41)終幕
ティアが拘束されている部屋に飛び込んだリナ達4人だったが、ティアの惨状に驚き叫んで彼女の元に駆けよった。
「ティア! この馬鹿野郎!」
「ティアちゃん! 遅くなってゴメン……」
「ティアちゃん……こんな……酷いよ……」
「……み、皆……ご、ごめん……うぐ…ううう……うあああああ!!」
リナは泣きながらティアに抱き着いて叱り、ジョゼも彼女に縋って泣いている。ミミリもティアの手を取り号泣していた。
対してティアは今更ながら自分が仕出かして来た事が思い出され、自身の惨状を余所に泣き叫んで侘びるのだった。
そんな4人の少女を静かに見ていたバルドは怒りを湛えた顏で、ティアの拘束していたロープを切り、フェルディの方を向き低い声で問うた。
「テメェか? ティアをこんな真似に合わせたクソ野郎は!?」
「ひいい! う、五月蠅い! この馬鹿女が悪い……」
”ボグゥ!”
「アギャ!!」
体格のいいバルドに迫られたフェルディがティアの所為にして罵ろうとした瞬間、飛び掛かったバルドに思い切り殴られた。
バルドは怒りを抑えられない様子でフェルディを続けて思い切り殴り続けた。
“ガツン! ガス! ガン! ゴス!”
「アギャ! ウギィ! ギャア!」
現役冒険者のバルドに殴られ続けるフェルディは情けない声を上げながら蹲る。
散々殴ったバルドは足を振り上げ叫ぶ。
「今迄のは、レナンの分だ!! そして、コレは俺の分だ!!」
“ドガァ!!”
「グゲェ!!」
バルドはそう叫んで、思い切りフェルディを蹴飛ばした。
対してフェルディは恐怖の為か頭を抱えて蹲っている。対して怒りが収まらないバルドはもう一度蹴り上げようとしたが……そこで声が掛かる。
「……そこまでにして下さい。腕が無くなろうが目が潰れようが一向に構いませんが、死なれるのは困ります。その男には多くの罪を償って貰う必要が有りますので」
蹴ろうとしたバルドを止めたのはソーニャだ。彼女は涼やかな声でニコニコしながら話す。
対してバルドは忌々(いまいま)しい様子でソーニャを睨み呟いた。
「……アンタ……ソーニャって言ったか……アンタも同罪だろうが! 俺はそこに居るリナって子に聞いたぞ! アンタがティアを唆して、ティアとレナンの婚約破棄させたんだろう!?」
ソーニャに向かって怒り叫ぶバルド。その声に反応し、リナも立ち上がってソーニャの方を睨む。
状況を良く分っていないティアはソーニャと彼女を睨むリナの顔を相互に見て困惑する。
ミミリは酷い状態のティアに寄り添い、破られた上着の上にシーツを掛けて、手を握ってあげていた。
ジョゼは何故かソーニャの方では無く、彼女の傍に居る一人の女性騎士を睨んでいた。
睨まれている女性騎士は何処と無くバツが悪そうな顔をしてジョゼから目を逸らす。
ジョゼと女性騎士の様子に気が付いたソーニャは自分がバルド達に睨まれている事など一向に構わない様子で、ニッコリと微笑んで彼女に話し掛ける。
「……ジョゼさん、貴方は我が白騎士隊に所属する、このリースをご存じなのですね?」
「……リース姉様は従姉なの……お城で騎士として働いてる事は、聞いてたけど……こんなのって……」
「う!」
ソーニャに問われたジョゼはリースと呼ばれた女性騎士の方を見て、目に涙を溜め恨めしそうにリーゼを睨む。
リースと呼ばれた女性騎士はブラウンの髪をマッシュショートにした騎士らしからぬ可愛らしい女性だ。
対するジョゼとしては敬愛する従姉のリースが女性騎士として立派に働いていると信じていたが、まさか親友のティアを陥れる様な仕事をしているとは思わなかった。
そんなジョゼの怒りと失望の眼差しで睨まれた女性騎士リーゼはショックを受けた様で言葉に詰まり固まった。
二人の様子を面白そうに見ていたソーニャに対し、今度はバルドに代わりリナがソーニャに詰問する。
「おい、ソーニャ……お前、一体どう言う心算だ!? どうしてティアとレナンの婚約を解消させたんだ!? 答えろ!!」
冷静なリナには珍しく大声でソーニャに問う。対して彼女は満面の笑みで静かに語る。
「それはとんだ言い掛かりですわ、リナさん……私はティアに対してレナンお兄様との婚約破棄を無理強いした事は、唯の一度も有りません。私はティアの傍で、彼女が望む答えを後押ししただけ……この状況はティア自身が望んで選んだ事ですわ」
「……そうか……それがお前のやり方か……自分は決して手を出さず! 言葉巧みにティアを唆し! ティア自身をお前の望む通りに操る! 何て汚い真似を!!」
