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362)皇女との出会い


 黒騎士と相対し斬り掛かったティアだが、全く勝負ならず無力化され……クマリ達白騎士隊に連行される。


 王城前広場の隅で白騎士隊に囲まれたティアは、師匠で新たな白騎士となったクマリに責められていた。



 「全く、相変わらずイノシシみたいだな、馬鹿弟子! その結果、黒騎士殿にみっともなくやられやがって、イイ様だよ! 私らだって忙しいんだ! お前みたいな田舎モンに構ってる暇はない! これに懲りたらさっさと田舎に戻れ!」


 「……うるさいですよ……」



 “ガン!”



 クマリは座り込んでいるティアに向かい、盛大に文句を言うと、彼女はそっぽを向いてうっとうしそうに答えた。



 そんなティアに頭きたクマリはゲンコツを喰らわすと、喰らった彼女は痛そうに頭を抱えた。



 「クマリちゃん……あんまり乱暴は……」


 「甘やかしてどうすんだよ、ルディナちゃん。それとクマリちゃんは止めろって言ったろ? こう見えて私、アンタの親より年上だよ?」



 頭を痛そうに抱えるティアを見て白騎士隊のルディナが、心配して注意すると言われたクマリは反論する。



 ティアの周りには、クマリ以外に同じ白騎士のレニータやべリンダとルディナが囲む。



 マリアベルの生前は、ティアと共に任務に出た事のある彼女達だ。


 ましてやティアからレナンを奪った件にも関わっていた事もあり、彼女に対して無情にはなれなかった。



 「……お前も、あの黒騎士殿がレナン君で無い事は流石に分っただろう? あの巨体に低い声……そして冷淡で恐ろしい性格……。どこをどう見てもレナン君とは別人だ」


 「…………」



 クマリはティアに向かって黒騎士がレナンでは無い事を明確に説明する。



 対してティアは何も答えなかったが、先程会った黒騎士がレナン本人とは自身も思えず、クマリの話を、横を向きながらも神妙な顔を浮かべて聞いていた。



 クマリがティアにレナンの死を擦り込むのは、黒騎士として変わったレナンの心には……もはやマリアベルしか居ない為だ。


 彼を取り戻す為に戦い続けて来たティアに、レナンの本心を伝えるのは余りに酷だとクマリは考えていた。



 「とても悲しい事だが……マリちゃんと一緒にレナン君は死んでしまった。だから、ティア……お前も彼の事は忘れて……」

 「……ご苦労様です~クマリ先輩~」



 クマリがティアに説得する中、邪魔をする様に軽い調子で背後から声を掛けられた。



 話を遮られた事で苛立ったクマリが、声を掛けた方を振り返ると……皇女エリザベートと女性騎士ネビル、そしてフワンが満面の笑顔を浮かべて手を振っていた。



 「……これは、皇女エリザベート殿下……何か、ご用ですか?」


 「改めまして、クマリ様。貴女様の事はフワンから聞いています。私が、この場に来た理由……それは、そこに居られるティアさんとお話をさせて頂きたいと思いました。ほんの少し、ティア様とお話させて頂けませんか?」


 

 

 ティアへの説得中に割って入って来たエリザベートに、クマリは不快感を隠さず問うと、彼女は申し訳無さそうにティアとの取次ぎを頼んだ。


 皇女からの依頼に、クマリも従うしか無く黙って引き下がる。




 「初めまして、ティア様。私はエリザベート・メアリー・ド・ギナル。ギナル皇国の皇女を務めさせて頂いています。貴女とはお話をしたいと考えていました」


 「……どうも、初めまして……。って、そう言えば! さっきホークの事、助けてくれたんだよね! ……あ、有難う」



 ティアの前に座ったエリザベートは丁寧に挨拶する。



 対するティアはいきなり現れたエリザベートに警戒するが……先程彼女が体を張ってギガントホークのホークを助けてくれた事を思い出し、慌てて礼を言った。



 「い、いえ……アレはちょっと黒騎士様がやり過ぎに思えたので、黙って居られませんでした。無礼をお許し下さい」


 「無礼だなんて、そんな事無いよ! お蔭でホーク助かったし……。所で、どうして私の前に?」


 「ティア様……私は貴女にギナル皇国皇女としてお詫びを……。聞くところによると、貴女は私達ギナル皇国の所為で酷い被害を被ったと……その事、皇女としてお詫び致します」


 「……結果的にそうなのかも知れないけど……それを指示した人達は、皆死んじゃったんでしょ? ギナル皇国の先代皇帝とか、ロデリアの前王とか……。だから、皇女様が謝る事じゃ無いわ。

 私の事もそうだけど……皇女様も酷い目に遭ったんじゃないの? 前のギナル皇国は悪い国だったし、皇女様自身も死んだって話だったわ」


 「ええ、先代のギナル皇帝ユリオネスは……私の叔父にあたる人で、白き偽神の加護を受け……それまでの皇帝だった我が父を殺し、ユリオネス以外の皇族は全て殺されました。……私が助かったのは、身代わりになってくれた侍女や臣下のお蔭です……」


 「そっか……だったら皇女様も辛い目に遭わされたんだね……。だったら私は何も言う心算は無いよ」



 辛そうに自身の過去を話すエリザベートを見て、ティアは責める気にならなかった。



 ティアを陥れた者達は全員亡くなり、エリザベートも自分と同じく権力者に振り回された被害者だからだ。



 「有難う御座います、ティア様。私の事はどうか、エリザベートとお呼び下さい」


 「うん、分った……。それじゃ、エリザベート様ってお呼びするね。ちょっと不敬な感じだけど」


 「いいえ、私自身、黒騎士様に救って頂いたお蔭で……皇女になった様なものですから。それまでは厨房に働きながら、レジスタンスをしておりました」


 「厨房!? レジスタンス!? ど、どう言う事!?」


 

 エリザベートが気さくに話す経緯に、ティアも目を向いて驚き問い返す。


 問われたエリザベートは、苦笑しながらティアに自分の事を簡単に説明するのだった。



 年頃も近い為か、ティアの遠慮のない性格の為か……エリザベートとティアは早速打ち解けた様だ。


 ティアとエリザベートが気さくに話し合う中、同業者のネビルと白騎士達も話し合い、フワンはクマリに絡んでいた。


 ラザレは自国の近衛と打ち合わせをしている。男性と言う事で遠慮したのだろう。



 ティアとエリザベートが打ち解け、互いの事を話し合った後……ティアは真顔でエリザベートに問う。



 「……ねぇ、エリザベート様……結局、あの黒騎士は何者なの? エリザベート様はアイツの本当の姿を知ってる?」



 ティアがエリザベートに問うたのは、ギナル皇国を一日の内に陥落させたと言う黒騎士の正体を、皇女である彼女なら知っていると思ったからだ。



 ティアがエリザベートへ問うた、丁度その時……。



 「……御歓談中の所、失礼いたします、エリザベート皇女殿下。そろそろ出立の時間が迫っております」


 話し合うエリザベートにリベリオンを引き連れたソーニャが声を掛けるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は7/27(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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