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363)ソーニャとの相対

 皇女エリザベートと打ち解けあったティアは、彼女に黒騎士の正体について尋ねようとした時……ソーニャが割って入った。



 「……ソーニャ……」


 「久しぶりね、ティア。やっと元気になった様で何よりです」



 突然割って入って来たソーニャにティアが戸惑い呟くと、彼女は以前と変わらず落ち着いて返答する。



 そしてソーニャは新たな白騎士となったクマリの方へ向き、苦言を言う。



 「……何をしているのですか、クマリ? 弟子の“対応”は貴女がする、と言う事でしたが?」


 「耳が痛いな、妹ちゃん。だけど、この馬鹿弟子は首輪付けても言う事なんて聞くタイプじゃないんでね。対応した結果、いきなり大暴れさ」



 苦言を言ったソーニャにクマリが肩を空かして軽口を叩いて返す。



 「……全く貴女と言う人は……。まぁ良いでしょう。所でティア、こうして直接お話しできるのは大分お久しぶりですね。あの建国祭の事件後……別れてから以来になりますか……」


 「そうね、あの時はアンタ達の事は敵だと思ってたから、その場で絶縁したんだっけ」


 「そうでしたね……。そして貴女はレナンより強くなる、何て言って王都を飛び出して、それっきり……。

 そして、貴女は王都崩壊の際……危機を知り王都へと向かう途中に、脱出する王都民を助ける為に単身黒い龍に立ち向かって重体となったと聞きました。

 私の方は重傷を治療中だった貴女にお見舞いに伺ったんですよ? もっとも貴女はお薬で眠られていましたが……」

 

 「……それは悪かったわね。……アンタの事も聞いたわ。マリアベル……死んだって……アンタも大変だったんでしょ」


 「生きている意味を無くして絶望していましたが……マリアベル姉様の為にも臥せってばかりは居られませんし……。この子も励ましてくれますしね」


 「アギャ!」



 ティアに問われたソーニャは返答しながら、傍らに控えるリベリオンの頬を撫でると、彼は嬉しそうに応える。



 「…………」


 「……互いの近況はもう良いでしょう……。改めて、ティア……今日はどう言った目的で王都に?」



 リベリオンを撫でるソーニャを、ティアは黙って見つめる。リベリオンがティアやソーニャの傍に黒騎士がどういう心算で派遣したのか考えていたのだ。


 黙して考えていたティアに、ソーニャは仕切り直して王都に来た目的を問う。



 「ソーニャ、私が王都に来た理由は、唯一つ。この異常な現状を生み出した黒騎士の正体を見極める為よ!」


 「それなら、答えは簡単です。黒騎士様は黒騎士様。あの方が言われる様にそれ以上でもそれ以下でも有りません」


 「……それ、さっき黒騎士本人からも言われたよ。まるで互いに示し合せた様な回答ね。だけど……私が知りたいのは、そんな取り繕った上辺の答えじゃ無い。あの凶悪な兜の下が、どんな素顔なのか……それを知りたいの」



 淡々と冷静に答えるソーニャに、ティアは構わず言いたい本音を迷いなく話す。



 「それを……貴女が知った所で、何の意味も有りません」


 「意味が有るかどうかは、この目で見た私自身が判断する。私は自分の直感を信じたい。……マリアベルにも、そう励まされたしね」


 「……お姉様が……? どう言う事ですか、ティア?」


 「死に掛けてた時に……マリアベルが夢の中に会いに来てくれて私を励ましてくれたんだ。もちろん、マリアベルがレナンを庇って死んだって事は知ってる。

 死んだ筈のマリアベルが私の元へ来てくれたのは……ただの夢か都合の良い妄想かも知れない。だけど、マリアベルが私を励ましてくれたから……今、私は生きて、ここに立っている」


 「そう……お姉様が……貴女を励ましに……。夢の中でも、マリアベルお姉様らしいわ……。とてもいい夢を見れたわね、ティア……」



 ティアが見た夢の事を聞いたソーニャは、グッと感情が溢れきて涙が溢れそうになった。


 ソーニャは涙が零れない様に上を見ながら、ティアに優しい声で答えた。


 

 「ええ、だから私は真実を確かめに王都に来た。今の黒騎士が誰で、何の目的でこんな異常な事をしているのかを確かめたい。今の王都は明らかにおかしいわ。溢れかえる白い龍に、天を覆う光りの壁。そして王都の真ん中にそびえてる黒い卵状の物体……。

 王都だけじゃ無い……私が聞いた話では、ロデリア以外の周辺諸国も、ギナル皇国もロデリアみたいになってるって聞いた。

 ソーニャ、貴女は知らないでしょうけど……あの黒い卵状の物体……王都を襲った黒い龍は、あの黒い卵から生まれたんだ。

 そんな危ない物を世界中に配置して、黒騎士は何をやらかそうとしてるの!? そして……何で、アンタ達白騎士隊は……あんな奴の言いなりになってるの!?」


 「……ティア……貴女が心配になる気持ちは分ります……。ですが、黒騎士様の事はロデリア王国の機密事項。いくら貴女でも、それを明かす事は出来ません」



 声を上げて問い詰めるティアに、ソーニャは迷いなくキッパリと断った。



 「機密事項? そんな都合の良い言葉で私が納得するとでも思う? レナンとマリアベルが守った、この国が……こんな異常な事になってるのに、黙ってられる訳が無いわ!

 ソーニャ、貴女では話にならない! この異常な事態を引き起こした黒騎士を私の前に連れて来なさい!!」


 「それは出来ません。黒騎士様は亜人の国アメントスへと出立されます。そんな訳でとても多忙な黒騎士様に貴女個人に関わっている時間は無いのです」



 レナンとマリアベルを想い強く迫るティアに対し、ソーニャは変わらず言い切る。



 ソーニャとしてはティアの気持ちは痛い程理解していたが、黒騎士となったレナンにティアを合わす訳にいかない為に、絶対に譲らなかった。


 何故なら、黒騎士となったレナンの心は全てマリアベルのものだからだ。



 その為、ソーニャもクマリと同じく……レナンを取り戻す為だけに戦い続けて来たティアに、その残酷な事実を突き付けたくないと思い、明確に拒絶したのだ。



 「……これ以上は時間の無駄です、どうかお引き取りを」


 「ソーニャ!!」



 他人行儀で退場を指示するソーニャに、ティアは激高して彼女に詰め寄る。

 



 そんな中……。




 「てめぇら、いい加減にしろや!!」


 「「「「「!?」」」」」



 可憐な容姿のエリザベート殿下から……突如ドスの聞いた怒鳴り声が発せられ、その場にいた者達全員を驚愕の余り絶句させたのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は7/31(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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