39)そして舞台へと演者は集う
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漸く出会った4人は互いの情報を伝え合う。
そしてティアが熱に浮かされレナンと婚約解消した事を知った瞬間、バルドは憤慨して立ち上がって叫んだ。
「マジかよ!? ティアの奴、何やってんだよ!!」
「落ち着いて、バル君……この手紙の件とかリナさんの話を聞く限り……ティアちゃん……きっと騙されてるんだよ……」
憤慨するバルドをミミリが制止しながらティアの現状について呟く。その言葉にリナは頷いて同意しながらバルド達に問うた。
「私もティアの奴は利用されていると思うんだ……全てはティアの弟……レナンを手に入れる為に……二人はレナンの事を知っているか?」
「知ってるも何も、最初に王都に行く様に頼んだのはレナンだ……そう言えばマリアベルって奴……大分前に街道で出会った、危ない黒騎士だろう? レナンにボコボコにされたけど」
レナンに対して聞いたリナに、バルドは答えながら以前街道で襲ってきた黒騎士の事を思い出していた。
リナから聞いた話や、手紙を止めていた貴族の名前から間違い無さそうだ。バルドの答えにミミリが同意する。
「……そうだろうね……そう言えば街道で襲ってきた時、何が何でもレナン君を手に入れるって感じだったよね……でも、まさかこんな方法を取るなんて……」
そう話すミミリに対してジョゼは俯いて呟く。
「黒騎士……マリアベル……やっぱり……」
小さな声でブツブツ呟くジョゼに対してリナは心配そうに声を掛ける。
「……ジョゼ……大丈夫か……?」
「う、うん……何でも無いよ……所で……ティアちゃん、何とかしないと!」
リナに心配されたジョゼは我に返り、声を大にして話す。そこにバルドが相槌を打つ。
「そうだよな! まずはティアを止めないとな! 早くアイツの所へ案内してくれ!」
「ああ、分ったよ! 皆で学校に……」
「失礼します……レナ様で御座いますか?」
バルドに促されて皆でティアに会おうと立ち上がった時だった。
ギルドの女性事務員がタイミングを見計らった様にレナに声を掛けた。
リナは一瞬驚いたが、持ち前の冷静さで直ぐに落ち着きを見せ聞き返した。
「……私がリナですけど何か御用ですか?」
「はい、私はギルド事務方の者ですが、リナ様がこちらのお客様と合流した時点で、これを渡す様指示を受けておりましたので」
そう言ってにこやかに笑いながら女性ギルド職員はリナに書簡を渡す。
そして“それでは失礼します”と言って彼女は受付カウンターに戻って行った。
リナは訝しみながら貰ったばかりの書簡を開いてみて、驚きの声を上げた。
「……こ、これは!」
「ど、どうしたの、リナちゃん?」
驚いた声を上げたリナに対し傍らに居たジョゼが問い掛ける。
「この手紙は……ソーニャからだ……」
「ソーニャって……さっきアンタらが言っていた黒騎士マリアベルの妹だよな……ティアを誑かしたとか言う……何て書いてあるんだ?」
「ああ……実は……」
呟いたリナに対し、バルドが手紙の内容について尋ねるとリナは驚きを隠せない様子で皆に話しだした。
ソーニャの手紙には、彼女がリナ達の動向を完全に把握している事が書かれ、リナ達とミミリ達が会う事になった事や、ティアを助ける為に行動を起こそうとする事等がまるで横で見られているかの様な正確さで書かれていた。
ソーニャ自身からは目的の“宝”を手に入れた事、そしてティアとフェルディが別荘に向かっている事等が丁寧に説明されていた。
リナは監視されている様な気持ち悪さを感じながらソーニャの手紙を皆に読み上げる。
「……既に舞台は出来上がり、後は主賓と観客を招くばかり……皆々様には舞台であるエリワ湖畔の別荘に来て頂きたく存じます。足として貸馬車を準備して御座いますので御使い下さい。それでは舞台にてお待ちして居ります……だとさ。実に気持ち悪い内容だが……どうする?」
「「「…………」」」
