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64)巨獣討伐-10(総崩れ)

 レナンの先制攻撃により巨獣の背中に生え揃っていた棘の魔獣は切り刻まれた。


 もう彼の魔獣による脅威は無いと踏んだマリアベルは巨獣に一斉攻撃を仕掛ける。討伐隊一行は巨獣に対し先ずは、魔法や弓で攻撃した。


 “ドパァン!”

 “ビガガ!!”

 “ビス! ビシュ!”


 周囲から一方的に攻撃を受けた巨獣は地を揺らす様な大声で吠る。


 「ギュオオオオォ!!」


 レナンの光魔法で背中の棘を破壊され、討伐隊から魔法や弓で攻撃された巨獣はダメージを受けた為か腕を地に着け(うずくま)った。


 “ドズゥウウン!!”


 土煙を上げて前に倒れ込む様に手を付いて(うずくま)る巨獣。


 先程と同じ状況だが、棘の魔獣はレナンの魔法で殲滅した為、放たれる事は無い筈だ。そう確信したマリアベルが叫ぶ。


 「一気に叩くぞ! 我に続けぇ!!」


 討伐隊に攻撃を指示したマリアベルは大声で雄叫びを上げ、赤黒い光を身に纏いながら駆ける。鬼化して強力な攻撃を巨獣に与える心算だろう。


 討伐隊の面々は巨獣を囲み、一斉に攻撃を開始した。剣を持つ者は斬撃を与え、弓を持つ者は矢を放った。魔法を得意とする者は詠唱を唱え放った。


 “ザギン! ビシュ! バガガン!”


 巨獣に激しい攻撃が加えられ、幾度となく火や雷等にその巨体は晒された。巨獣は攻撃が効いている為か(うずくま)ったまま、ピクリとも体を動かさない。


 そんな中、マリアベルはソーニャ達白騎士隊とレナンを連れて走り巨獣の頭部へ向かった。


 しかし巨獣は顔面を覆う様に(うずくま)った為、頭部は隠れて見えない。その様子に苛立ちを覚えたマリアベルは悪態を付く。


 「チィ! 不細工な面を隠しおって! ならば、その首を掻き切るまでだ!」


 マリアベルは叫びながら巨獣の背中と判別がつかない程の幅広く太い首に切り掛かった。


 “ザザン!!”


 鬼化して人外の膂力を持つマリアベルの斬撃は巨獣の太すぎる首に大きな切り傷を与えた。


 その傷は長さ1m程で厚い皮膚を切り、内部の赤い肉が見えた。但し深さは余り至らず、巨獣の図体からすれば小さな引っ掻き傷程度のダメージだろう。


 「続けていくぞ!!」


 マリアベルはそう叫んで斬撃を繰り返すべく大剣を振り上げたが……。


 “ズズズズ!” 


 「なに!?」


 先程マリアベルが斬撃により与えた傷が(うごめ)きあっと言う間に塞がってしまう。そして巨獣はその巨体をブルブルと震わせ始めた。

 

 

 次いで至る所に付いているカエルの卵の様な半透明の器官が怪しげな光を放ち出したのだ。


 「傷が塞がっちまったぞ!」

 「な、何が起ころうとしているんだ!?」

 

 蹲った巨獣に一斉攻撃をしていた討伐隊の面々は突如見せ始めた巨獣の変化に驚き、戸惑い叫ぶ。



 そんな中、巨獣の半透明の器官が急激に光を強めだした!



 その状況に嫌な予感がしたレナンは討伐隊全員に向け叫ぶ。


 「み、皆! 巨獣から離れろ! 早く!!」


 “キュド!!!”


 「ウギャァアアア!!」

 「ギャアア!!」

 「ヒィイイイ!!」

 「熱い! 熱いよ!」


 レナンが叫び終わる間際に巨獣の半透明の器官から真白い光線が一斉に放たれた。


 レナンの声を聴いて勘のいい者達はすぐさま巨獣から距離を置いたが、応えなかった者、聞こえなかった者達は巨獣が放った真白い光線に焼かれてしまう。


 巨獣が放った光線により、原型を留めず灰となり(むくろ)になった者、半身を無くした者、熱波で焼かれた者等……多数の犠牲者を出し討伐隊の面々は総崩れになった。


 巨獣の半透明の器官から放たれた光線は四方八方に放たれ、その光線の軸線上に在ったモノは全て焼かれ、地上に在っては赤熱した焦げ跡が続いている。


 巨獣の半透明の器官は背中の棘の魔獣と同様、邪魔と為る存在を一掃する為の防御器官の様だ。


 巨獣に取っては討伐隊など小虫に過ぎず、ただ息をするより簡単に薙ぎ払っただけだ。


 無造作に放たれた光線で巨獣を中心に放射状に赤熱した焼け跡は広がり、光線の軸線上にいた討伐隊の者達は焼き払われ死亡した。


 レナンが事前に危機を察知して叫んだ為、回避出来た者は多く居たがそれでも巨獣が放った光線による被害は討伐隊に取って甚大だ。



 その様子にマリアベルに慌てながら指示を出す。


 「そ、総員後退! 巨獣から距離を取り体勢を整えるぞ!」


 光線により討伐隊の面々は散り散りになって総崩れになっていたが、マリアベルの声を聞き彼等は一斉に森の奥に逃げ込んだ。


 その様子を感じた為であろうか、(うずくま)っていた巨獣はゆっくりと立ち上がった。


 “ズズズズズ!”


