表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/370

51)これからの事

 リナとジョゼと出会った瞬間、感極まって泣き出したティアに対し、二人は優しく慰めた。


 リナ達に促されてカフェスペースのダイニングテーブルで座ったティアは彼女達に改めて謝罪を始めた。


 (しばら)く泣き続けたティアだったが、呼吸を整え二人に向かって話だした。


 「……リ、リナ……ジョゼ……。ゆ、許され筈ないけど……、うぅ、ぐす……ど、どうか、どうか謝らせて……ぐす、うぐ……ほ、本当に……ご、ご免なさいぃ……うう、うぁああああ!!」


 ティアはリナ達に覚悟を決めて謝罪を始めたが途中で声にならずに号泣した。


 ティアがリナ達にした事はソーニャによって(そそのか)されたとしても、許される事では無い。


  浮ついた自分から目が覚めたティアは(ようや)くその事に気付いた。


 だから罵倒(ばとう)されようが、殴られようが、それこそ二度と無視されようが謝らずには居られなかった。ティアとしてはリナ達から許される筈は無いと思っていたが……。



 「……ティア……お前は悪くない……。悪いのはフェルディとお前を()めたソーニャ……いや、黒幕は国王か……。とにかくお前は巧妙に騙されたんだ。だからお前は何も悪くない……」


 「そうだよ! 悪いのはリース姉様達、王様の騎士達だよ!」


 リナやジョゼはそう言って真摯(しんし)に謝ったティアを慰める。対して彼女は涙目のまま首を振り二人に答えた。


 「ぐす……うぅ……ふ、二人共……本当に有難う。……でも……それは違う。悔しいけどソーニャに言われた通り……。

 アイツに幾ら(そそのか)されたとしても、あのフェルディに言い寄られても……レナンの事を手放すべきじゃ無かった。何が何でもね……。

 ぐす……二人の事も同じ……。うぅ……あ、あんなに私の事を心配して……くれたのに……うぐ……ホントに、ご免なさい……」


 そう言ってティアはまた、泣きながらリナ達に謝罪を繰り返すのだった。彼女は心から自らの愚かさと思慮の無さを深く悔いていた。


 それを感じたリナとジョゼはティアの頭をポンポンと優しく叩き、背中を(さす)り彼女を励ましてティアの謝罪を受け入れるのだった。 

 

 そんな3人の様子を見ていたミミリは涙ぐみながら何度も頷き、護衛騎士ライラは微笑えんで見守っていた。

 



 ティアの涙ながらの謝罪を快く受け入れたリナとジョゼは、ティアの弟レナンの事について話す。


 「……ティア……お前の弟、レナンの事だが……王都じゃすっかり有名だ……。ギナル皇国の侵略を未然に防いだってな。

 今じゃ完全に救世主扱いだ……だけど……私は国を挙げて担ぎ上げている、お前の弟の顔を見たが……心此処に(あら)ずって感じに見える」


 「わ、私も凱旋(がいせん)パレードの時……、レナン君の顔……初めて見たけど……何か、無理して笑ってる感じがした……。凄く疲れてる様な……。

 そこでリース姉様を掴まえて問い詰めてやったの! そしたら何も話そうとしないけど……凄く目が泳いでいて……。リース姉様、誤魔化してるけど絶対レナン君に何か有ったんだと思う」


