうと、棘の魔獣はバラバラに崩れ去った。その様子を見ていたマリアベル達は驚き呟く。


 「……相変わらず強い……」

 「す、凄い! お姉さま、あの銀の爪は特別性なのですか? そうで無いとあの切れ味は有り得ません……」


 「……私も詳しくは知らな……」

 「教えて上げるよ、妹ちゃん! 私にはマリちゃん同様秘密が有ってね、この銀爪に風魔法を付与出来るんだ! それで切れ味増してんのさ! 凄いだろ?」


 クマリの技を見て呟いたマリアベルにソーニャが問う。マリアベルが答えようとしている途中に機嫌が良い為か、その問いにクマリ本人があっさりと答えた。


 本来冒険者は自分の特技や能力は隠したがるモノだが圧倒的強者であるクマリにとってはどうでも良い様だ。次いでクマリは話し続ける。


 「僕はねー、風魔法が得意なんだー。今見せたげるよ! “力ある風よ、集いて我が敵を切り刻め! 風牙!”」


 クマリはそう叫んで下級風魔法を放ったのだった。




一部見直しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