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357)驚愕の王都

 ギガントホークのホークに飛び乗ってアルテリア伯爵領から、王都に旅立ったティア。


 空駆ける魔獣であるホークの空を行く速度は素晴らしいものだったが、それでも王都への道のりは遠い。



 ホークの背に乗って進んでいたティアだったが……すぐに、とある異常に気が付いた。




 「……何で、付いて来てるのよ……!? ホーク、旋回して!」


 

 アルテリアから飛び立ったティアだったが、そんな彼女にずっと付いて来ている者が居た様だ。



 ティアはギガントホークのホークに指示して、旋回し追跡者の横に並ばせる。


 ホーク同様に空飛ぶ追跡者に並んだティアは、彼の者に向かい叫んだ。



 「ちょっと! 何で来たの!? 見守るにしてもやり過ぎじゃ無い!?」

 「アギャ! アギャギャ!」



 ティアが叫んだ相手は、白き龍リベリオンだ。彼女の叫びに付いて来たリベリオンも文句が有る様で飛びながら言い返す。



 「アルテリアへ戻りなさい! お前の役目はアルテリア伯爵領を守る為でしょう!?」

 「アギャギャ! アギャ、アギャ!」



 ホークに乗りながらティアがリベリオンに指示すると、彼は “コレが自分の仕事”とばかりに明確に拒否した。



 「……アルテリアより……私を守るのが、大事って訳? それが黒騎士から受けた指示なの?」

 「アギャ!!」


 

 ティアが問うとリベリオンは、力強く自信満々に肯定した。



 「何で……黒騎士が私を守らせようとするのか……その意図が気になって仕方無いけど……今は王都を目指しましょう。お前、付いて来るのは勝手だけど……私の邪魔はしないでよね!」

 「アギャ!」

 

 

 自分に付いて来るリベリオンに向かい言い放って、ティアは改めて王都へ向かう。そんな彼女にリベリオンは元気よく鳴いて応えるのだった。





 ◇◇◇




 巨大な空飛ぶ魔獣であるギガントホークのホークは、休憩も取らずに飛び続け……ティアはアルテリアを発って半日も掛からずに王都に到着する。

 


 なお、ホークの飛行速度は鳥の何倍もの速さだったが、ティアに付いて来る白き龍リベリオンは余裕で追従した。




 到着したティアは……激変した王都の様子に只々仰天する。


 

