40)踊る少女の末路
いつも読んで頂き有難う御座います。辛く残酷な描写が有りますので、注意して下さい。
いきなり拳でティアの顔を殴ったフェルディ。そして煩わしそうに彼女に向け叫ぶ。
「うるさい! 馬鹿女! まだ、分らないのか!? 本当に気持ち悪いんだよ!!」
ここで漸くティアは自分が騙されていた事を理解した。
思い切り殴られた頬が痛く口の中に嫌な血の味がする。
その状況下の中、スーっと急激に熱が冷め始め、自分が仕出かして来た事がグルグルと頭をよぎり、気が遠くなってきた。
まるで悪い夢を見ている様にティアは思い、認めたくない現実を愛しかった彼に否定して欲しくて、震える声でフェルディに問う。
「……ま、まさか…… う、嘘よ!? 嘘と言って、フェルディ!!」
そう叫んだティアに対するフェルディの返答は残酷だった。
彼はあろう事か拘束されているティアに跨り、可愛いティアの顔を又も拳で殴り付けたのだ。
“ガツン!”
「アグゥ!」
「だからぁ、うるさいよ! 馬鹿女! 誰がお前みたいな、貧相で頭の悪い田舎娘に本気になるか! 爵位が高いならいざ知らず、アルテリア伯爵領? 貧乏で有名な所じゃないか!?
この僕はパメラ公爵令嬢との婚約が決まっている。アイツはまだガキだが利用価値は大いにある女だ! お前と違ってな!」
殴られたティアは口から血を流しながら、その瞳に涙を一杯溜め悔しそうにフェルディを睨んで呟く。
「……私を……騙したのね……」
漸く事情が呑み込めたティアに対し、フェルディは馬鹿にしながら言い放つ。
「ハハハ! お前に本当の事を教えてやる……僕が行きつけの娼館で遊んでいたら、金回りのいい男にゲームを持ち掛けられたのさ……。一ケ月以内にお前と……レナンとか言うガキとの婚約を破棄させたら、10万コルトやるってな! だから僕はお前なんかに近付いたんだよ!!」
「!! そ、そんな!?」
フェルディが自分に近づいた本当の目的を知り驚愕するティア。
対してフェルディは罵り続ける。
「ククク……全く傑作だったよ……唯の遊びだったが、間抜けなお前は簡単に騙されて……あっさりレナンとかいう奴の婚約を破棄しやがった!
アハハハ! 本当に可笑しくって仕方なかったよ! コレだから女遊びは止められない! どいつも簡単に僕に騙されてボロボロに為るまで尽くすのさ!
パメラもまだガキだが、精々遊んで利用尽くしてやるよ! ギャハハハハ!」
馬鹿笑いするフェルディに、唖然としていたティアだったが途中から大泣きしながら激怒する。
「ちくしょう! ちくしょう! お前なんかに!! ううう! うああああ!!」
ティアはこの状況になって初めて大切な者を幾つも見捨てた事に漸く気が付いたのだ。
彼女はどうにもならない怒りと後悔により大声で泣き叫んだ。
その様子を面白そうに見ていたフェルディは卑屈な笑みを浮かべティアの髪を掴んで顔を寄せる。
“グイ!”
「うう!」
髪を思い切り引っ張り無理やり顏を引き寄せられたティアは痛みで声を上げる。
フェルディはそんな彼女を見下しながら話す。
「ククク……元気な事だが……今からそんな恨み言、言えなくしてやるよ……壊れるまで散々遊んだら娼館に放り込んでやるさ! 他の女共の様にな!」
そう叫んでティアの上着を破るフェルディ。
“ビリィ!”