ソーニャの手紙について聞かされた皆は一瞬黙ったが直ぐにバルドが結論を語った。
「……行こうぜ……エリワ湖畔の別荘ってそこしかねぇんだろ? だから行こう、ティアを助けに!」
「ああ!」
「うん!」
「は、はい!」
バルドの言葉にリナやミミリ、ジョゼが迷いなく頷いた。
こうしてリナ達はティアを助ける為にエリワ湖畔の別荘に向かうのであった……。
◇ ◇ ◇
一方、渦中のティアはフェルディと共に馬車に乗って、人里離れたエリワ湖畔に建てられた別荘に到着した。
そこは美しいエリワ湖に面して建てられた小奇麗な別荘であった。
「わぁ! とっても綺麗な場所ね! フェルディ?」
「……ああ。早く中に入ろう」
「……うん」
何故かフェルディは馬車に乗った時点で、愛想が悪く別人の様に冷たくなった。対するティアは戸惑いながら、何とか明るく振舞う。
フェルディに言われ別荘の中に入ったティア。中は整理されてはいたが薄暗く、何となく薄気味悪さを感じさせた。
別荘の中に誰か居る。それは見るからに人相の悪い大柄な二人の男だ。その内の一人が部屋の明かりを灯し、もう一人がキッチンに向かった。
フェルディはティアにリビングのダイニングテーブルに座る様に促す。そうしている内にキッチンに向かった男が紅茶を持ってきてティアに勧める。
「……どうぞ……」
ドスの利いた野太い声にティアは恐怖を感じたが、横に居たフェルディがすかさず彼女に飲む様に促した。
「……ティア、飲むんだ」
そう指示するフェルディの言葉は断り辛い圧力を放っていた。
フェルディは学園での穏やかな態度とは全く異なり、感情を現さず無機質な人形の様だ。そんなフェルディの態度にティアは頷くしか出来ない。
「……う、うん……」
そして言われるがまま出された紅茶を飲み、違和感を感じて呟くティア。
「? ……何か変な味だった……あれ? ……う、ううん……」
そう呟いたティアはそのまま眠ってしまう。
その様子を卑下た顏で嫌らしく笑いながら見つめてフェルディは呟く。
「……ククク……さぁ、パーティの始まりだ……オイ、二階にこの女を運べ」
フェルディに命令された男達も薄汚い笑みを浮かべながらティアを運ぶのであった。
◇ ◇ ◇
気味の悪い男に出された紅茶を飲んで眠ってしまったティアは体に違和感を感じて目を覚ました。
「ううう……気分悪い……!? ……何コレ!? 体が動かせない!?」
目を覚ましたティアは自身の体が拘束され動かせない事に気が付いた。
両手はベットの上の方で固定され、両足も開かれ固定されていた。
「い、一体、どういう事!? フェルディ! 助けて!!」
ティアは理解出来ない状況に慄き愛しい彼の名を呼んだ。
彼なら全て解決してくれる、そう信じ切っていたからだ。しかし……。
「ああ、ティア……僕ならここに居るよ? フフフ……最初からね」
「よ、良かった! フェルディ、目が覚めたらこんな事になってたの! 早く助けて!」
愚かなティアはこの状況下でも分っていなかった。自分が最初から騙されていた事に。
そんな彼女を見てフェルディは可笑しくて堪らない様子で笑い出した。
「アハハハハ! 馬鹿だとは最初から思ってたけど、こんなに馬鹿とは!? コイツは傑作だよ! ヒーヒヒヒ、あぁ可笑しい!
何で女ってこんな間抜けばっかりなんだ!? 今まで散々他の女、喰い散らかしたけど! この馬鹿は特別だよ! ギャハハハ!!」
「……フェルディ……い、一体……何言ってるの? わ、悪い冗談は止めて?」
この時点でもティアはフェルディを信じようとしていたが……。
“ガツン!”
「ウグ!?」
自分を信じ切っているティアが疎ましく思ったフェルディは拳でティアの顔を殴りつけたのだった……。
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次話は「40)踊る少女の末路」で明日、投稿予定です。宜しくお願いします!
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追)一部見直しました!