ニコニコと笑顔で答えるソーニャに対し、リナは生れて初めて激高して罵った。
それを横で聞いていたティアがボロボロの姿で立ち上がり、恐る恐るソーニャに尋ねた。
「……ソ、ソーニャ……一体、どういう事なの? さ、さっきから……意味が分らないの……捜査協力? ……捕縛? そして……レナンお兄様? ……あ、貴女まで私を……騙していたの……?」
ソーニャの言葉に違和感を覚えたティアは足元が崩れ落ちそうな恐怖を感じながら彼女に問うた。
ティアはソーニャに全幅の信頼を寄せていた。ソーニャの語る言葉が全て絶対の真理の様に。
しかし……もしそうでなかったら……リナの言う通り嘘だったとしたら。
ティアは頭の中がグチャグチャになり、吐き気を催しながらも聞かざるを得なかった。
ティアの問いにソーニャは満面の笑みを保ったまま答えた。
「ティア……私は貴方を騙した事は一度も無いわ……ただ、その時々で貴方の望む言葉を囁いただけ……そして貴方は自ら選んで行動した結果、ここに来たのよ」
「!! 嘘よ! 私は、こんな事望んでいない! 私はレナンとフェルディと一緒に楽しく暮らせると思って……あ……」
笑顔で穏やかに話したソーニャに対して、ティアはその言葉を否定しようとしたが、自分が仕出かした最悪の行為を思い出しその場で、ストンっと座り込んだ。
その様子を見たジョゼが涙目で従姉である女性騎士リーゼに大声で詰問した。
「リース姉様! 本当の事を教えて!? リース姉様達は、何でティアを騙したりしたの!? 弟のレナン君をどうしたいの!?」
「……ジョゼ……そ、それは任務だから……答える訳には……」
「リース姉様!」
大声で詰問するジョゼに対し、従姉のリースは答えに窮し歯切れが悪い。
そんなやり取りを見ていたソーニャが溜息を付いて、真剣な表情でその場に居る皆に話し掛けた。
「……本来ならば王命を受けた任務である為、秘匿次項になり話す事は出来ませんが……これだけ身内等の関係者が集えば、秘匿の意味は有りませんね……。
良いでしょう、ここで回答を申し上げましょうか……初めてお会いする方も居られるので自己紹介させて頂きます。
私の名はソーニャ フォーセル……国王直属の騎士、通称黒騎士であるマリアベルの妹に当たります。 私や、ここに居る4人の騎士達は白騎士と呼ばれ、黒騎士マリアベルの配下として任務に就いております……」
そしてソーニャはここに至る事情を皆に話した。
予言に謳われし白き勇者の確保命令。対するアルテリアのトルスティン伯爵の偽装工作……それによりレナンの捜索は大幅に遅れた事……。
そして漸く見つけた白き勇者のレナンは、予言通りとんでもない存在だった事を説明した。
「……と言う訳で我々は王命を受けて白き勇者であるレナン兄様の確保を行いました。しかし、そこに至るまでは、トルスティン卿の偽装工作により、レナン兄様の発見は大いに遅れた次第です……」
説明を終えたソーニャ。しかしリナは納得せずソーニャに問う。
「……ティアの弟については分ったわ。だけど肝心な事を聞いていない。何故ティアを騙してフェルディと近付けさせた!? 私とジョゼはな、お前とマリアベルって騎士と美術室で話し合っていたのを聞いたんだ! 本当の事を言え!」
激怒しながら叫ぶリナに、ソーニャはにっこりと笑い、答えた。
「……なるほど……あの時の私とマリアベルお姉さまの会話を聞かれていた……と言う訳ですか? これは仕方有りませんね……分りました。全てを話しましょう。
国王陛下は白き勇者確保の下知の際……もう一つ命を下しました。それは……我が姉、マリアベルと白き勇者レナンとの婚姻です」
「「「「!!」」」」
ソーニャの言葉に皆が驚いたが、ティアは漸く全ての事柄が飲み込めた。
絶望と後悔の中、震える体で立ち上がりティア自身がソーニャを問い詰める。
「……ま、まさか……その為に私とレナンの婚約破棄を……? こ、答えてソーニャ!」
ティアに問われたソーニャは静かに微笑んで全ての真実を語った。ティアの心を長きに渡って抉る恐ろしい真実を……。
いつも読んで頂き有難う御座います!
次話は「42)真実」で明日投稿予定です。43話までティアの話になります。宜しくお願いします。
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追)一部見直しました!