 ティアに取って、約一か月半振りの王都だったが、まず驚かされたのが……王都全体を覆う光のドームだ。


 王都に近付くにつれ……遠くから見える、その光の天蓋にティアは驚きと共に警戒した。



 光のドームを警戒する余り、暫く王都上空を旋回していたティアだったが……そんな彼女を置いて、追従して来たリベリオンが気軽にドームをくぐって見せる。


 そして、ドームの内側でわざわざ停止し、ティアに向かい“おいでよ”とばかり鳴いて誘うのだった。


 そんなリベリオンに誘われ、ティアもホークと共に光のドームを通り抜ける。



 光のドームをくぐり抜ける際に、若干の抵抗を感じはしたが特に難なく進む事が出来た。



 ティアは知る由も無かったが……レナンが展開させた、この王都全体を覆うドームは、AIのオニルが制御している。


 外部からのあらゆる攻撃を防ぎ、並びにドーム内部には敵性対象は通過できない仕組みとなっていた。




 光のドームをくぐり抜けたティアが、先ず度肝を抜いたのは半壊した王城の上空に浮かぶ、巨大な白く美しい空中戦艦ラダ・マリーの存在だ。



 そして次に目を奪われたのが、王都中心にそびえ建つ、巨大な漆黒の卵状の建造物。


 この不可思議な卵状の建造物は、ティアがアルテリアの森の中で見たものと同じだった。但し、その表面にはロデリア国章が大きく描かれている。



 そして……王都中を忙しく飛び回る沢山の白き龍リベリオン。



 異常過ぎる状況に呆気に取られていたティアだったが、眼下に広がる王都の街並みを見ていて、有る事に気が付く。



 約約一か月半前に、黒き龍レギオンの群れを追って王都にティアが来た時は、遠目だったが王都は……徹底的に焼かれ、破壊されていたのを見た。



 しかし、今日見ると……ゼペド達白き偽神の来襲によって崩壊した筈の王都は、王城を残して殆ど復興が完了していたのだ。



 あれ程の被害を受け、滅亡寸前だった王都が……こんな短期間で復興している事に驚いたのだ。



 この世界の常識では在り得ない程の復興速度だったが、その理由はティアにもすぐに分かった。



 それは卵状の建造物から続々と生み出される沢山の物資を使って、沢山のリベリオンが王都を忙しく飛び回って復旧作業を行っている為だ。



 よく見れば、白き龍リベリオンが王都民に食糧物資らしきものを手渡したり、作業をする王都民を手伝ったりと……甲斐甲斐しく王都民の世話を施している。



 リベリオンによる復興作業により、ティアが空から見る限り王都で暮らす人々には活気が有り、その表情は明るい。




 絶望の闇に落とされた筈の王都は、希望に満ち溢れ力強く復活しようとしていた。但し、それは人の手では無く……この世界に存在しない筈の超常の存在によって。



 それを目の当たりにしたティアは、しばらく絶句して固まっていたが、思い出した様に呟く。



 「……この状況を創り出したのが……新たな黒騎士様って訳か……」

 「アギャ!」


 「なら……その御尊顔を早く拝謁しなくちゃね……。お前の主が居るのは、多分あそこでしょう」

 

 

 呟いたティアに、アルテリアから付いて来ていたリベリオンが相槌を打つ。ティアは、そんなリベリオンに答えつつ……黒騎士が居るであろう、王城へと向かうのであった。




 ◇◇◇




 ティアが王都に到着し、展開されていた光のドームを通り抜けた時……。



 黒騎士レナンは、マリアベルの墓標前に居た。


 レナンの姿は、兜に一本角を生やした凶悪な漆黒の鎧を纏った黒騎士の姿だ。



 そんな恐ろしい姿のままの彼は……黙してマリアベルの墓に跪き彼女への想いを伝える。

 

 黒騎士レナンの傍にはマリアベルの妹で白騎士隊のソーニャが、同じ様に跪き……今は亡き姉への祈りを捧げていた。

 


 「「…………」」



 二人の背後には、女性のアバター姿をしたAIのオニルと、ソーニャを護衛する一体のリベリオンが控えている。


 「マスター、そろそろ御時間です。出立に伴い、ゲスト達が王城前広場に集合しています」


 「……もう、そんな時間か……。ソーニャ、行こう……」


 「また、来ますね……マリアベルお姉様。今度は白騎士隊の皆も一緒に連れて来ます……」



 短く無い間……マリアベルへの祈りを捧げていた黒騎士レナンだったが、AIのオニルの連絡を受けると立ち上って傍らのソーニャに声を掛ける。


 対して声を掛けられたソーニャは、名残惜しそうに墓前へ向かい優しい声で別れを告げるのだった。




 マリアベルの墓前を離れたレナンは、ソーニャと共に王城へと向かっていた。彼は、王城前広場からゲスト達と集合して白き戦艦ラダ・マリーで出立する予定だった。


 

 レナン達が王城前広場に向かう中……AIのオニルが唐突に報告する。


 

 「マスター、報告致します。ゲストが集う王城前広場で激しい対立が生じています」


 「……王都住民による陳情か?」


 「おかしいですね、この子達が飛び回ってるお蔭で、王都の人達には不満なんて無い筈……」



 オニルの報告に、レナンが問うと横に居たソーニャが訝しむ。



 「いいえ、王都住民による衝突では有りません。……今、現場映像を映します」



 AIのオニルはそう報告しながら、レナン達の眼前に王城前広場の現場映像を映し出す。


 そこには……アルテリアから来たティアが、新たに白騎士となったクマリと戦い合う姿が映し出されたのだった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は7/10(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、美里野さん。御作を読みました。  亡きマリアベルさんを偲ぶレナン君に驚愕の事態。……と言いたいところですが、〝ティアちゃんが来た〟のは驚きでも、クマリさんとぶつかるのは当たり前…
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