「いや! いや! 絶対に嫌!!」
泣き叫び必死に身を捩って抵抗するティア。フェルディはその様子を見て喜喜として叫ぶ。
「そうだ! その顔だ! 他の女共も、そんな顔をして僕を楽しませてくれた! もっと泣き叫べ!!」
「いやああ!!」
そう言ってティアに覆い被さるフェルディ。
ティアは嫌悪と恐怖で絶叫する。フェルディはティアに覆い被さったまま、大声で叫ぶ。
「喜べよ! 僕以外にも後ろの奴らも居る! 貧相な田舎者のお前でも壊れるまで相手してくれるさ! 最初は僕からだがな!!」
そう叫んで覆い被さり、乱暴にティアの服を脱がそうとするフェルディ。
対してティアは狂った様に泣き叫ぶ。
「イヤ! 誰か! 誰か、助けて! お願い、レナン!!」
ティアは今になってレナンを思い出し、全力で彼に助けを求める。
フェルディはそんな必死な彼女の姿が楽しくて仕方がないと言った様子で嘲りながら叫ぶ。
「馬鹿め!! ここには誰も来な……」
「ハイハイ、もういいかしら?」
「「!?」」
フェルディが叫んでいる途中に可憐な少女の声が響いた。
ギョッとしたフェルディと大柄な使用人達が声のした方を向くと、そこには真白い鎧に身を包んだソーニャと4人の女達が居た。
彼女達は真白い鎧と長剣、そして白い外套を羽織っており美しくも凛々(りり)しい出で立ちだ。
その姿に驚いたフェルディが叫ぶ。
「お、お前達は、だ、誰だ!? おい、コイツらを摘み出せ!!」
フェルディの命令に大柄な使用人達がソーニャ達に襲い掛かってきたが……。
“ザン! ”
「ギャアアアアア!!」
襲い掛かってきた男の一人に対し、オレンジ色の撥ねたショートヘアの勇ましい女性騎士が目にも止まらぬ速さで抜刀し、一閃の元に男を切り捨てた。
そしてもう一人の男に対してはソーニャがナイフを素早く投擲し、迫る男の足に突き刺した。
「イギャア!!」
痛みで蹲る男にソーニャは容赦なく追撃を喰らわせる。
「天の光集いて 我が敵を穿つ刃と為れ! 雷刃!」
“ガガン”
蹲る大柄な男に対しソーニャは下級雷撃魔法で意識を刈り取った。
最初に切り捨てられた男は痛みで蠢いていたが、ショートヘアの女性騎士に思い切り腹を蹴られ、そのまま気絶した。
一人残ったフェルディは腕に覚えが有る使用人達が無残にも撃沈した事に大いに怯え、腰が抜け座り込んでみっともなく悲鳴を上げた。
「ヒイイイ!!」
叫ぶフェルディを余所にティアは白騎士姿のソーニャを見て呟く。
「……ソ、ソーニャ……」
ティアに呼ばれたソーニャはティアを見遣る。
ティアは卑劣にも拘束された上に、殴られた為に頬は腫れ、口から血を流している。
そして無残にも服は破かれ、肌着が見えていた。
ソーニャはそんなティアの惨状に憐れんだ目を向けながら呟く。
「……あらあら……ティア、酷い状態ね?
だけど、私は貴女の勇気に感服するわ……貴女の献身的な捜査協力のお蔭で、連続婦女暴行の主犯であるフェルディ フォン ルハルトを捕縛する事が出来ました!
随分大掛かりになってしまいましたが、何と言っても“レナンお兄様”との約束が有りますし……、それに素晴らしい“良い絵”が撮れましたので、100点満点でしょう!」
ソーニャは拘束されたままのティアに胸を張って嬉しそうに報告する。
ソーニャはティアに大きな宝石が付いた鏡の様な道具を見せる。恐らくは映像を記録する魔法具だろう。
対してティアは何の事か分らない。ソーニャとは……親友だ。捜査? 捕縛? そして……一番気になるのが“レナンお兄様”という言葉だ。
意味の分からない言葉にティアは自身の大変な状況も忘れ、問い返そうとした。
「ソ、ソーニャ……一体何の……」
そこへ、大声がしてティアの問いを遮った。
「ティア!! 大丈夫か!?」
叫び声と共に部屋に入って来たのは、学園の友人であるリナとジョゼ、そして冒険者のミミリとバルトだった……。
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次話は「41)終幕」で明日投稿予定です。何卒よろしくお願いします。
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追)一部見直しました!
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