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354)標(しるべ)

 「な、何で!? 何で、お前が其処に居るのよ!? 破滅の龍!!」



 窓の外に居た白き龍リベリオン。その姿を見たティアは頭が沸騰し叫んだと同時に、窓の外から飛び出した。



 ティアが激高したのも無理はない。王都を破壊した黒き龍。色は違えど、その龍がこのアルテリアに居るのだ。


 激情に駆られたティアは、自分の体調を考えもせず自室の窓から飛び出すが、ここは3階だった。



 万全な体調のティアなら……アクラスの秘石の力を借りて、3階であろうが何であろうが難なく飛び降りれるだろう。



 しかし、今のティアは極限まで体力が落ちていた。その為、アクラスの秘石も満足に働かず、そのままバランスを崩して真っ逆さまに落下する。



 「!? し、しまった……!」



 ティアは、全く思い通りに動かなかった自分の体に驚き叫ぶが、何も出来ず落下するだけだった。



 「「お嬢様!?」」



 落下するティアを見て、下に居た使用人達は驚き叫んで駆け寄るが、到底間に合いそうに無い。




 そんな時、電光の様に素早く動く存在が居た。それは使用人に囲まれていた白き龍リベリオンだ。



 「アギャ!」


 “ヒュバ!”



 白き龍リベリオンは一声鳴いたかと思うと、目にも止まらぬ速さで飛び立ち……見事に落下したティアを受け止める。


 その速さは瞬間移動したかの様だった。ティアをキャッチしたリベリオンを見て使用人達が歓声を上げた。



 「おおお!! よ、良くやった!!」

 「ああ、有難う!!」



 一方、落下したと思ったと同時に、すぐさまリベリオンに受け止められたティアは感情を露わにして暴れる。



 「お、お前!? い、今すぐ私を放せ!!」

 「アギャ」

 


 落ちた自分を受け止めたリベリオンに、ティアは激高し暴れるが……対する白き龍は“危ないよ”とばかり小さく鳴いて、優しく彼女を包んで離さない。



 リベリオンはゆっくりと地上に舞い降りて、ティアをそっと降ろす。



 「お嬢様!」

 「御無事でしたか!」



 地上に降ろされたティアに、使用人達が慌てて駆け寄って来た。



 「よ、良かった……! 本当に良かった!」

 「お、お前! 良くやったぞ!」

 「アギャ~」



 使用人達は、ティアの無事な姿を見て心底安堵している。


 彼等の内一人が、受け止めたリベリオンを讃えると、白き龍は“いや~それ程でも”とばかり照れた様に鳴く。



 そんな中、助けられたティアは……白き龍リベリオンから跳ねる様に離れ、大声で叫ぶ。



 「み、皆!! その龍から離れて! その龍は危険よ!!」



 そう叫んでティアはリベリオンに向かい、右手を構える。


 自室から飛び出た為、武器は持っていなかったが……アクラスの秘石を宿した右手で彼女は戦う心算だ。



 白き龍と戦う姿勢を見せたティアを見た、使用人達は大慌てで彼女に向け彼女に叫ぶ。



 「ティアお嬢様、誤解です! こ、こいつは魔獣じゃ有りません!」

 「この子は、王都から最近派遣された護衛なんです!」


 「王都から派遣された!? そんな筈ない! 龍は王都を焼き尽くしていたわ!」



 白き龍リベリオンを慌てて庇う使用人の言葉が信じられず、ティアは反論する。



 渦中のリベリオンは“困ったな~”と言った感じで、居場所が無さそうに立っているだけだ。



 そんなリベリオンにティアは、先手必勝とばかりに突進した。



 「アクラスの秘石よ、敵を討ち砕け!」



 ティアは駆けながら叫び、右手の秘石を発動させようとする。しかし……。



 “キイィン……”