 リナとジョゼの言葉を受けたティアは(うなず)いたまま二人に話す。


 「……やっぱり……レナン……。皆に見せたい物が有るの……」



 ティアはそう言って皆にレナンが自分に宛てた手紙を見せた。


  人知れず捨てられていた其れは、ソーニャがティアに持ってきた手紙だ。



  その手紙には、初めて人を殺してしまった罪に対するレナンの苦悩と、彼が抱くティアと故郷に対する想いが記されていた……。


  その手紙を見た皆は何とも言えない悲しい空気に包まれ言葉を失った。


「「「「…………」」」」



 (しばら)く沈黙が続いたが、ライラが重い口を開いて呟く。


 「……何で……アルテリアの為に尽力された聡明なレナン様が……こんな目に……」


 そう呟いたライラはアルテリア家の護衛騎士として、そしてレナンとティアの剣術指南役としてレナンと長い付き合いが有った。


それにライラはレナンの事は今後、アルテリアを導く聡明で偉大な存在として深く敬愛していた。



そんなライラの呟きを聞いたティアは素直に謝る。


 「ごめん、……全部、私の所為ね……」


 涙を流しながら呟くティアに対しライラは慌てて返す。


 「も、申し訳ありません! ティアお嬢様! そんな心算では……!」


 「いいえ、ライラ……謝る必要は無いわ、全て私が悪い。だけど……見ていて、必ずレナンを取り戻すから!」


 「ティアお嬢様……」


「ティアちゃん……」


 目を涙で赤くしながら力強く語るティアの宣言に護衛騎ライラとミミリは、その強い気持ちに感嘆しながら呟いた。


そんな様子を見ていたリナがティアに問う。


 「……ティア……お前の弟レナンだけど……一体どうやって取り返す心算だ……?」



 リナは何処と無く言い難そうにティアに(たず)ねた。理知的なリナだからこそ、王命で連れ去られたレナンを取り戻す事は困難と分っていた。


  だからこそ、今此処でティアに聞いておくべきとリナなりに配慮した様だった。



 対してティアはリナの目を真っ直ぐ見据えて答えた。


 「色々心配してくれて有難う、リナ……レナンを取り返すのは大変な事……分ってる心算……だけどレナンの気持ちがアルテリアに有る以上……諦めるなんて絶対出来ない。

 だから何が何でもアイツを取り戻す! そこで……レナンを取り戻す方法なんだけど……」



 此処でティアは皆にレナンを取り戻す作戦を話した。


  馬車の中でバルドやミミリに伝えた内容だ。つまり、ティアが冒険者になり、レナンやマリアベルより強くなって、レナンに対する国王の興味を削ぐと言う方針だ。




 ティアの話す荒唐無稽(こうとうむけい)なその策に、冷静な判断が下せるリナとティアの実力を知るライラが其々言い難そうに反論した。


 「……ティア……弟を取り戻したいお前の気持ちは分るが……そんな方法、上手く行くか保証も何も無いぞ……?」


 「何より……ティアお嬢様……。黒騎士はともかく……あの龍を御一人で倒せるレナン様より強くなる事等……恐れながら……絶対不可能です」


 ティアの作戦に反対したリナとライラ。対してティアは力強く語る。


 「……無理や無茶は分ってる。私は確かにレナンどころか……マリアベルの妹、ソーニャにだって敵わなかった。そんな私があのレナンを超えるなんて……。

 それに奇跡が起きてアイツより強くなったとしても、それで国王やマリアベルが私の言う様にレナンを手放すかどうかは、分らない……。

 でも、それでも……私は待つ訳には行かない。今、レナンが……その手を差し伸べているの……。だから私は這ってでも、ほんの一歩でもレナンの居る場所へ向けて前に進むわ」


「「…………」」


 そう言い切ったティアの言葉を受けてリナとライラは掛ける言葉を失う。二人はこんな姿のティアは見た事が無かった。


 以前のティアなら自分の行動を振り返ったり考えたりしなかった。でも今のティアの言葉は自分の立ち位置をきちんと理解した上で、それでも前に進もうとしている。



そんなティアの言葉になんて声を掛けるべきか二人が悩んでいると……ミミリが静かに呟いた。


 「……以前……レナン君が教えてくれたの……戦う時は……皆が自分の特徴を生かして協力して戦えば……絶対に負けないって。

 一番ダメなのは……戦いの途中で諦める事だって……。私、馬鹿だから難しい事分らないけど……このレナン君の件も同じだと思う。

 ティアちゃんは一人じゃない。強いライラさんだって居るし、バル君と私も居る。私なんて居ても居なくても同じだろうけど……。後は……諦めなければ何とか……なると思うの」


 戸惑いながら呟いたミミリに対し、感激したジョゼが彼女の手を取って大声で同意する。


 「ミミリさん! わ、私も! ティアちゃん達の為に協力します! リース姉様の事も有るし、知らない振りなんて出来ない!」


 「……ジョゼ……お前一人がティアに協力したってダメだ……お前達二人は危なくて仕方ないわ。

はぁ……仕方ない、ソーニャの奴に一矢報いてやるか」


 ジョゼの言葉を聞いた、リナが溜息を付きながら額に手を当てて呟いた。


ティアはそんな親友達の申し出を受け、また涙を滂沱(ぼうだ)の如く(こぼ)すのだった……。



いつも読んで頂き有難う御座います!


追)一部見直しました!

 追)段落を見直しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