 すると、立ち上った巨獣の背に残っていた棘に動きが見られた。


 レナンの先制攻撃により巨獣の背に生えていた棘はズタズタに切り刻まれていたが、巨獣が立ち上がった事で急に(うごめ)き始める。


 そして巨獣の背中から甲高い音が響いた。


 “ビギン! パキン! ガキン!”


 突如巨獣の背中から何かが外れる様な音が響き、(うごめ)いていた棘の残骸は押し出される様にズルズルと抜け始め、一斉に巨獣の背から抜け落ちた。


 “ゴトン! ガガン! ボドン!”


 抜け落とされた棘の魔獣はレナンの光魔法により絶命しておりピクリとも動かない。


 抜け落ちた巨獣の背には、棘の魔獣が埋まっていたであろう孔が無数に空いている。


 その無数の孔がサンゴの口の様に一斉に閉じたり開いたりと忙しく動き出した後、無数の孔から新しい棘が瞬く間に生えて来た。


 “ズズズズ!!”


 そして続け様に巨獣の背中一面に生えている鋭角な棘が(うごめ)きだし、又も甲高い音を響かせる。


 “バキン! ビキン! ガキン!”


 巨獣の背中から何かが外れる様な音が響き渡った。そして続け様に巨獣の背中一面に生え揃った鋭角な棘が動きだし、光を放って棘が巨獣の背中から飛び散った。



 飛び散った棘は光の尾を(なび)かせながら地上に突き刺さり、先程と同等に折り畳んだ長い脚と鎌のような腕を伸ばして棘の魔獣へと姿を変える。


 そして体勢を整える為、森に逃げ去った討伐隊達を襲うのであった。



 「うわぁ! こ、こいつ、また現れたぞ!」

 「くそ! このままじゃ、本当にヤバい!」


 巨獣から離れて機を伺おうとした討伐隊達は突如現れた棘の魔獣に襲撃され、逃げ惑った。


 このままでは直ぐにでも討伐隊は全滅するだろう。


 棘の魔獣を放った巨獣は逃げ回る討伐隊を振り返りもせず、何事も無かったかのように又も進みだした。


 “ドズズン! ドオン!”



 「拙い! 此処は僕が引き受ける! マリアベル、森に一旦下がれ!!」


 「馬鹿な、お前を置いて行けるか!!」


 「このままでは討伐隊は虫に狩られて全滅だ! 僕に構わず、さっさと行け!」

 

 反論するマリアベルを無視して、レナンは叫んだ後、巨獣に向けて駆け出す。


 「マリアベルお姉様、今はレナンお兄様の言い分が正しいかと」


 「し、しかし……!」


 「私がレナンお兄様を御守りしますわ。ですのでお姉様は隊をお願いします!」


 今だ動揺するマリアベルに向け、ソーニャがレナンの行動を後押しする。


 ソーニャからすれば、マリアベルの安全が何より優先される為、彼が巨獣に単独で立ち向かうのは望む所だった。


 その本音を隠してソーニャはマリアベルに進言するが、彼女は判断に迷う。


 だが、そんなマリアベルを余所にレナンは巨獣へと戦いを始める。その様を見てマリアベルは止む無く決意して叫ぶ。


 「く! 止むを得ぬか……! 私は森に戻り討伐隊を支援する! 行くぞ、お前達! 虫共等に後れを取るな!!」


 マリアベルはそう叫んで、その場に居た白騎士達を引きつれ森に駆け戻った。



 森へと向かうマリアベル達を見たレナンは、攻撃をして引き付けていた巨獣から飛んで距離を取る。


 そして彼は右手を森の方に差し出し光を(まと)わせた。先程棘の魔獣を一斉に貫いた光の魔法を放つ為だ。


 次いで右手を異形に変え、手の甲の菱形の宝石を眩く輝かせながらレナンは叫ぶ。


 「光の蔦よ! 彼の敵を全て貫き……」

 「レナンお兄様! 危ない!」


 レナンが光魔法を放とうとした時、彼を支援する為に駆け付けたソーニャが叫ぶ。


 その声に彼は巨獣を見遣ると、彼の怪物は巨大なその腕を大きく振り上げ、レナンに今まさに振り降ろさんとしていたのであった……。




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