 アクラスの秘石は、一瞬光りを放ったが途端に輝きを失い沈黙する。



 「ひ、秘石が!? あっ……」



 秘石が沈黙したと同時に、ティアも糸が切れた様に倒れ込む。



 生命力が極限まで低下してた彼女は、アクラスの秘石を無理に発動させた為、根こそぎ体力を奪われてしまった様だ。


 倒れそうになったティアを、眼前のリベリオンが素早く受け止める。



 「アギャ?」

 「……お、お前……うぅ……離……せ……」



 倒れたティアを抱えたリベリオンは“大丈夫?”とばかりに鳴くが、対するティアは拒絶の声を上げてもがく。



 リベリオンに抱えられたティアは抵抗しようとするが、満足体が動かない。


 そんな状態のティアに周りの使用人達が驚き駆け寄ってきた。



 「お、お嬢様! 大丈夫ですか!?」

 「おい、お前! そのままお嬢様を屋敷内に運んでくれ!」

 「アギャ!」

 「は、離して……!」

 


 駆け寄ってきた使用人がリベリオンに頼むと、短く鳴いて答えた彼は、もがくティアを大切そうに抱えて、屋敷内に運ぶのだった。



 

 ◇◇◇




 「……一体……何が、どうなっているんですか?」


 

 屋敷内に運ばれたティアは、ベッドに横になったまま……見舞いに来たエミルとトルスティンに、冷たい声で問う。



 「何がって……あの龍の事かい? あれは、ちょっと前に王都から派遣されて……」


 「どうして、龍なんかを普通に受け入れてるんですか!? 龍は王都を焼き尽くしたんでしょう!?」



 問われた兄のエミルは、何の違和感も無く答えると……ティアは我慢出来なくなって叫ぶ。



 「い、いや……! あの龍は、王都を襲った奴とは全然違うよ!? ティア、君も見ただろう、彼が纏う鎧を。あれにはロデリア国章が描かれている。

 何より……連れて来られた白い龍に関しては、アレフレド新国王から此れを渡されているのさ」



 叫んだティアに、エミルは狼狽えながら答えた後……彼女に一通の書簡を見せる。



 それは、前国王カリウス亡き後に新国王となったアルフレドによる……白き龍リベリオンの正式配属辞令書だ。


 国王からの正式配属辞令と言う事で有れば、アルテリア領主であるエミルは従うしかない。



 「……アルフレド国王陛下からの書簡に依れば……この白い龍は、王都復興と防衛の要らしい。王都崩壊から一月余り経過して……白い龍による復興がかなり進んだ事も有り、陛下はロデリアの主要な領地に、この白い龍を派遣する事を決められたんだ。

 書簡には、白い龍が派遣された領地を守り支えると記されている。実際、ここに来た白い龍も良く働くし、皆を守ってくれる。今回、落ちた君を助けた様にね」


 「王都を襲っていた龍と戦った私からすれば……到底、信じられません……!」



 エミルが見せたアルフレド王子の配属辞令書に、ティアは納得が出来ず反論する。



 「……そもそも、アルフレド王子は、いえ……今は陛下でしたね……。何故、アルフレド陛下はあの龍を配下に出来るのですか!? そんな兵力が有れば、黒い龍から王都を守れた筈です!」



 白き龍リベリオンを派遣したアルフレド新国王に、ティアは感情的になって怒り叫ぶと……今まで黙っていた父トルスティンが口を開く。



 「いや……どうも、あの白い龍を使役しているのは……アレフレド新国王では無いと言う話だ」


 「え……? じゃあ、一体誰が……?」


 「……私もライラ達の報告を聞いただけだ。知っていると思うがライラは、私の指示で王都へ復旧工事に向かわせている。お前の親友のミミリ君達も一緒にな。

 その為、彼女達から王都の情報が定期的に入るのだが……それに依れば、あの白い龍を使役しているのは……突如現れた新たな黒騎士との事だ」


 「!? な、何ですって!?」



 父トルスティンから聞かされた……“新たな黒騎士”の存在に、ティアは驚愕し大きな声で叫ぶのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は6/29(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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